人気SF小説家に空想アンケート! 【4】高山羽根子 | Numero TOKYO
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人気SF小説家に空想アンケート! 【4】高山羽根子

SFのスタートは壮大な空想である。未来はどうなる? 宇宙へ行きたい? そしてSFとは? 人気SF作家の頭の中を覗いてみると、私たちの世界もまるで無限に広がっていくようだ。第四回は高山羽根子。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年1・2月合併号掲載)

普段着はより機能的に、そうでない服はロールプレイ的自己表現になっていきそう

──100年後の未来、人間の肉体はどのように変化/進化/退化していると思いますか?

「100年程度の年数だと、人体であればそこまで明確に外観の変化はないかもしれません。国という枠組みもそのころならばまだ継続しているだろうと思えるので、寿命や健康の度合いは国や所属階級の豊かさに準じるでしょう。豊かな層の人たちなら、見てわかる老いは今より遠のいているということは間違いないと思います」

──肉体の変化にともない、100年後の衣服やファッションはどうなっていると思いますか?

「メタバースやVR、WEB3的な考えを元にしたソーシャルサービスが一般的なレベルで発達するのであれば、普段着はアウトドアメーカーなどの開発によるもののような、デザインよりは極端に機能性に特化したものを身につけるようになると思います。吸湿速乾、涼感温感、ノーアイロンや軽量、抗菌、防臭、防汚素材など。特に移動を頻繁にする都市生活者なら、軽くて嵩張らないのに暖かさは保障するようなものが主流になりそうです。いっぽうの揺り戻しで、なにかのオフラインイベントやパーティ、街歩きのための服装は、特別感がある、あるいはSNSアカウントのほうに引き寄せられるようなロールプレイ的自己表現に即したものになっていくかもしれません」

──もし24時間だけ未来か宇宙に自由に行けるなら、どちらに行ってみたいですか? その理由は?

「宇宙、をどの程度の遠くまで設定するかにもよりますが、1時間出ても死なないというのであれば宇宙でしょうか。未来は、同じ場所であれば相当先でもその空間では生存可能でしょうけど、宇宙の場合は普通に行けば死なないで居られることのほうが難しいと思うので、1時間そこに置かれて、その場所で生きていられるのであれば宇宙のほうが得した気分になりそうです。1時間あれば結構なことができそうですし」

──SFというジャンルが誕生して久しいですが、なぜ作家やクリエイターは遠い未来や宇宙など「ここではないどこか」に思いを馳せると考えますか?

「SFという言葉自体は新しいかもしれませんが、神話や民話、壁画などで絶えず人類は想像力を発揮しています。古文書にUFOのような記述がある、という記事を見るたびに『字や絵が描けるなら、どの時代でもSFは書かれるのだろう』と思います」

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Realization:Miki Hayashi

Profile

高山羽根子Haneko Takayama 2014年に短編集『うどん キツネつきの』で書籍デビュー。20年に「首里の馬」で第163回芥川賞を受賞。他の著作に『居た場所』『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』『暗闇にレンズ』など多数。シナリオ原案を手がけたゲーム『スペースポンポン号の殺人』が発売中。

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