ディオールのミューズ、シャーリーズ・セロンにインタビュー「これからも女性の味方としてエンパワーしていきたい」
フェミニニティに満ちた魅力とパワフルな輝きを放つ女優、シャーリーズ・セロン。15年の長きにわたってアンバサダーを務めるディオールの名香“ジャドール”の新たな魅力とともに、彼女の美しさの源をインタビューを通じてお届けする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)
社会を動かす圧倒的パワー
女優として、母として、慈善活動家として多彩な顔を持つエンパワリングな女性、シャーリーズ・セロン。パルファン・クリスチャン・ディオールの名香“ジャドール”のミューズとして15年目を迎え、圧倒的な存在感を放ち続けている。これまでの15年について、自分で感じてきた変化や展望についてインタビュー。
女性はみな美しい。これからも女性の味方として、エンパワーしていきたい
「ディオールは私にとって、多くの素晴らしい思い出と経験を共有してきた家族であり、まるで楽しい旅の仲間のような存在。15年もの年月をともに過ごしていることは光栄です」と、互いの固い絆と信頼を振り返る。女性にとって15年という年月は、ライフステージや環境の変化が起きるのに十分すぎる時間だ。女優として女性として母として、どのような“進化”を自身で感じているのか。
「私たちは、年齢を重ね成熟していくにつれて、それまでとは異なるレンズで世界を見はじめるようになると思います。たとえば、昔の私にとっては重要だったことが、些細なことに感じられたり。2人の女の子を育てていることで物事がよく見えるようになり、私自身がより良い人間になりたい、と願うようになりました。娘たちには私がこれまでに得た教訓を伝え、パワフルな女性になるために必要なツールを残していきたいと思っています」
子どもたちにより良い世界を残したい──その母としての願いは、彼女が力を入れている慈善活動への大きなモチベーションとなっている。今やシャーリーズ・セロンを語るに、活動家としての一面は欠かせない。
「自分の子どもたちを含むすべての子どもに、できる限り良い世界に生きてほしいと願っています。それと同時に、困難な状況や危機は今まさに進行中で、変化が急務であることを感じています。そしてもっとも大切なことは、私たちは人間として互いに支え合うべきだということを子どもたちに教えていくことです」
ハリウッドで大きな成功を収めてなお、あらゆる分野において挑戦と進化をやめない。自身が設立した財団「シャーリーズ・セロン・アフリカ・アウトリーチ・プロジェクト(CTAOP)」では、南アフリカにおけるAIDSや暴力と戦い、女性の権利と安全の保護、教育や健康のサポートなど多岐にわたる問題に取り組むが、その原動力についてこう語る。
「幼少時、ちょうど南アフリカでAIDSが猛威を振るっていた頃、母が従業員を病院へ連れて行く車に同乗したときのことをまだ覚えています。この時に母が見せた人々への気遣いと共感を、決して忘れることはありません。自分が社会に還元できる立場になったときには、単に変化や意識を促すだけでなく、実際に正義のために戦っている人たちを押し上げ、困難に直面している人々の声を広めるために自分の立場を利用する必要も感じています」
その行動が心を動かし、社会を動かすエンパワリングな女性。南アフリカに生まれ、波乱に満ちた環境で育った彼女は、16歳で渡米してから成功への切符をつかみとり、大女優への道を歩んできた。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では不屈の女戦士を、『モンスター』では醜い殺人鬼を演じてアカデミー賞をはじめとした多くの賞を受賞し、セクハラ問題を扱った20年の話題作『スキャンダル』ではプロデューサーも兼任して新たなステージへ。最新作を含めた近況は?
「昨年イタリアで撮影を行った『オールド・ガード 2』のポストプロダクションに取り掛かっている最中です。ほかにも、デンバー&デリラ社(注:自身が率いるプロダクション会社)で、パートナーたちと一緒に多くのプロジェクトに着手しています。でも、この夏は子どもたちと過ごすのが何よりの楽しみ!」
シャーリーズの言葉からは、以前にも増して“母”や“子どもたち”の存在が大きくなっているのを感じずにはいられない。母という年月もまた、彼女をますます進化させているのだろう。ディオールのアンバサダーとしての15年でも多くの出会いがあり、貴重な経験を共有してきたという。
15年間のパートナーシップ
「世界最高峰の監督、写真家、デザイナーと仕事をする機会を得て、彼らから学んだことは、女優という私の仕事に深い影響を与えています。特に思い出深いのは、ピーター・リンドバーグとの撮影です。彼は紛れもなくフォトグラファー界の巨匠ですが、彼との広告撮影は最高に楽しい時間でした。撮影セットの中で大笑いし、クリエイティブな相乗効果が生まれるこうした時間はこの仕事において私が大切にしている部分です。このパートナーシップを通じて彼と時間を共有できたことに感謝しています」
ディオールというメゾンとシャーリーズは、社会的な問題への姿勢についても共創関係にあり、新たな価値を生み、互いを高め合っている。
「ディオールは一貫して女性のエンパワメントに取り組み、女性たちが自信を持ち、堂々と胸を張って生きられる世界を目指した活動を行ってきました。そして、女性たちにパワーを与えるだけでなく、製品や社会的イニシアチブを通じて、毎日女性たちが美しいと感じ自信を持てるよう取り組んでいて、その姿勢にいつも共感します。ドレスアップし、自分の外見や香り、気持ちに自信を持つこと。ビューティアイテムは、私たちがポジティブになるのをサポートしてくれる存在なのです」
不変のパワーと輝きを纏うシャーリーズ・セロン。彼女がミューズを務める名香ジャドールが、新たなディオール パフューム クリエイション ディレクターによって、よりゴールドに、よりパワフルに、より誇り高く生まれ変わる。新しいジャドール ローの第一印象は?
「一瞬で夢中になりました。とてもセンシュアルな香りで、纏うと贅沢な気持ちになれます。個々の花々が香り立つのではなく、花々が調和することで全体として見事なハーモニーを創り出す。バランスがよく、見事に構築された豊かな香り。ピュアな花束のように一瞬で喜びをもたらしてくれます。この香りが素晴らしいのは、どんなファッションにも似合うところ。イブニングドレスはもちろん、Tシャツとジーンズとハイヒールにも似合うし、スウェットの上下に纏っても心地よく感じられる。ドレスアップしてもドレスダウンしても、この香りひとつでセクシーで自信に満ちた気分になれるのです」
印象深い香りの記憶や好きな香り、香りの選び方についても教えてくれた。
「一番記憶に残っているのは、子どもの頃、母が香水を纏う姿を眺めていたときのこと。母のように美しい香りを漂わせたい、といつも思っていました。親しみのある香りや、ある瞬間を思い起こさせてくれる香り、特にフローラル系が好きです。私はとにかく花が大好きで、我が家を訪れた人は知っているのですが、家にはフレッシュな花々が飾られていて、庭には色とりどりの花が咲いています。花は私を癒してくれる存在。友人や家族に花を贈るのも好きです。香りを選ぶときには、何かしらパワフルな要素があり印象を残すこと、長い間纏いたくなるエレガンスと繊細さを備えていること、などを大切にします。その香りが好きかどうかは、香ってすぐにわかります」
女性のサポーターでありたいという彼女。最後に“美しさ”についてパワフルなメッセージを送ってくれた。
「すべての女性は美しい、と私は思っています。私はかねてより、女性の味方として女性を応援する立場をとり続けていますが、それは私自身が人生を通じて、パワフルで美しく、勇気のある女性たちに囲まれて生きてきたから。それを娘たちにも受け継ぎたいと願っています。この先もずっと、私たち女性は互いに力を与え合い、高め合っていく必要がある、そう感じています」
社会的活動や作品、アンバサダーを通じた活動から感じるのは、人生のこれまでの感謝と経験を、これからの女性たちや社会に“還元”しよう、という並々ならぬ覚悟。彼女の本質的な美しさの根源はここにあるのかもしれない。類まれなる美貌をもつ彼女から、私たちは美のインスピレーションを受け続けるだろう。
ゴールドと花々が輝くジャドールの革新
クリスチャン・ディオールが花に注いだ愛情へのオマージュとして、1999年に誕生したジャドール。幾重もの花々が調和し合って生まれるジャドールの香りの抽象性は、完璧なフローラル ブーケと称されることも。
「新たなジャドールを作るにあたり、存在の中核にある花々と真摯に向き合いました。ジャドールの真髄、それはゴールドであり、花そのものです。素晴らしい香りにはtouch of mysteryが必要だと思っていますが、どれか一つの花が突出することがないジャドールはまさに傑作。その本質を追求するため、ミニマリスティックなアプローチでフローラルを削ぎ落とすことで、エッセンスのような純度の高い香りを作りました」(フランシス・クルジャン)
Jadore L’or
ジャドール ローの詳細はこちらから
Photos : Josh Olins, Iseki(still life) Edit & Text : Naho Sasaki