沼の底からこんにちは。マニアな東京ショップガイド vol.3 flotsam books
圧倒的に突き抜けたマニアが手がける、ユニークな専門店をご紹介。一癖ある店主と唯一無二の商品ラインナップは、知れば知るほど沼にはまるような魅力がある。心がホットになるお買い物体験をするべく、街へ出よう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年12月号掲載)
flotsam books
洋書、古本
雑多な本の山から特別な一冊と出合う
壁面と陳列台を埋め尽くす本は1000冊超え。友人のフォトグラファーが個展のために見つけた物件を半ば巻き込まれる形で引き継ぎ、実店舗をオープン。ヴィジュアルに特化した本のみを取り扱う。その理由は、アートやファッションなら言葉が通じない海外の人とも視覚的に感覚を共有できることに面白さを感じてきたから。
「人づての紹介、SNS など独自のルートで仕入れています。かなり絞って選んだ本を“できるだけ雑に”そして“意味を持たせないように”置いています。BGMもダサい(笑)。若い人にアート本を身近に感じてほしいから“ハードルを上げない”こともテーマ。『ちょっとあの店、行ってやるか』と舐められるくらいが丁度いいんです」。
大手書店で取り扱いがない、欧州や北米のインディペンデントな作家の作品が大多数を占め、新刊本と古本が混ざり合う。固定概念にとらわれず、好奇心と感性で本を選び、手に取る。そんなピュアな体験がクセになる店だ。
初のオリジナルTシャツ(¥4,400)は、ファッションブランドkudosの工藤司が手がけた。販売を記念して、モデルの源大を鈴木親が撮影したジン(¥1,500)も刊行。
フォトグラファーの山谷佑介が温泉をテーマに野湯を撮影した現在進行形のプロジェクトの新作『ONSEN I』(¥3,850)。フロットサムブックスが初めて出版を担当した写真集。硫黄を転写した画像を再現するため、厚紙にシルクスクリーンで印刷した後に、水による特殊加工を施した不思議な表紙が珍しい。
店内にはジンのコーナーも。「こういった小さな印刷物を置いている店は少ないと思います。クリエイティビティと希少性、手に取りやすい価格帯が魅力。学生や若いクリエイターにとっておきの一冊が届いたらうれしいですね」。宝探しみたいな何が出るかわからない興奮と新しいアーティストやカルチャーシーンと出合える喜びがある。
flotsam books owner
小林孝行
古書店に勤務後、ファッションやアート、アートブックの買い取りと販売、洋書新刊のオンラインショップをスタート。2020年に実店舗をオープンした。
floatsam books
住所/東京都杉並区和泉1–10–7
営業時間/14:00~20:00 水休み
URL/www.flotsambooks.com
Photos:Miyu Terasawa Text:Aika Kawada Edit:Chiho Inoue