2022年のK-POPを振り返る!part3「グラフィックデザインのトレンド」 | Numero TOKYO
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2022年のK-POPを振り返る!part3「グラフィックデザインのトレンド」

K-POPといえば、カムバごとに数形態でリリースされるCDのパッケージデザインや、ユニークなティーザー広告も魅力のひとつ。今年は、アート・ディレクターのミン・ヒジン氏がプロデュースしたグループ、NewJeansがデビューしたことも話題になりました。そこでK-POPが好きなグラフィックデザイナー、hydekickさんを迎えて、現在のK-POPのグラフィックの特徴を解説してもらいました。

「韓国っぽさ」に対抗する、アシッド・グラフィックスとマキシマリズム・デザイン

「Acid Graphics(アシッド・グラフィックス)」というのは、Instagramなどで2019年から盛り上がっているデザイン・スタイルのムーブメントです。サイケデリックな3DCGや鋭利でクロマティックな質感のフォントが特徴で、90年代のクラブのフライヤー文化のリバイバルとも捉えられています。



K-POPでは、aespaなどはデビュー当初からアシッド・グラフィックを多用している印象がありますが、ここ数年流行しているヴェノムコンセプトにもフィットするので、他にも多くのグループがアシッド・グラフィックスを取り入れたり、MVの世界観や衣装デザインにも反映されています。



人気のコスメのパッケージなどは、スイスやオランダのタイポグラフィや伝統的なグラフィックの流れを、アジアのプロダクト文化に独自融合してきたものが基盤になっています。aespaやHYO、Stray Kids、THE BOYZなどのグラフィックは、そういうシンプルなグラフィックではなく、「マキシマリズム」の流れを感じさせます。

絵文字、チャット、プリクラ! ムードは90年代からY2Kへ

今年、もうひとつの大きな潮流が「Y2K」です。2000年代といえば、K-POP第4世代のメンバーたちが生まれた時代。彼ら・彼女たちのルーツである当時の空気感を、最新のVFXで表現しています。STAYC「BEAUTIFUL MONSETER」やNewJeans「Hype Boy」にも、チャット画面や絵文字の懐かしいモチーフが登場。デビューからアシッド・グラフィックス一辺倒だったaespaも、「Life’s Too Short」のMVでは「ゆめかわ」を感じさせる世界観に。昨年のIVEのデビュームービーも、プリクラや「プリ帳」の落書き、ステッカーなど90年代後半から2000年代の雰囲気を感じさせます。そしてTWICEの「Talk that Talk」のMVのコンセプトとして採用されたことで大衆にも一気に認知されましたし、年末のKBS歌謡祭のテーマも「Y2K」にもなりました。




Y2Kに関連して、NCT DREAMの『Beatbox』も面白いデザインでした。よくアイドルが趣味で描いたイラストを、グッズやステッカーにすることがあるのですが、デザインの整合性が取れないので、デザイナーにとっては難易度の高い仕事なんです。でも『Beatbox』は、こういったタイプの完成系なんだと感じました。これがすごいのは、ティーザーのようにメンバーがイラストを描く動画を先に出しておいてから、そのメンバーが描いたイラストをデザインに使ったデジパック盤をリリースしたこと。より自己プロデュース感や、ハンドメイドの雰囲気を伝えています。そのほうがファンは絶対に嬉しいはず。メンバー個人のデジパック盤で挑戦的なことにトライするのも、最近の流れだと思います。

デザインで雰囲気を伝える、スケジュールポスター、トラックリストが面白い!

グラフィック面で目を引いたのが、EXOのリーダー・SUHOの『Grey Suit』のスケジュールポスターです。時系列を表現したセットデザインとレイアウトは、まるで韓国映画のポスターのよう。兵役期間を終えてソロアルバムをリリースする、SUHOだからこそのデザインです。新たなるスタートを感じさせる表現の面白さがありました。

もうひとつは、SEVENTEEN『SECTOR 17』のトラックリストです。曲ごとに違う世界観や雰囲気があることをレタリングで表現しています。公開できる情報が限られている段階で発表されるトラックリストですが、さすが、ファンを楽しませることが得意なSEVENTEENだと感じました。また、このグラフィックは、メドレービデオの各タイトルでも使われています。こういったタイポグラフィは作っておくといろんなものに流用できるので、これからも、レタリングやタイポグラフィの需要は高まっていくかもしれません。

この名前だけは覚えておこう。注目のデザイナー、カンパニー

最後に、hydekickさんが注目するクリエイター&カンパニーを紹介! この名前を知っておくと、K-POPがもっと楽しくなるかも!

キム・ヒョンジン(POT)

タイプデザイナー。NCT 127『NCT #127 Neo Zone』やSTUDIO CHOOM『BE ORIGINAL』のロゴをデザインしています。今後、こういったタイプデザイナーの需要は増えていくのではないでしょうか。
Instagram: @pot_works

チェ・スビン(suuub services)

グラフィックデザイナー。3Dを使った質感表現、ネットカルチャーを感じるミームのようなデザインが特徴です。SEVENTEEN、THE BOYZなども手がけています。
Instagram: @choisubin__

Plus X + HuskyFox

BTSやTXTなど、ブランディングやストーリーテリングを重視するHYBEのアーティストを多く手がけるブランディングカンパニーです。LE SSERAFIMのヴィジュアルアイデンティティも手がけており、プロジェクトシートを見ると、グループコンセプト、それに沿ったデザインが細かく説明されています。それに加えてLE SSERAFIMビジュアルディレクターには、BTSを担当したNu Kim名義で知られるKim Sung Hyun氏が参加しています。
http://huskyfox.com/

form & function

HYBEつながりでは、SEVENTEENのロゴデザインが、今年刷新されました。それを手がけたのはブランディングカンパニーのこちら。ファンダム「CARAT」のロゴもグループとの対比でデザインされており、そこに愛が感じられます。
www.behance.net/gallery/144228879/SEVENTEEN-Brand-Design

MOSWANTD

コロナ禍で渡航が制限される中、日本やアメリカの音楽番組出演時のパフォーマンスビデオを制作していたのがこちら。HYBEのアーティストの他、TWICEやNCT 127、Stray Kidsの「SKZOO」も手がけています。
Instagram: @moswantd_mv


 

Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto

Profile

hydekickヒデキック 東京を拠点に活動する、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー。K-POPはSMエンターテインメントのグループを中心にウォッチ。NewJeansのデビューにあたり、以前書いたミン・ヒジン氏の記事が話題に。 Twitter: @hydekick https://note.com/simonsays

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