究極のエレガンスと気品。英国の伝統を愉しむ 豪華客船クイーン・エリザベス乗船リポート vol.1 船内ステイ編 | Numero TOKYO
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究極のエレガンスと気品。英国の伝統を愉しむ 豪華客船クイーン・エリザベス乗船リポート vol.1 船内ステイ編


世界的パンデミックもようやく落ち着き、この春、4年ぶりに日本にも多くのクルーズ船が入港しました。なかでも世界一の知名度と格式・伝統を誇るのがクイーン・エリザベスです。今回初めてこの豪華客船で「釜山~金沢~秋田~横浜6日間の船旅」を体験。その模様を2回に分けてレポートします。



なんと美しいアールデコ様式に彩られた船内……まるでアートギャラリー。これまでいくつか世界のクルーズ船に乗ってみましたが、こんなに優美で心の底からゲストを楽しませてくれる船を他に知りません。



クイーン・エリザベス(以下QEと表記)の大きな魅力が下記です。
・日本発・着コースを中心に日本人スタッフが常駐し、日本語の船内新聞や料理メニューがある
・船内デザインの世紀末アート、アールデコ様式の美しさ
・夜毎、オシャレをして楽しめるイベントやショーが盛りだくさん
・想像をはるかに超える料理&お酒のクオリティ
・英国の格式と格調高い文化、ヒストリーを感じさせてくれる

タイタニック号沈没後、真っ先に救助へ向かったのが「キュナード」の船

提供:キュナード・ライン
提供:キュナード・ライン

1997年に大ヒットした映画『タイタニック』を覚えていらっしゃいますか? あの沈没事故は1912年4月に実際に起こった悲劇ですが、タイタニック号が沈んだ後、無線を受けて真っ先に駆け付けたのが、現在のQEを保有する船会社「キュナード」のカルパチア号でした。映画の終盤でも登場する船のモデル、ちょっと感動ですよね。(船の歴史&スペックは後述)

QE初期の黄金期が蘇る「グランド・ロビー」と「ボールルーム」


コロナ禍の間も、世界では新しい高級クルーズ船が次々に生まれています。最新コンテンポラリーデザインの船も美しいのですが、QEの洗練度は別格でした。

初めてQEの吹き抜けグランド・ロビーに足を踏みいれて、その優美さに目を見張りました。まさに大英帝国時代の貴族のお城そのものです。

正面には初代QEを描いた寄木細工。それを取り囲むように、絶妙なバランスでアールデコの意匠が散りばめられています。バイオリンの生演奏が流れる中で、これから始まる船旅に胸が高鳴る瞬間でした。

キュナードが数多くのクルーズ船を多く運航していたのが1910年から1930年頃。クルーズ黄金期とも呼ばれた時代へのオマージュとして、当時流行していたデザインを現代風にしてQEに取り入れているそうです。

木材を多用していて、どこを取っても色合いが素晴らしく、乗っているだけで居心地よく癒される、そんなクルーズ船です。

洋上最大級を誇る2階のクイーンズ・ルーム(ダンスフロア)もQEならではの特徴。床は踊りやすいウッドフロア。「踊りたいならQEに限る」と評判です。

QEの旅程には、テーマナイトが設けられることもあります。今回は、仮面舞踏会をイメージした「マスカレード・ボール」と、赤やゴールドの服装を愉しむ「レッド&ゴールド」。

出発前にドレスや仮面を用意するのも心躍る経験でした。

いかにも英国らしいアフタヌーンティーの儀式が新鮮!

もっとも英国らしさを感じたのが、毎日午後3時から「クイーンズ・ルーム」で始まるアフタヌーンティーのセレモニー。

15時ちょうどになると、ハープ生演奏とともに20名ほどのクルーたちが一斉に集い挨拶をして、その後各テーブルを回り始めます。

サーブは3回あって、1度目はサンドイッチ、2度目はペストリー、3度目はスコーンですがどれも驚くほど美味。とくにふわふわの生地のスコーンは感動のおいしさ。

クイーンズ・ルームの入口にはこの船を命名した故エリザベス2世女王の肖像画が掲げられています。

洋上一のお酒のクオリティと美食を極めるレストランやバーの数々

メインダイニングの「ブリタニア・レストラン」。

毎晩メニューは変わり、毎日通っても飽きません。柔らかいビーフと、彩り豊かな前菜。

通常はボトルでしか出せないような高級ワインが、グラスでサーブできるというから驚き。ワイン消費量世界一の英国、QEならではのセレクションです。

初日の朝いただいた典型的なイングリッシュブレックファースト!

提供:キュナード・ライン
提供:キュナード・ライン

「リド・レストラン」は、深夜まで営業しているビュッフェレストラン。好きな具を選び、その場で焼いてもらうピザも人気です。

朝食はフルーツをたっぷり。日本食のマグロの刺身や巻き寿司、味噌汁も用意されていました。

提供:キュナード・ライン
提供:キュナード・ライン

毎日のように通ったのが英国風パブ「ゴールデン・ライオン・パブ」。キュナードオリジナルのクラフトビール3種はもちろん、評判が高いのがお料理。

とくに英国の国民食フィッシュ&チップスは、タラの身の分厚さといい、カラリとした揚げ具合といい極上のお味でした。

ビーフパイ、アンガスビーフバーガーも最高。英国料理のイメージを覆します。写真はビーフパイ。

お気に入りの「ミッドシップス・バー」

世界のジンが43種も! 加えて、キュナードオリジナルのジンが3種、なんとトニックウォーターは13種もありました。人が少ないので狙い目です。

実は筆者のいちばんのお気に入りとなったのが、船の10階の一番先頭部分に位置する「コモドアー・クラブ」。ここはスコッチウィスキーの宝庫です。すぐ近くにはナイトクラブ「ザ・ヨット・クラブ」が。DJに好きな曲をリクエストできるので、最高に弾けること間違いなしです。

世界でも有名なビートルズ・コピーバンドのライブは滞在中一番の盛り上がり!

今回のクルーズのテーマは「ベスト・オブ・ブリティッシュ~英国ミュージック&ビートルズ~」でした。その目玉イベントが、世界でも有名なビートルズのトリビュートバンドライブ「ザ・ブートレッグ・ビートルズ」です。現在のメンバーは4代目で、過去には東京の武道館で観客を満員にしたこともあるそう。

とにかく4人のメンバーが登場すると、そっくりすぎて……それだけで笑いが止まりません。衣装は当時の完璧なレプリカで、楽器もビートルズと同じものを使用。演奏曲は皆がよく知る名曲ばかりです。最後のアンコールを入れて12曲ほどでしょうか。20代から80代まで、ロイヤルシアターは超満員。

日本人ゲストの紳士が、1曲目から踊りまくっていて、みんなもつられて結局は全員総立ちで踊り続けるライブとなりました。クルーズ期間の6日のうち2度のライブがあり、初回で楽しすぎたこともあって、2回目は最前列の席をキープすることに。改めて、ビートルズナンバーの奥の深さをかみしめました。

提供:キュナード・ライン
提供:キュナード・ライン

別日のミュージカルも英語でしたが、あらすじを読んでおけばそれほど難しくはなく、とにかく皆が美男美女揃い。踊りも素晴らしく、ハイレベルな観劇を楽しめました。写真はイメージです。

そのほかの船内のすべてをお見せします!


こちらが筆者が泊まったスタンダードクラス「ブリタニア」の海側バルコニーの客室。

スパークリングワインがミニバーの中で冷やされていました!

バスルームは狭いながらも、とても使いやすい造り。

ペンハリガンのバスアメニティ。キュナードのロゴ入りバスローブとスリッパもあります。

バルコニーでいただいたルームサービス朝食。毎日ご馳走続きなのでこの日は控えめにコンチネンタルで。

スパとフィットネスセンターも充実しています。2日目の航海日の午後は大海原を見晴らせるサウナで汗を流しました。写真はサーマル・スイート。

船内にはアーケードギャラリーやショップもあり、日本航路のためにQEクッキーが売られていました。

こちらは図書館。ゆっくりと静かに読書をしたいならこちらへ。

最後にまとめ……ドレスアップしてガラディナーを愉しむ夜もサイコー!

近年は「ドレスコード」をなくすラグュアリー船も多いのですが、QEは夕食時には「ガラ・イブニング」と「スマート・アタイア」という2つのドレスコードがあります。ガラ・イブニングの夕方、ドレスに身を包み、華やかなメイクで仮面をかぶり、部屋を出る時の緊張感は今でも忘れられません。非日常から離れて過ごすQEならではのキラキラとした時間が待っています。

次のQEではもっとスリムになってゴージャスなドレスを探そう! すでにそんな気持ちになっている自分がいます(笑)。

憧れのQE、お値段は日本発着ならば20万円台と意外にリーズナブル。とくに初クルーズ体験、という方にはぜひともおすすめしたい豪華クルーズ船です。写真はバルコニーから見るサンライズ。

簡単に、QEの歴史とスペック紹介

キュナードは1840年に大西洋横断のための定期船運航をスタートさせ、同時に英国王室公認の郵便事業を担う。現在「クイーン・エリザベス」「クイーン・メリー2」「クイーン・ヴィクトリア」の3艘を保有。「クイーン・エリザベス」は3代目で2010年に就航。2018年に全面改装を終えている。船籍は英国領バミューダ、総トン数は9万900トン、全長294m、最大幅32.3m乗客数2,081名、乗組員数980名(初代QEは1940年に就航)。

キュナード・ライン
URL/www.cunard.jp/

Photos & Text: Sachiko Suzuki(Raki Company)

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