話題の高野山リトリートをMICHIRUがレポート。 瞑想の先に見えてきたものとは? | Numero TOKYO
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話題の高野山リトリートをMICHIRUがレポート。 瞑想の先に見えてきたものとは?

本誌ビューティページでもおなじみのメイクアップ・アーティストのMICHIRUさん。マインドフルな生活を送ることでも知られる彼女が、天空の聖地ともいわれる高野山の「宿坊体験」に初参加。究極の浄化(&デジタルデトックス)ができたというリトリートのあらましをレポートしてくれた。

生誕1250年の空海、その慈愛に触れる旅

以前から訪れてみたかった、空海が開いた日本仏教の聖地である高野山。4泊5日のサイレンスリトリートで今回初めて訪れることに。2日間のデジタルデトックスに加え、言葉を発することも、人と目を合わせることも、頭に浮かんだ思考も手放して本も音楽もなしの時間を過ごしました。

聞こえてくるのは大自然の音だけ。目の前の行動や食事もひたすら内側に意識を向け、マインドフルに過ごし、心の静けさの中に耳を傾けて自分だけに向き合う、内なるサイレンスのすばらしさを体験してきました。

気温は東京より5℃も低く、朝夕は少し肌寒いくらいで冷房なしでも快適です。高野山に到着するとそこは、まるでお寺のワンダーランド! 見渡す限りお寺で、その数は100を超えます。

初めての宿坊は上杉謙信ゆかりの宿、無量光院です。伝統的なお寺のスタイルで部屋にはテレビがなく、静けさの中にひぐらしの鳴き声が自然と調和して心地よいほっとする空間。広い庭園を眺めながら100畳の大広間へと移動し、呼吸法と瞑想をしたらその夜は消灯。東京から約5時間の移動の疲れもあって爆睡しました。

翌日は、奥之院へ約2kmの参道をゆっくりと1時間半かけてウォーキング。ヒノキやスギの参道を歩くと、森林浴をしているようで心身が浄化されるのを感じます。御廟を参拝し、生身供(しょうじんぐ)を拝見。今も奥之院に”生きて”いるとされる空海さんに御膳を届ける儀式です。そして奥之院の自然の中で瞑想。素晴らしい体験でした。

明日からはいよいよサイレンスな2日間が始まります。就寝前に携帯をオフ。携帯は最終日までスーツケースの中へ。

3日目。自然と繋がる静かな朝を迎えたら、アーユルヴェーダ ディナチャリヤ(朝の習慣)がスタートします。ベッドでの祈りの時間の後、歯磨きをして、水を飲み、ナシア(太白ごま油で点鼻)とオイルうがいをしたら、6時半からヨガ、瞑想のプログラムへ。今回はSuwaruのリトリートなので、アーユルヴェーダのメソッドを多く取り入れています。

まずはヨガで体を整え、体と心を繋げエネルギーの流れを感じる土台を作ったら、瞑想で溜まった思考をリセットして手放していきます。

食事は精進料理が中心。自分の内側の静けさを感じながらいただくと、一口一口が美味しく感謝の気持ちが溢れてきて、普段テレビを見ながらや話しながら食べる時と全く違う感覚です。私は腹八分から腹五分にもトライしてみました。食事をコントロールすると体も心も軽やか。外側に向いていた五感が静かになり、思考が研ぎ澄まされて、食後も眠くなる事もなく瞑想にも深く入ることができます。

座学ではニーマル先生によるヴェーダの叡智、言葉の断食とも言われている”サイレンス”について学び、物質を超えた心の世界が心の奥まで響きます。サイレンスは宇宙を生み出すほどの強い力が存在しています。静かに目を閉じて、内側に広がる静けさから新たな気づきが生まれ、いつの間にかSNSや情報の多さ、忙しい日常に埋もれてしまった自分から本当の自分へと戻る時間。奥深いところまで溜まってしまったストレスが溶けていくように無心になり、心の霧が晴れていく感覚です。

宿坊では朝勤行(1時間半)にも参加してご先祖供養もしてきました。高野山はご先祖様と命の繋がりが深く感じられる場所。自然と感謝の気持ちが湧き上がってきます。奥之院ではお墓の入り口に鳥居があったり、神仏が融合され、日本を代表する宗教家や戦国武将たちのお墓所が並ぶ姿を見ることができました。敵も味方もなく、宗派を問わずあらゆるものを受け入れるのが高野山なのです。

帰ってからもまだ感動が続く、特別な体験

今年、生誕1250年の空海。高野山は知れば知るほど空海さんの慈愛に溢れた素晴らしい聖地でした。 ありのままでいい。一つ一つの体験はすべてつながっている。本当に必要な答えは静かな時にやってくるのだと感じました。あまりにも受け取るものが大きすぎて今もダウンロードが続いているような感覚が続いてます。最近では朝はスマホを置いてサイレンスな時間を過ごしています。毎日のディナチャリヤからのyogaと瞑想が自分の一日のルーティーンとなっています。たくさんの情報が溢れる社会の中で毎日元気に、少しでもブレない自分でいるために。サイレンスな時間やセルフタイムに何も考えない時間を日常に取り入れ、生かすことは可能です。電車の乗った時の移動時間にスマホを見ないで目を閉じて静かに過ごしたり、朝起きた時や寝る前に呼吸を感じながら静かな自分を感じることも。

今も奥之院にて”生きて”いる空海さん。学ぶことと体験は一体と考えていました。何に気づき、何を持ち帰るかは自分次第。すべては体験することから始まります。空海とニーマル先生の時空を超えた愛と学びのJourney into myself 自分の内側への旅は、高野山に呼ばれる夏旅でした。

Edit : Naho Sasaki Text : MICHIRU Photo: Momoko Kaneko

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