2022年のK-POPを振り返る!part2「BTSの決断。そして新しい時代へ」
part1では勢いのあったガールズグループの1年をおさらいしましたが、part2ではボーイズグループや、K-POPと関係の深い日本のグループを振り返ります。ビッグネームのカムバや、待ちに待った日本公演、世界展開などニュースがたくさんありました。今年の話題を振り返りながら、来年のK-POPシーンを占います。
NICE73(Twitter:@NICE73555) 韓国にて歌手として活動後、K-POPグループの日本語の訳詞、日本オリジナル楽曲の作詞、作曲、レコーディングボーカルディレクションなど、制作にも携わる。近年、韓国関連の各種イベントでMCや、テレビやラジオのナレーションを担当。Numero.jpでは「大人のためのK-POP入門」2021年の「K-POP忘年会」にも登場。
eelica(Twitter:@e_e_li_c_a)18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、ファンク、ジャズ、中東音楽、タイポップスなどさまざまなジャンルを経て、K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。
hydekick(Twitter:@hydekick)グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー。K-POPはSMエンターテインメントのグループを中心にウォッチ。NewJeansのデビューにあたり、以前書いたミン・ヒジン氏の記事が話題に。
藤林美紀(Instagram:@mikittyisland) PR・セールスコーディネイター。22AWより自身が手がけるデニムブランドBONNY WOVENをスタート。ファッション、ビューティなど手がけるジャンルは多岐に渡る。元々ジャニヲタで、今もSMAPは神的存在。推しはBTS、ENHYPEN、&TEAM。韓国ドラマにもどっぷり。
梶山史織(Instagram:@shiorikajiyama) Numero TOKYO編集部ファッション・エディター。ファッション撮影のディレクションやスタイリング、カルチャーやライフスタイルなどを担当。幼い頃からダンス経験があり、ダンサーオタクでもある。K-POPは、SMエンタを中心に幅広く愛する。
松田美保(Twitter:@cosmoshoshima) ライター。カルチャーやライフスタイルを中心に活動。アジアのHIP HOP / R&Bを掘っているうちに気付けばK-POP沼へ。最推しはWayVだけど、どんどん増えていくペンライト。C-POPも好き。
BIGBANGが4年ぶりにカムバ! 次なる展開は?
藤林美紀「BIGBANGは2013年ごろからライブに通っていたので、今回のカムバもすごく楽しみにしていました。『Still Life』は予想してたものより、意外とゆったりした曲調で、大人へのシフトチェンジなのかなと。V.Iはいないし、T.O.Pも最後で、それでもBIGBANGとして成立することに、寂しさを感じつつも、さすがだなと」
eelica「音楽番組に出演しなくても、ずっと1位でしたね。もう彼らは曲を出せば1位になる。大衆から見てもそういうグループなんですよね」
NICE73「BIGBANGは、今、活躍するK-POPスターたちが幼い頃に憧れて、この世界に入るきっかけになった存在です。やっぱりBIGBANGはキングなんですよね」
松田美保「そうですよね。YGの後輩、WINNER、iKON、TREASUREによるMVリアクション動画がありましたが、TREASUREのYOSHIの涙にはグッときました」
NICE73「あれは私も泣きました」
藤林美紀「この曲は、ひとつの区切りなんでしょうか」
NICE73「どうでしょうね。ビートルズの後期の始まりのような印象がありますし、これからの展開も期待して待ちたいと思います」
JINが入隊! BTSはソロ活動へ
松田美保「今年の話題のグループといえば、やはりBTSでした。ソウル、ラスベガス、釜山公演の大成功、ホワイトハウス訪問、そしてソロ活動にしばらく力を入れるという発表がありました」
藤林美紀「ARMYもコロナ明けの活動に喜んでいたところで、あの食事会があり凍りつくという。でも『Yet To Come』は最高に素敵な曲でした。これまでずっと彼らを応援してきたけれど、RMもまだ途中だとはっきり言ってくれたので、ほっとしました。JINは兵役に従事しますが、J-HOPEのソロアルバム『Jack In The Box』、JUNG KOOKのFIFA WORLD CUPカタール大会の『Dreamers』、RMの『Indigo』とソロ作も出してくれていますし、『In the SOOP』も『Run BTS!』もありますから」
NICE73「あの食事会、私は2回見て、2回とも感動しました。彼らはやっぱりアーティストなんですよね。世界を代表する大スターになったけれど、その状況に自分たちも理解が追いついてないし、ただ自分たちはアーティストとしていいものを作りたいという思いがあって。彼らの色んな葛藤が見えて、それがとてもリアルで人間味があると思いました」
藤林美紀「そうですよね。ARMYたちも、きっと彼らはいろんな葛藤を抱えているのだろうとは察していたけれど、あんなことを考えていたとは知りませんでした」
松田美保「RMさんの、アイドル活動をしていると人として成熟できないという言葉は考えさせられました」
eelica「アイドル界全体へ、大きな問題を提起してくれたのは意味があることです。あの言葉を美談で終わらせてはいけないと思いました」
藤林美紀「今回のことで、K-POP業界は大変なんだと知った人も多いだろうし、BTSに続く後輩たちの環境改善につながれば」
NICE73「アイドルを目指している人は、世界的に評価されているBTSをロールモデルにすることが多いと思うのですが、アーティストとしてどんな作品を生み出していきたいか、自分たちが制作に関わらなくても、自分たちはステージで何を表現するのか、精神そういうマインドも見習えば、全体的がレベルアップしていくかもしれません」
2023年の台風の眼になるのは誰?
松田「ATEEZといえば、7月のぴあアリーナ3DAYS、12月の幕張メッセ2DAYSも即完売。韓国の音楽番組で6冠を達成しました。以前のK-POP講座でもNICE73がATEEZは絶対にブレイクすると予言してましたが、ついにブレイクしたのでは」
eelica「アメリカツアーの熱狂がSNSにアップされてましたが、こんなに?と思うほど北米での人気がすごいんです」
NICE73「デビュー当初から、事務所は海外に対して強気で売り出していたんです。なぜなんだろうと不思議でしたが、パフォーマンスを見た時、納得しました。やっぱり歌えるメンバーがいるというのも大きいですよね」
松田「マンネのJONG HOはズバ抜けて歌の天才ですが、他のメンバーもみんな上手いことに驚きました」
eelica「彼らがデビューしたときの韓国のショーケースに行ったのですが、最初からJONG HOは上手で、他のメンバーはそれなりだったのですが、気付いたらみんないつの間にか全員上手になっていましたね」
NICE73「今年を象徴するサウンドのひとつは、ミクスチャーだと思うんですね。昨年から重めのギターサウンドがヒップホップで流行っていたのですが、その波がK-POPにもちゃんと来ています。ATEEZの『Guerrilla』もそうだし、TOMORROW X TOGETHERの『Good Boy Gone Bad』も、2000年代初頭の“俺たちのミクスチャー”みたいな音がしていて大好きです」
松田「TOMORROW X TOGETHERは、今年、日本のテレビ出演も精力的でした。SUMMER SONIC 2022では、マウンテンステージが超満員で入場制限をかけていました。日本ではMOA以外にも人気が定着しているのでは。来年はぜひ大きな会場で公演してほしいですね」
梶山「Stray Kidsも今年は勢いがありました。今年リリースしたミニアルバム『ODDINARY』と『MAXIDENT』が2枚とも米ビルボードのメインチャート『ビルボード200』で1位を記録しました」
松田「ワールドツアーの日本公演もチケット争奪戦が激しかったですよね。来年2月にはさいたまスーパーアリーナと京セラドームでアンコールコンサートがあります」
eelica「コロナ明けということもあり、今回のワールドツアーのスケジュールはなかなかハードでしたね」
梶山「代々木体育館の公演を見たのですが、彼らはライブで輝くグループです。ヒップホップは詳しくないけど、ラップで感動したのは初めてでした。もはや、彼らはひとつのジャンルになりつつあると思います」
松田「チケット争奪戦といえば、SEVENTEENも東京、大阪、名古屋のドーム公演のチケットが取れなかった方も多かったとか。NCT DREAMもチケット争奪戦に敗れた方も多かったそうですが、来年、京セラドームが発表されました」
eelica「NCT DREAMは、もはや何をリリースしても確実にヒットする域に到達しましたね」
hydekick「『Beatbox』も『Glitch Mode』もサビのダンスがTikTokでバズりましたけど、最初にコンセプトから練るのか、それともバズらせるための振り付けを作ってそこから膨らませるのか、制作のプロセスが気になります」
NICE73「大会社になると社内にかなり大きなスタジオがあり、作家陣がコライトした楽曲のストックもたくさんあるんです。チームで動く作家さんたちはチームで話し合って作ることもありますし、例えば最初に『Glitch Mode』というワードが浮かんだら、そこから膨らませていくこともあると思います」
梶山「ダンスも複数のコレオグラファーに依頼して、それを組み合わせていますよね」
hydekick「SMP FLOORというYouTubeチャンネルで、それぞれのコレオグラファーが考えた振り付けが公開されました」
eelica「それを全て俯瞰して、組み合わせるディレクターの力量が試されますね」
来年ブレイク必至! 今、注目しておきたいグループはコレ
松田「TREASUREがいつカムバするのかと思ってたら、『JIKJIN』と『HELLO』で今年2回カムバ、そして日本ツアーが始まりました」
eelica「1日に2公演やったり、この日程の組み方は、YGだな、という感じがします」
松田「今後は10人体制ということで、ファンとしてはいろんな思いがありつつも、これからもみんなを応援していきたいと思います」
藤林美紀「ENHYPENは、曲名にいつも入っていたハイフンがなくなり、『Future Perfect (Pass the MIC)』で第二章が始まりました」
松田「今年は念願の日本ツアーも行われて、来年1月の京セラドームも発表されました。それに関連して、ついに&TEAMが『Under the skin』でデビューしましたね」
藤林美紀「オーディション番組の『&AUDITION』も、デビューが白紙になるかも?とハラハラしましたけど、そこまで過酷なことにならなくてホッとしました」
松田「エピソードごとに脱落者がないシステムだったので安心して見ていられました」
NICE73「このシステムだと、視聴者がひとりひとりをきちんと認識できるので、今回デビューできなかった人にも、ファンがついているはず。ファンのみなさんはこれからずっと見守ってくれるので頑張ってほしいです」
藤林美紀「そうですね。&TEAMにも『I-LAND』に出演していたK、EJ、NICOLAS、TAKIをオンマ(母)目線で見守ってきたファンがいるし、ファンがいる状態でのデビューは大きいですよね」
松田「そして、NumeroのK-POP講座では毎回、密かに注目しているOnlyOneOfですが、今年も独自路線を邁進してました」
NICE73「『skinz』はすごくいい曲でした。ダンスミュージックのジャンルにこれまでこんな曲はあったかなと思いますし、どんなシンセ音源にも入ってなさそうなシンセサイザー音がするんです。制作陣にすごくマニアックな方がいて、音自体をこだわって作っている可能性があります」
eelica「ニッチな路線を狙ってると思うんですけど、楽曲制作もコンセプトもかなりギリギリなところを攻めていますよね。推す方は毎回大変そうです(笑)。今年は2回来日してますし、日本のファンは増えているとは思うのですが」
松田「日本盤ではシャ乱Qの『ズルい女』をリメイクして話題になりました。カップリングのアンサーソング『ヒドい男』も隠れた名曲です」
NICE73「プロデューサーのチョン・ビョンギさんが好きなことやっているんでしょうね」
松田「今年はグループ名の変更もありました。昨年変更されたTO1は日プ2に出演していた西島蓮汰と小林大悟が加入しました。そして、T1419がTFN、DONGKIZがDKZになりました」
NICE73「驚きました。DKZをDKBで混乱しちゃいそう」
eelica「韓国では人生の区切りで本名を改名することがあるので、グループ名を変えることは日本で考えるほど大袈裟なことではないのかもしれません。DKZはジェチャンがドラマでブレイクしたことでグループも脚光を浴びることになりましたが、SF9のロウンなどもそうで、楽曲やパフォーマンスきっかけではなく、俳優業などで注目されないと売れるのは難しいのかという諦めみたいなものは感じました」
松田「P1Harmonyが、かなりアメリカで頑張っていますが」
eelica「欧米圏で人気が出やすいグループは、メンバーにネイティブ並みに英語が話せるメンバーがいることが大きいんです。Stray KidsのBang Chanもそうですが、オンラインでも英語圏のファンとコミュニケーションしやすい。P1はKEEHOがトロント出身なので、北米にファンがつきやすいという側面はあるかもしれません」
松田「そのP1Harmonyも出演する、『2022 FNC KINGDOM』も行われました」
eelica「FNCエンターテイメントは、ミュージシャンだけでなく、『スノードロップ』で人気のチョン・ヘインなど俳優も所属しています」
藤林美紀「私、元々はFTISLANDが好きだったんですが、FNCはCNBLUEやSF9など、人気グループを抱えていますよね」
eelica「事務所が意図しているのか分かりませんが、P1Harmonyは、なるべくプライベートを見せないようにしています。K-POPはVlogやリアルタイム配信などで宿舎の様子やプライベートを公開することで、親近感を抱かせるという手法をとってきたけれど、それが少ないから、アーティストを消費している感じが薄いし、K-POP初心者も入りやすいのではないかと思います」
hydekick「たしかにK-POPに興味を持ち始めたときに、“古参”などの文脈がありすぎると萎えてしまうことがありますね。それがあるからこそ、ハマったら抜け出せないところもあるのですが」
K-POP? J-POP? アジアから世界に挑むアーティストたち
NICE73「今年を語るとき、忘れてはいけないのはXGです! 韓国の音楽番組にも多数出演していますが、『Simply K-POP』(Ariran TV)を見ていたら、コメント欄が『XG』で埋め尽くされていたんです。それをみて、これからは、こういう売り出し方もアリなんじゃないかと思いました。出身は日本でもどこの国でもいいから、韓国の音楽番組を窓口にして世界に挑む。それに韓国の人は実力を認めたら拡散が早いので、韓国で支持されたら大きな推進力になると思います。JO1が『M COUNTDOWN』(Mnet)で韓国語に挑戦したことも正解だったと思います」
hydekick「MVは、NCTとかSuperMを手がける韓国のVM Project Architectureが撮影してます。これがK-POPだとか日本発かにこだわる必要はないですし、日本のクリエイターにとっても韓国の技術を学べるいい機会だと思います」
松田「JO1やINIがKCONに出演したり、今後もこのミックスは続いていきそうですよね」
eelica「BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEがタイで活動したり、LDHがタイのHIGH CLOUD ENTERTAINMENTとパートナーシップを締結したり、日本でもいろんな動きがあります」
松田「LDHのグループ会社・HIANが『HiGH&LOW THE WORST X』のNCT 127のYUTAのキャスティングを担当したというニュースもありました。グローバルな展開は今後も注目したいところです」
2023年、どうなるK-POP?
松田「今年は楽曲のトレンドや全体の特徴はありましたか?」
eelica「1つの大きな流れというのはもうありませんね」
NICE73「K-POPがワールドスタンダードになり、外国人作家にも依頼するようになった代わりに、以前のような驚きが減りました。DRIPPINの『ZERO』には、こだわりにあるシンセサイザーの音があるのですが、そういうものが減っているような気がします。1曲の長さも短くなっていて、どんどん細分化されていくのかもしれません。そういう流れを、どんどん進化させていくのがK-POPということなのかもしれません」
eelica「やれることはほとんど出尽くしたから、次はどこまでこだわるかですよね。その点、Woollimエンターテインメントは仕事が丁寧だと思います」
hydekick「デザイン面でいうと、日本のアーティストも韓国のマナーに乗って、そこから独自色を出して行ってもいいのではないかと思いますね。CDのパッケージに関しても、日本は韓国や中国に比べて印刷の費用が高く、ジュエリーケース以外の凝ったものが難しいので、やれることはあると思います」
梶山「ファッション面からは、ハイブランドのアンバサダーを務めるK-POPアイドルは増える一方なので、まだまだ注目していきたいと思います。個人的には、早くライブの歓声が解禁される状況になることを願っています」
Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto