写真家たちの冒険 vol.4 小浪次郎 「ニューヨークの新しい景色」 | Numero TOKYO
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写真家たちの冒険 vol.4 小浪次郎 「ニューヨークの新しい景色」

人生で経験できることは、残念だけど限られているだろう。世界中の町に行くことは難しいし、身の回りのことだって全てを知らない。でも、私たちには写真家の眼差しがある。彼らの世界に触れることが、自分で体験するよりも遥かに豊かな経験になり得るのだ。特集「写真家たちの冒険」vol.4は 小浪次郎。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年6月号掲載)

ニューヨークの新しい景色

Photo: Jiro Konami
Photo: Jiro Konami


性別、国籍、街の色、混沌とした常に動いている環境に長く身を置くことで、ニューヨークという街の欲望を感じることができる。それは自分が育った東京でもそうであるが、肌感覚では全く異なるもののように感じる。ニューヨークの街が織りなす問いは巨大であり、その都市との対話を進行形で行っている。写真を一枚撮ることは、自分の欲望を一つ見つけ、それを対象化すること。それが自分にしか見えない視点をつくり上げる。その視点で世界を開示することができると信じている。新しい景色を見つける、目の前にある景色を新しいと思えるか、それが自分が世界と対する冒険である。

Photo: Jiro Konami
Photo: Jiro Konami

毎日長い年月を撮ることで変わらない変化を少しずつ感じることができる。僕たちが20年前のニューヨークや東京の写真を見て感じるように、街が変わる様を僕たちは未来に知ることになる。だから現在を撮るという記録はとても大切なことだと思う。その瞬間の刹那は二度と現れない。全ての奇跡は日常の連続であり、普遍的なことはある種、もう二度と見ることのできないもの。同じような景色も同じではない。僕はそれをフィジカルに感じ、写真という装置はそれを逃さず暴くことができる。僕の写真はその現実とファンタジーを交差し、双方を増大させ、その間を行き来するようなものになればと日々思っている。

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Text:Jiro Konami

Profile

小浪次郎Jiro Konami 写真家。活動初期より8年間、自身の父親を撮影し続け、絶妙な親子の距離感を記録した作品で2010年に富士フォトサロン新人賞を獲得するなど高い評価を得る。『父をみる』『personal memory』『GIMATAI』『黄色い太陽』などの写真集を刊行。 個展、グループ展も多数行う。17年より活動拠点をニューヨークに移す。『The New York Times』『Interview Magazine』『i-D Magazine』などで作品を発表している。

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