最初で最後の来日。中国発ボーイズグループ「INTO1」の2年間の軌跡
中国のサバイバルオーディション番組『創造営2021』で結成されたボーイズグループ・INTO1が初来日し、2023年4月7日にGARDEN新木場FACTORYで「INTO1 “GROWN UP” FANMEETING IN TOKYO」を開催した。2年間の期間限定のユニットであるINTO1は、4月末にグループとしての活動が終了する。初来日で最後になった日本公演、そして前日に行われた記者インタビューを交えながら、INTO1の2年間を振り返る。
INTO1の始まりは、全世界で50億回再生された番組『創造営2021』
まず、中国のアイドルオーディション番組の歴史を振り返ってみよう。2018年に動画配信サービスのiQIYIから『偶像练习生IDOL PRODUCER』がスタート。そこから、蔡徐坤(ツァイ・シュークン)を擁するボーイズグループNINE PERCENTがデビューした。また同年、テンセントビデオの『創造101 PRODUCE 101 CHINA』からガールズグループのRocket Girls 101がデビュー、その後、『青春有你』シリーズからは、UNINE、THE9、IXFORM、『創造営』シリーズからはR1SE、硬糖少女303(BonBon Girls 303)がデビューし、中国におけるオーディション番組出身のアイドル黄金時代が到来した。
INTO1は、テンセントビデオ(海外はWeTV)が制作したオーディション番組『創造営2021』から生まれた11人組ボーイズグループだ。中国のリゾート地・海花島を舞台に、中国、日本、タイ、ロシアなど、世界各国から90人が集まり、デビューを目指す。お互いに切磋琢磨しながら、共同生活から生まれる友情や、国を越えた温かな文化交流が大きな反響を呼び、全世界で50億回再生されるほどの大ヒットとなり、INTO1はデビューから世界各国から大きな注目を浴びていた。
2年間の活動を振り返る、最初で最後の日本公演
4月7日の日本公演は、そんな彼らの歴史を振り返る映像からスタートした。ピンクをベースにした衣装の11人が、3月にリリースされたばかりの「更酷的世界」を力強く披露。続いて彼らの出会いとなった『創造営2021』のテーマソング「Chuang To-Gather, Go」へ。
2年間、彼らの来日を心待ちにしていたINsider(INTO1のファンのこと)たちは一斉にヒートアップ。前日の記者インタビューでも、彼らは日本からの応援の声についてこう答えていた。
劉宇(リュウ・ユ)、賛多(サンタ)
力丸(リキマル)、米卡(ミカ)
高卿塵(ナイン)、林墨(リン・モ)
伯遠(ボー・ユエン)、張嘉元(ジャン・ジャーユエン)
尹浩宇(パトリック)、周柯宇(ジョウ・クユ)
劉彰(AK)
劉宇(リュウ・ユ)「『創造営2021』の頃から、日本にもファンがたくさんいることは知っていました。だからこの日のためにたくさんパフォーマンスや曲を準備してきました」
劉彰(AK)「以前、握手会を開催したとき、僕らに会うために中国語を勉強してくれた方がいたり、劉宇のファンは漢服を仕立てて着たりして、日本からの応援を感じていました」
米卡(ミカ)「僕のママは日本に住んでいるので、ずっと日本でも話題になっていると教えてくれていました」
賛多(サンタ)「日本で創造営を見るには、アプリを入れたりしなきゃいけない。調べたり手間がかかるのに、2年間も応援してくれてすごくありがたいです」
イベントでは、劉宇(リュウ・ユ)がMCを担当。日本出身の賛多(サンタ)が「ただいまー! もうすぐ卒業ですがみなさんに会えてとても嬉しいです」、力丸(リキマル)が「さっきまでスッカラカンだった会場が満員になって感動しています」、米卡(ミカ)も「みんなに会えてとても嬉しいです」と挨拶した。日本に何度も来たことがあるという劉彰(AK)は「昨日、渋谷に行きました」と日本語で話す場面も。日本を初めて訪れたという伯遠(ボー・ユエン)はDVDのショップの品揃えに感動したというエピソード、張嘉元(ジャン・ジャーユエン)はグミ、尹浩宇(パトリック)は日本のラーメンを食べたこと、周柯宇(ジョウ・クユ)は『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で見た、渋谷の交差点に感動したというエピソードも。劉彰(AK)が、みんなで渋谷のゲームセンターに行ったというエピソードを披露してくれた。
ライブは「天生就要飞」から、歌声のハーモニーが美しい「一杯火焔/Together Somewhere」へ。合間のゲームコーナーでは、メンバー同士で送り合うスタンプの顔真似ゲームをしたり、11人がいつものように楽しくはしゃいでしまい、通訳が追いつかないという微笑ましい一面も。「就这样长大」「没有拥抱的合照」と続き、事前に募集されたファンからの質問に答えるコーナーへ。
最後に、INTO1の卒業を表現する最新曲「I HATE GOODBYE」、彼らのテーマソングでもある「INTO1」でイベントの幕が閉じた。
国際的なボーイズグループが叶えた夢
コロナのロックダウンもあり、継続した活動が難しかった彼らだが、2年間で印象的だった活動は、全員が声を合わせて「コンサート!」。
賛多(サンタ)「僕らは2年間ずっとコンサートしたいと思っていたんですが、それが叶わなくて。でも、ずっと準備していたんです。ようやくコンサートができるようになって、僕らの期待も高かったし、しかも海外に行くこともできました。タイのイベントもすごく感動したし、日本でも開催できて、すごく嬉しいです」
周柯宇(ジョウ・クユ)「音楽番組では、2021年6月の快手616真心夜です。ワイヤーで吊るされて一人ずつ上から舞台に降りてくるんですが、すごく特別な体験でした。とてもかっこいいものになりましたね」
力丸(リキマル)「僕もそうですね。あの水を張ったステージで披露した『山河图』、あれを越えるステージはまだないような気がします」
張嘉元(ジャン・ジャーユエン)「たくさんリハーサルができなかったんですが、舞台からのパワーを感じたんです。メンバーのおかげで舞台を完成することができたのが印象的でした。それが11人で披露する初めての舞台でした」
伯遠(ボー・ユエン)「僕たちはいろんな国から中国に来たメンバーがいる国際グループなので、中国の伝統と僕らが出会う『万里』というMVを作りました。これは中国のボーイズグループの歴史に残るんじゃないかな」
最後に、この2年で叶えた夢、そしてこれからの夢を聞いた。
劉宇(リュウ・ユ)「『創造営2021』に出演したときは、INTO1になることだけを目標にして、それを叶えることができました。毎回の活動では、INsiderのみなさんに僕らのパワーをあげたいと思ったし、みなさんの期待と信頼に答えられるように頑張ってきましたが、これからは、それがもっと向上することが僕の目標です」
賛多(サンタ)「番組中は全力を尽くしました。歌もダンスも中国語も。休むのは後からでもできるから。時間があったら練習して勉強して、自分でもよくやったなと思います。2年間成長できた部分もあるけれど、まだ足りないところもあるからもっと上を目指してがんばっていきたいと思っています」
力丸(リキマル)「『創造営2021』に参加したときは、自分のことは誰も知らないし、この舞台で自分はどこまでやれるかと不安でした。(腰痛の療養のための帰国中に)東京のポップアップイベントに参加したとき、たくさんのINsiderが集まってくれて、これまでやってきたことは無駄じゃなかったと思えました。このチームのおかげで、自分の次のビジョンが見えました。ここに参加するまで、まさか自分が歌を作るなんて思っていなかったから。新しい目標ができて夢が広がった、このチームと出会えて本当に良かったなと思います」
米卡(ミカ)「劉宇と同じく、僕もINTO1としてデビューすることが目標でした。これが僕のラストチャンスだと思っていたから、ここでデビューできなかったら、アーティスト活動を辞めようと思っていました。デビューできて良かったと思っています」
高卿塵(ナイン)「僕もINTO1になることが目標でした。その時のチームのみんなと一緒にデビューしようと話していたんです。今は自分を高めることが目標だと思っています」
林墨(リン・モ)「デビューが大きな目標で、毎回のステージをしっかりこなすという小さな目標がありました。それが叶えられて嬉しいです」
伯遠(ボー・ユエン)「INTO1になることでたくさんの注目を浴びると思っていました。自分はプレッシャーを感じると成長することができるし、夢を追って努力することができます。これからは、INTO1よりももっとプレッシャーがかかると思います。この2年間は充実した時間でした。この2年間のプレッシャーには感謝しています。それが自分のエネルギーになりました」
張嘉元(ジャン・ジャーユエン)「僕はINTO1になること以外に、2つ目標がありました。ひとつは曲を書くこと。自分で学んで、いろんな曲を作ることが得意になりました。二つ目は運転免許証を取ること。送迎してもらっていて、車が運転できるのはかっこいいなと思って。それも実現できました」
尹浩宇(パトリック)「最初はINTO1になることが夢で実現しました。INTO1のメンバーになったとき、何がしたいかと聞かれて、みんなで旅行して中国を見てみたいと答えました。INTO1は中国のいろんな都市や、タイにも日本にも行き、大きな舞台にも立つことができました。これからは、最近、ステージの機会も増えているから、今後はもっと舞台に立ちたいし、ドラマなどの俳優のお仕事でもみなさんに見てもらえるように頑張りたいと思っています」
周柯宇(ジョウ・クユ)「このメンバーでコンサートをすることが目標でした。それが叶えられたけれど、まだ気持ちが追いついていなくて、夢が現実になった実感がないんですが、18歳で抱いた夢を20歳で叶えられてとてもラッキーだと思います。今後の夢は『もっとすごい人になりたいです(日本語)』」
劉彰(AK)「INTO1でたくさんの曲を書きたかった。1曲しか書けなかったけれど、自分では満足しています。今後はもっと満足のいく作品を作っていきたいです」
INTO1は、4月21日、22日に上海で最後のコンサートが開催される。これはINTO1の活動の終わりだが、彼らの物語はこれからも続いていく。世界に羽ばたく彼らの今後の活躍にも注目していこう。
Text: Miho Matsuda