見たことない!を届ける気鋭の表現者たち。vol.5 ミュージシャン・歌代ニーナ | Numero TOKYO
Culture / Feature

見たことない!を届ける気鋭の表現者たち。vol.5 ミュージシャン・歌代ニーナ

「これいったい何!?」と思わず見入ってしまうような“普通じゃない”を覚える作品に、いまワクワクが止まらない。
それらを生み出し、私たちの感性を刺激してやまないアーティストやクリエイターをピックアップ!
第5回はミュージシャン・歌代ニーナ(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』12月号掲載

Photo:Rei Delos-Reyes
Photo:Rei Delos-Reyes

日常会話をヴィジュアルやサウンドに広げる

「昨年、歌代ニーナ名義のアーティスト活動をスタートさせ、今年にかけて“ヒステリア”をテーマにシングル『ARIA』『ÉTUDE』『HYMN』とEP『OPERETTA HYSTRIA』を発表しました。インスピレーション源は日常会話。私は人間関係がストレスになりやすいのですが、仕事でいろんな方と一緒に作品づくりをしたり友達と話すなかで思ったことを主軸に、ヴィジュアルやサウンドを広げていきました。さらに今作は長い目で見て私のベースとなるようなものにもしたかったんです。私はバレエや乗馬を長くやっていたので、ルーツはクラシカルなもの。ホラーも好きなので、それらからイメージを膨らませていきました」

シングルやEPのジャケットのアートディレクションも自ら手がける。「ロンドンにいたとき、拷問器具が残っている精神病院の廃虚で行われたゲリラレイブに参加したことがあって。病院という世間的に『良し』としているものの怖さを感じたことから、病院を思わせるクリーンな白青のトーンで統一しました。『ARIA』はアンデルセン童話の『赤い靴』やヘルムート・ニュートンの写真がリファレンス。『HYMN』は宗教史の出来事をモチーフに。『ÉTUDE』はシルエットと実物が全然違うという怖さを表現しました」
シングルやEPのジャケットのアートディレクションも自ら手がける。「ロンドンにいたとき、拷問器具が残っている精神病院の廃虚で行われたゲリラレイブに参加したことがあって。病院という世間的に『良し』としているものの怖さを感じたことから、病院を思わせるクリーンな白青のトーンで統一しました。『ARIA』はアンデルセン童話の『赤い靴』やヘルムート・ニュートンの写真がリファレンス。『HYMN』は宗教史の出来事をモチーフに。『ÉTUDE』はシルエットと実物が全然違うという怖さを表現しました」

『ARIA』ミュージックビデオより Photo:Takao Iwasawa
『ARIA』ミュージックビデオより Photo:Takao Iwasawa

「『ARIA』のMVで泣いている表情を入れたかったのですが、簡単に泣けなかった。でも現場で精神的に追い詰められて泣くことができました。演技もできるようになりたいし、身体能力を上げることでクリエイティブの幅が広がると思うので、ここ数年は体をつくることに注力しています」 
「『ARIA』のMVで泣いている表情を入れたかったのですが、簡単に泣けなかった。でも現場で精神的に追い詰められて泣くことができました。演技もできるようになりたいし、身体能力を上げることでクリエイティブの幅が広がると思うので、ここ数年は体をつくることに注力しています」 

「大学で美術史を専攻し、違う時代の違う作品を比較して相違点や類似点を見つけるという勉強をしていたので、何かと何かをリンクさせるのが得意に。例えば“この人のメンタリティはこういうライティングで表現できるな”とか。あと、絵画における光の描かれ方によって時代が見分けられるのでライティングのリファレンスを出しやすい。だから映像監督やフォトグラファーとのコミュニケーションはすごく取りやすいです」

「ロールモデルにしている存在というと、シルヴィ・ギエムというバレエ界に革命を起こしたバレリーナ。すごくパンクで影響を受けています。あと、コメディアンのデイヴ・シャペルのストーリーテリングの技術はラップ面で参考にしています。トークだけで人種や世代を超えて共通項が持てるのはすごいこと。“面白い”は正義だと思うので、ユーモアがない制作物は無理なんです」

歌代が編集長を務めるインディペンデントマガジン『PETRICHOR』。「参加アーティストを立て、私は一歩引いて編集長の役割に徹しています。謙虚さを忘れたくなくて、他人のものに染まる空間として必要」 『PETRICHOR MAGAZINE VOLUME 0』
歌代が編集長を務めるインディペンデントマガジン『PETRICHOR』。「参加アーティストを立て、私は一歩引いて編集長の役割に徹しています。謙虚さを忘れたくなくて、他人のものに染まる空間として必要」 『PETRICHOR MAGAZINE VOLUME 0』

特集「見たことない!を届ける気鋭の表現者たち」をもっと読む




Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara

Profile

歌代ニーナNina Utashiro ドイツ、日本、アメリカにルーツを持つ。スタイリスト、ライター、エディターとして活動し、2018年にインディペンデントマガジン『PETRICHOR』を創刊。同年、Thirteen13名義でラッパーとしての活動を始め、自らクリエイティブディレクションを担当。21年、歌代ニーナ名義のアーティスト活動を開始。22年7月、1st EP『OPERETTA HYSTRIA』をリリースした。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する