アジアのナンバーワンリゾート「シックスセンシズ ニンバンベイ」で サステナブル・トラベルを | Numero TOKYO
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アジアのナンバーワンリゾートでサステナブル・ステイ。ベトナムの「シックスセンシズ ニンバンベイ」へ【前編】

コロナと共存しながらも、海外との行き来が再開した2022年。一方で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、中国と台湾間で高まる緊張状態、北朝鮮のミサイル問題、約30年ぶりの円安ドル高…と、思わぬ事態が重なり、コロナ以前のような自由な旅先の選択はおろか、国を跨いだ旅そのものがすっかり贅沢品になってしまった。

そんな情勢下で大きな妨げもなく、今現在、日本から最も近いアジアの一つとも言えるのがベトナムではないだろうか。

ハノイやホーチミンという主要都市はもちろん、人気のダナンやホイアン、アップカミングなフーコック島などの豊かな自然環境を有した複数のディスティネーションに、様々なタイプのビーチリゾートが存在。いわゆる女子旅、ハネムーンやカップル、子ども連れの家族、母娘など、相手と目的に応じた選択肢も多様だ。

なかでも「Six Senses Nihn Van Bay(シックスセンシズ ニンバンベイ)」は、2022年10月に発表された『Condé Nast Traveler』の権威ある賞“リーダーズ・チョイス・アワード”で、トップリゾート部門のアジア1位およびワールドランキング7位を獲得した、世界に名だたるリゾートの一つ。今回は、偶然にも上記の発表と時を同じく訪れる機会があったこのシックスセンシズ ニンバンベイの少しの滞在記を通して、2023年以降の旅を思考してみたい。

食を筆頭に先駆的なサステナブルを学ぶ滞在

“Six Senses”といえば1995年に誕生し、サステナビリティやウェルネス、地域コミュニティとの共生や独創性あふれる特別な体験にいちはやくコミットしたリゾート。現在は17カ国、22軒のリゾートとホテルを運営し、“シックスセンシズ”という名の通り、ゲスト本人や周囲の人々、さらに自身を取り巻く世界との繋がりを深めることができるよう、感覚を呼び覚ます滞在をビジョンとしている。

そういう意味で、2004年にオープンしたシックスセンシズ ニンバンベイでは20年余りのリゾート運営の中で、以外のシックスセンシズに先駆け取り組んできた数々のサステナブルなアクションが深く根を張り、アクティビティやワークショップに完璧に落とし込まれている。ただ贅沢に自分を甘やかすだけの至れり尽くせりのリゾートとは、そもそも、成り立ちが違っているのだ。

まず特筆すべきは、シックスセンシズの十八番ともいえる隠れ家的な立地。シックスセンシズ ニンバンベイの場合は、拠点となるニャチャン国際空港から送迎車に乗り込んで約1時間、その後は専用の敷地内にある船着場から、ボートでしかアクセスできない対岸のニンバン湾へ。辿り着いたビーチは、砂浜にまで迫り出した巨大な岩々の背景に切り立つように山々が聳える、手付かずの自然に囲まれたまさにハイダウェイである。

©Hiro Matsui
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全62あるヴィラはすべてプール付き。たとえば階段から直接海に下りるとシュノーケリングで石珊瑚を見ることができる「Water Pool Villa」。

©Hiro Matsui
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岩を切り拓いた遊歩道を登った先に位置し眼下に海を望むインフィニティプールに憩う「Hill Top Pool Villa」。

一番大きなヴィラだと3ベッドルームで9人まで宿泊可能、スピードボードで海からもアクセスでき、巨大なワインクーラーやウォータースライダーも併設された「The Water Reserve」など、タイプの異なる9種類のヴィラが点在する。

©Hiro Matsui
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今回滞在したのは、数十歩でビーチまで直接アクセスできる「Beachfront Pool Villa」。1階が寝室とバスルーム、2階が大胆にもオープンエアのリビングとなっていて、いずれもダイレクトに伝わってくる湾ならではの長閑な波音、海から吹き込む風、鳥たちの声に心身を委ねることで、都会での忙しい生活で鈍っていたチャクラが開いていく。

その上で、滞在の早い段階でまず足を運びたいのは、2022年に運用がスタートしたベトナム初のリゾート内太陽光発電所「Ninh Van Greens(ニンバン・グリーンズ)」。

800枚の太陽光パネルの下部には17,222㎡のオーガニック菜園「Solar FreshCuts(ソーラー・フレッシュカッツ)」が広がり、電力を生み出しながら、レストランやスパで使用する農作物を栽培している。

2022年8月時点でリゾートが必要とする電気量の17%を供給、31種類の農作物のうち収穫された580kgがゲストやスタッフの食事に使用された証は、ベトナムのクラフトジン推しのバーやワインカーブが併設されたオールデーのファインダイニング「Dining by the Bay(ダイニング・バイ・ザ・ベイ)」の一角でも、このようにインフォメーション。

メニュー充実の朝食ブッフェでもれなく行列ができていたベトナム伝統のフォーのワゴンの軒先でも、トッピング用の葉野菜やミントは、色濃く柔らかだ。

他に客室にあったプレートでも触れられていた「Chicken Villa(チキンヴィラ)」では、フリーレンジ(放し飼い)の鶏の有精卵を自らピックアップ。朝食会場に持ち込んで好みの卵料理を作ってもらうこともできる。そうしてエネルギーを蓄えた食材の力で体がクレンズされ、一方でダイニング・バイ・ザ・ベイでオーダーするメニューの一部は「Vegan」「Macrobiotic」,をはじめメンションで区分けされていて、改めて脱酸素時代の食への態度を問い直すきっかけになるはずだ。

採れたての食材でヴィーガンクッキング

なお、話をソーラー・フレッシュカッツに戻すと、ここにはリゾートと周辺の自然との関係を一望できる高台のレストランエリア「The Farmhouse(ザ・ファームハウス)」も併設。前もってリクエストすれば、植物性由来の食材のみを使用したヴィーガンメニューを味わうことができる。

今回の滞在ではランチも兼ねて、1週間のアクティビティをまとめたスケジュールにももれなく記載がある“Plantbased Cooking Class”のワークショップに参加。

シェフの説明と動作に倣いながら、今回は「ビーツカルパッチョ」をクッキング! 薄くスライスしたビーツをお皿に並べ、とれたての瑞々しい葉物や色とりどりハーブを手に取り自らトッピングをするだけでも、汗をかきながら農作業をしていたスタッフやいのちをいただくことへのシンプルな感謝の気持ちが生まれる。

©Hiro Matsui
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ビーツカルパッチョの絶妙なアクセントにもなっていたアーモンドミルクベースのヴィーガンマヨネーズをはじめ、ポテトを使った一般的なものより糖質を抑えたとうもろこし粉のポレンタなど、食したメニューのレシピは持ち帰ることもできる。リゾートらしく、あくまで美食としてのヴィーガン料理を追求してきたクオリティを、日常のキッチンで活用できるのは、なんて有り難いこと。

ちなみに、滞在中は同じくワークショップから “Handmade soap making workshop”も体験。トライしたのは、料理に使い余った油に水酸化ナトリウムを入れ温めることで固形化。さらに菜園のレモングラスで精製したエッセンシャルオイル、リゾート内の朽ちた木材を燃やした炭で色付けした世界で一つのマイ石鹸。完成品はこちらもレシピと一緒に受け取ることができて、一連のワークショップの会場となる「Alchemy Bar(アルケミーバー)」では、他にボディスクラブ、インセンス、回収した海洋プラスティックを使ったジュエリー作りも人気だ。

ニンバン湾の珊瑚礁を保全する活動にも参加

一方で、シックスセンシズでは宿泊料以外にサステナビリティのための活動費をドネーションも募っていて、そのファンドマネーを活かした実績を、スタッフが撮影した写真や映像を通して紹介する施設「Earth Lab(アースラボ)」が設置されている。

©Hiro Matsui
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(写真右)©Hiro Matsui

特にシックスセンシズ ニンバンベイでは、ダナンにあるNGOと協力し、陸地からの汚染や地球温暖化に加え、2017年に見舞われた台風で90パーセントが死滅してしまったというニンバン湾の珊瑚礁を保全する活動「Save the Reef」に注力。

海の生き物の25%の棲家であり、陸に押し寄せる大波の防波堤になってくれると説明を受けた生態系になくてはならない石珊瑚を、スタッフが素潜りで一時的に採集。これを専用のフレームに結束バンドで括り付け、差し木のごとく、再び海へ。この際、フレームの上部に石珊瑚を集中して拘束する必要があって、理由は石珊瑚を好物とするオニヒトデに食べられないようにするため。この保全活動も有料でアクティビティ化されていて、子どもも含めゲストは素潜りの動向段階から参加可能。時には酢を注入してオニヒトデの駆除も行なっているという。

基金の使い道としては他にもリゾート内外のエリアの植林、環境活動以外でも隣接する村の学校や病院に浄水器を設置し、コロナ禍ではマスクや食料も提供。冷房の設定は上限24度まで、敷地内の移動手段となるバギーは環境を考慮し2気筒のものを採用するなど、すべてのシックスセンシズが実施しなければならない120のサスティナビリティスタンダードも存在するというから、脱帽である。

さらに自然そのものと存分に交わり合うアクティビティとしては「Experience Center(エクスペリエンス・センター)」を拠点に、ヨットや水中スクーター、ベトナムのリゾートで初めて取り入れた電動フォイルボード、運が良ければ白い尾っぽを持つ新種のラングール(猿)を目撃できる、限りなく登山に近いハイキングなども体験可。

“Catch & Dine”のアクティビティでは、その日、釣り上げることができる魚の種類を記した黒板を参考に。ここからも察せられる通り、シックスセンシズ ニンバンベイは料理にもできる限りローカルのシーフードを取り入れていて、滞在中、ニンバン湾の絶景を見下ろす山腹にある「Dining by the Rocks」での夕食でもてなされたニャチャン産ロブスターのカルパッチョも、新鮮な食感に誰もが舌鼓。

©Hiro Matsui
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一歩踏み込んで心身や環境と向き合う

また、ビーチ・リゾートで欠かせないウェルネス・アクティビティは、ハイテクのサイエンスとセラピーをブレンドしたユニークなプログラムに定評がある「Six Senses Spa(シックスセンシズ・スパ)」が心強い拠り所となるが、シックスセンシズ ニンバンベイではコロナ前年の2019年に、緑や森に囲まれた6室のトリートメントルームをリノベーション。黙々と施術に勤しむベトナム人のスタッフたちが、もれなくナチュラルフローに導いてくれる。

©Hiro Matsui
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“Flying Yoga”をはじめ、シンギングボールでウェルビーイングを手に入れる“Sound Healing Meditaion”などのプログラムを行うスタジオ、最先端のフィットネスセンターも新たに完備。

そんななかにあって “Six Senses Wellness Screening”と名付けられたプログラムは、専属のコーチによるスクリーニング分析を通じ体内の最新情報を知ることでパーソナライズされたウェルネスプログラムを受講できる、一歩踏み込んだもの。普段なかなか心身と向き合う時間が取れずにいるゲストは、覚悟して自分の体に向き合うきっかけに、ぜひとも。

©Hiro Matsui
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さらにリゾート内では、あくまでノーペットボトルが貫かれ、客室でも徹底されている飲料水のボトリングを可視化する施設が、現在建設真っ只中。ほかに雨水を再生した貯水タンクは一部にはなるがやはり客室の水を賄っていて、スタッフの手にもご覧のマイ水筒!

4歳から12歳までの子どもたちが利用できるキッズクラブ「Vooc Village(ヴォークヴィレッジ)」(Voocはラングールの鳴き声から命名)でも、遊具のニスの塗り替えにも天然素材を使うなど、目に見えないところでの自然環境への配慮がある。

ちなみにヴォークヴィレッジでは、“Grow with Six Senses”と題して、アート・クラフト・ディスカバリー・エコロジー・アウトドアなど58の無料プログラムがスケジュールされ、環境問題やベトナムを知る “My Passport”なる子ども向けの教本も、このユニークネス!

そうして滞在の最後、チェックアウトのタイミングで手渡されたのは、敷地内のライスフィールドに撒かれているベトナム産の有機米の種と、ワークショップのプログラムにもあるハンドメイドのココナッツオイル。食材も美容を輸入に頼らずにできる限りを自給するマインドをお土産にというわけだ。

すなわち、そんな様々な時間を通して、顔が見えるスタッフやコロナで閉ざされていた他の国々から参加したゲストと久しぶりに交流。サステナブルと互いの現在地をリアルに察知できるのは、シックスセンシズ ニンバンベイならではの体験で、それをあくまでリゾートの個性とするか、コロナ以降ますます地球環境に待ったなしの時代におけるリゾートトラベルのスタンダードと捉えるか。

シックスセンシズ ニンバンベイでの滞在は、空の移動からして環境を脅かす今、それでも旅を欲してやまない私たちにサスティナブル・トラベルという次時代の必然を授けてくれるという意味において、間違いなくアジアのナンバーワンリゾートにふさわしい。

<ホテル概要>

シックスセンシズ ニンバンベイ www.sixsenses.com/en/resorts/ninh-van-bay
予約/シックスセンシズホテル リゾート スパ 0120-677-651(IHG)
お問い合わせ/ japan@sixsenses.com (日本語対応)

Photos & Text: Yuka Okada

Profile

旅した人: 岡田 有加Yuka Okada 編集者・プロデューサー。81 Inc.主宰。ジャンルを問わずタイムレスなアーティスト(人間)を伝えることを軸とし、紙雑誌の企画編集を故郷に、書籍や写真集、現在は編集長を務める『GINZA SIX magazine』をはじめ、デジタルを含む数々のメディアやプロジェクトの企画プロデュースを担う。2023年は企画プロデュースを手がけた佐藤健×マリオ・ソレンティのコラボによる話題のアートブック『Beyond』(受注サイト: https://colavoshop.jp/special/beyond/ )が発売予定。 HP: https://81inc.co.jp IG: @yukaokada81

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