人気SF小説家に空想アンケート! 【3】倉田タカシ
SFのスタートは壮大な空想である。未来はどうなる? 宇宙へ行きたい? そしてSFとは? 人気SF作家の頭の中を覗いてみると、私たちの世界もまるで無限に広がっていくようだ。第三回は倉田タカシ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年1・2月合併号掲載)
目が6つ、頭に蛇……人々がさまざまに造形の自由を謳歌する時代の到来を期待したい
──100年後の未来、人間の肉体はどのように変化/進化/退化していると思いますか?
「人間自身の遺伝子操作をオーケーとするかどうかについては、50年後くらいに社会の意識が固まるような気がします。そこで改造のほうに振り切れたら、直径2メートルの球に眼が6つあるだけとか、人々がさまざまに造形の自由を謳歌する時代になるのではないでしょうか。もし遺伝子操作が全面的に禁じられるとしても、頭にたくさんの生きた蛇を生やすくらいは外科的にできるだろうと期待しています(頭に蛇は、ベタなようで案外アレンジの幅が広いです)」
──肉体の変化にともない、100年後の衣服やファッションはどうなっていると思いますか?
「上記のとおり、遺伝子を書き換えなくても身体改造はいまよりも簡単にできるようになるし、やり直しもきくでしょうから、身にまとうものよりも体そのものに焦点を合わせたファッションがもっと盛んになるかもしれません。一方で、古いものも残っていくと思うので、今と同じ形のダッフルコートを着ている人と並んで、全身の皮膚に自動生成の立体レース模様をアニメーションさせた人が歩くような風景が見られるといいなと思います」
──もし24時間だけ未来か宇宙に自由に行けるなら、どちらに行ってみたいですか? その理由は?
「小説の結末を先に読みたくないというのと同じ意味で、未来は避けたい気持ちがあります。もっとも、未来に行って戻ってきたら出来事の流れが変わってしまうので、見てきたとおりの未来にはならないだろうとは思うのですが。可能ならば、24時間といわずひと月くらい火星のホテルに滞在して、うち3週間は砂嵐、みたいな経験をしてみたいです」
──SFというジャンルが誕生して久しいですが、なぜ作家やクリエイターは遠い未来や宇宙など「ここではないどこか」に思いを馳せると考えますか?
「日々の暮らしもフィクションも、人間にとっては結局のところすべて現実の体験として受け取るしかないものなので、じつは未来も宇宙も『いま・ここ』なのだろうと思っています。でも、いちばん遠い夢を見せてくれるものではあるのでしょう。どちらも、あと50年くらいは刺激的なものでありつづけてくれたらいいなと思います」
Realization:Miki Hayashi