モデルのアジョワ・アボワー、今を生き抜く女性へ送るタフなメッセージ | Numero TOKYO
Beauty / Feature

モデルのアジョワ・アボワー、今を生き抜く女性へ送るタフなメッセージ

長いトンネルの先に光が見えることが大事

メンタルヘルス問題との壮絶な闘いや、イギリス系ガーナ人モデルとしてのルーツなど、自身の体験や思いをオープンに語り、美の定義に至るまで、ファッション界に変革を起こし続けているアジョワ・アボワー。2015年にはメンタルヘルスに悩む少女たちに対話の場を作ろうと慈善団体「Gurls Talk」を立ち上げ、活動の幅を広げている。ジョー マローン ロンドンはそんなアボワーの活動に賛同。ブランドのアンバサダーとして来日した彼女に独占インタビューをした。


──ジョー マローン ロンドンのアンバサダーを務めるにあたり、ブランドのどのような点に感銘を受けたのでしょうか?

「ジョー マローン ロンドンがどういうブランドかというのは、自分なりに知っているつもりでした。ところが、この話をいただいてより深くブランドのことを知ると、さまざまな問題に対する意識やモラルなど、私と同じ価値観を支持していることがよく分かったんです。活動の背景にあるメッセージにも感銘を受けたのですが、なかでも私が強く惹かれたのは、ジョー マローン ロンドンが長い間メンタルヘルス問題に取り組み、ときには特別なプロジェクトを行ったりしながらも、それを大々的にブランドの宣伝に使用していないという点です。すべてをビジネスに直結させる今の時代には珍しい、真摯な姿勢に心を打たれました。そして、1年以上共に仕事をしてきた今、モデルだけでなく、活動家としての私も受け入れてもらえている点にワクワクしています」

──あなた自身もメンタルヘルス問題で苦労をした過去をお持ちです。心の不調は周囲の人に気づかれにくく、自分から伝えることも難しいため、回復に時間がかかってしまうこともあると思いますが、心身の健康を取り戻すために大事なことはなんだと感じていますか?

「メンタルヘルス問題は人それぞれ異なり、「これ」という決まった形があるわけではありません。幸い、私は大部分を克服しましたが、一方で克服した話をすることも重要だと思っています。なぜなら、問題を抱えている人たちにとって、克服した人たちの話は希望につながるとても大切なものだから。長いトンネルの先に、光が見えることが大事なんです。私はどんなに不安を抱えていても、それを克服することができるんだよ、という点にもっとフォーカスを当てるべきだなと感じています。私自身、完全に病を克服したわけでなく、おそらく一生付き合っていかなければいけないでしょう。でも、この問題を抱えていたことが逆に、人生において素晴らしい出会いや経験を与えてくれたのも事実。そして今、こうやってメディアで普通にメンタルヘルスについて話ができるようになったこと自体、本当に素晴らしいことだと思うんです」

──世界中の若い女性たちの心をサポートするコミュニティ主導の団体「Gurls Talk(ガールズ・トーク)」の立ち上げに至った具体的なきっかけは?

「『Gurls Talk』は2015年に立ち上げたのですが、その頃の私はどん底にいました。でも私は恵まれていたため、治療を受けることができた。その治療の過程で素晴らしいお医者さんや専門家の方々、まったく新しいコミュニティの人たちと出会いました。彼らとの出会いによって、『自分も何かを始めたい』と思ったんです。恩返しをしたいというよりも、自分の目的と役割を見つけた気がしたのだと思います。学生時代を振り返ると、学校ではタブー視されているさまざまなテーマについて話す場はなかった。密かに悩みを打ち明けられるような、自分を本当に理解してくれるコミュニティがあったら、違っていたかもしれないなと感じたんです。だから、どうしてもそういうコミュニティを作りたかったんです」

──やはり誰かに話すことは、状況の改善や癒やしという意味で重要なのでしょうか?

「もちろんです。誰かに自分の思いを打ち明けるというのは、ものすごく大切なことです。でも話すだけでなく、前述したように、どう克服したのか、そのプロセスについても理解することが大事だと思っています。「この人は大変な思いをしながらも、メンタルヘルスを克服しました」ではなく、メンタルヘルス問題と闘っているひどい状況のときには、具体的に何をしたらいいのか、どう助けてあげられるのかということにも、もっと着目してもらえたらなと思っています」

──「Gurls Talk」の立ち上げから約8年経ちましたが、活動に変化や広がりはありますか?

「まず、『Gurls Talk』の核となっているのは、個々の体験を共有することです。自身の体験を話したり、体験談を聞いたりすることが、自責感や自殺防止といったさまざまな問題に対して重要な役割をはたすというのは、データ上でもはっきりと分かっています。もともと、私のインスタグラムから始まった活動が、アメリカでNPO(非営利団体)となり、イギリスでも現在NPO申請中です。また今はポッドキャストも配信していますし、定期的にイベントも開催している。年末にはブランドと提携したイベントを開催するのですが、これまではブランドと提携することなど考えられなかったので、私たちにとってはものすごい前進で、『Gurls Talk』にとっても新しいステージになる気がしています。そういう点では活動の幅はどんどん広がっています」

家を思い出させてくれる心地良い香り

──ジョー マローン ロンドンのアイテムの中で、心を落ち着かせてくれるお気に入りの香りはありますか?

「心が落ち着くと言う言葉が当てはまるかどうかは分かりませんが、香りが記憶をよみがえらせてくれるあの感じがすごく好きなんです。それでいうと、今回新しく登場した『イングリッシュ ペアー & スイート ピー』の香りは、家を思い出させてくれる心地良さがあって大好きです」

──多忙な生活の中で、どのように心身のバランスを維持しているのでしょうか? 秘訣やアドバイスがあったら教えてください。

「メンタルヘルス問題は現在進行形の闘いなので、心身のバランスを保つというのは簡単なことではありません。でも、充実した生活を送ることが、大きな助けになっていることは間違いないと思います。今回のジョー マローン ロンドンのように、私の場合はさまざまな活動が仕事に結びついているので、色んな方たちと会って自身の考えや取り組みについて話たりすることで良い状態も保てている。なので、今は与えられていることに全力を尽くしたいと思っています。生活においては規則正しい日々を送ることが大事なのですが、飛び回ることが多い生活だとなかなか難しく、できるだけエクササイズをしたり、健康的な食事をするように心がけています。ただ、その中でも自分を甘やかす日は作るようにしています。自分がやりたいことをしたり、食べたいものを食べたり、自分の喜びのためだけに何かをしてあげることも重要だと思っています。ちなみに、明日は大好きなハロー・キティに会いにサンリオ・ピューロランドに行って、自分を甘やかしてきます(笑)」

──1日の中で好きな時間は?

「夜が好き。私は時間通りに寝て熟睡し、決まった時間に起きるという習慣に憧れながらも、なかなかそれができない。それでも、みんなが寝静まっている、誰からも邪魔されることのない平和な夜という時間が好きなんです。ドラッグやお酒を完全に絶ってから今年で9年目になるのですが、このしらふの状態がすごくいいんです。お酒に溺れていた時期は、新しい朝を迎えるのがものすごく怖かった。でも、今は夜遊びをしても朝日を見て、楽しい気持ちのまま帰宅できることに喜びを感じています。今は自分で立ち直ろうという道を選んだ自負もあるので、自分の中でもものすごくいい気が流れているのを感じています」

人気No1の香りがよりサステナブルに。新香調も登場

イングリッシュ ペアー & フリージア コロン 30ml ¥10,890/50ml ¥15,400/ 100ml¥21,340・イングリッシュ ペアー & スイート ピー コロン 30ml ¥10,890/100ml¥21,340(ともに9月8日発売)/ともにJo Malone London(ジョー マローン ロンドン)
イングリッシュ ペアー & フリージア コロン 30ml ¥10,890/50ml ¥15,400/ 100ml¥21,340・イングリッシュ ペアー & スイート ピー コロン 30ml ¥10,890/100ml¥21,340(ともに9月8日発売)/ともにJo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

ジョー マローン ロンドンで人気No1を誇る香り、イングリッシュ ペアー & フリージア コロンがよりサステナブルになってリニューアル。アップサイクル原料から天然の洋梨の香りを採取することに成功。食品産業での廃棄物となってしまった果実を活用し、独自の特別な製法で洋梨果実のエッセンスを抽出。透きとおるようなジューシーな果実感を表現している。リニューアルと同時に、洋梨の香りにスイートピーを融合した新フレグランスも発売される。可愛らしい花のノートが加わることで、よりみずみずしさが際立つ可憐な香りを楽しめる。

Edit : Naho Sasaki Text : Rieko Shibazaki

Magazine

JUNE 2024 N°177

2024.4.26 発売

One and Only

私のとっておき

オンライン書店で購入する