2022年決定版! 私が好きな韓国ドラマ【受験もの編】 | Numero TOKYO
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2022年決定版! 私が好きな韓国ドラマ【受験もの編】

テーマ「韓国お受験もの」

毎年、韓国の受験シーズンには日本でもパトカーが遅刻しそうな受験生を先導する様子や、飛行機の離発着に制限が掛けられるニュースが流されるほど有名な韓国名物「大学受験」。小学生の低学年の頃から日本の東大早慶にあたると言われる、通称SKY(S=ソウル大学、K=高麗大学、Y=延世大学)を目指すために壮絶な受験勉強が繰り広げられる。

親たちがそれこそ、持てる狂気のすべてを注いで子どもに情熱を燃やす「韓国お受験」ドラマをご紹介していこう。

1.『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』

SKYキャッスル~上流階級の妻たち~ DVD-BOX1 ¥15,400 発売元:アクロス/クロックワークス/TCエンタテインメント/ひかりTV/GYAO 販売元:TCエンタテインメント © Jcontentree corp & JTBC Content Hub Co., Ltd. all rights reserved.
SKYキャッスル~上流階級の妻たち~ DVD-BOX1 ¥15,400 発売元:アクロス/クロックワークス/TCエンタテインメント/ひかりTV/GYAO 販売元:TCエンタテインメント © Jcontentree corp & JTBC Content Hub Co., Ltd. all rights reserved.

“SKY”を目指す家族が住む超VIP団地の「お受験」戦争

韓国では、20%を超える視聴率をたたき出し、韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる「百想芸術大賞」でも数々の受賞を果たしている本作。

この作品の舞台となる「SKYキャッスル」は、富裕層の家族が住む住宅地の名前だ。豪華な戸建てが立ち並び、住人たちが「勉強会」を開く図書館など、至れり尽くせりの環境が揃う超VIP団地では、見栄と虚勢をこれでもかとつぎ込んだパーティがしょっちゅう開かれている。そこに「一見素朴」な新しい住人がやってくることで、様々な事件が起きる…。

まさに「子どもの受験は親の受験」を地で行く世界。言葉通り、子どもたちの親は合格者の受験プランを知るために必死に合格者の母親に取り入ったり、合格実績抜群な「受験コーディネーター」を雇ったりするために血のにじむような努力をする。だが、一見成功者に見える者たちの裏側が次第に明かされ、成功の代償を「SKYキャッスル」の住人達も思い知っていくことになるのだ。

主人公のハン・ソジンを演じているヨム・ジョンアの驚くほど鋭い視線と、子どもの成功のためなら手段を選ばない生き方は、最初、共感しにくい。だが、彼女の振る舞いに込められた韓国の学歴や格差社会に対する痛烈なメッセージが分かるにつれ、思わず同情のまなざしを投げかけてしまう視聴者も多いだろう。

面白いのは、日本でも「お父さんの受験の時はな~」と昔の錆びた受験知識をひけらかす父親の存在が取りざたされるが、「SKYキャッスル」でも同じ光景が見られること。この辺は万国共通なのか。日本でもこの作品が女性を中心に支持されるのは、このあたりの共感性に理由があるのかもしれない。

個人的なお気に入りキャラは、法学部の教授で封建的な父親を演じるキム・ビョンチョル。キャラクターの転換の仕方が巧みで、さすがエンタテインメントを知り尽くした韓国ドラマ、と感嘆してしまう。(日本版を作るなら、ぜひ、津田寛治さんにやって欲しい。)

 

「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」
選ばれた富裕層が住む特別な世界、高級住宅街「SKYキャッスル」を舞台に、名門大学に入るための猛勉強を繰り広げるファミリーの姿を描く。受験コーディネーターの存在や、過度な受験ストレスに苦しむ子どもの姿などで話題を呼んだ。
出演/ヨム・ジョンア、イ・テラン、チョン・ジュノ

2.「グリーン・マザーズ・クラブ」

良い時も悪い時もある「ママ友」の姿をリアルに感じられるドラマ

「SKYキャッスル」とは違った趣を見せるのが「グリーン・マザーズ・クラブ」だ。こちらも同じく、子どもの受験に必死な親たちが住むお受験エリアに引っ越してきた母親を中心に、嫉妬や羨望が渦巻くコミュニティを描いていく。 だが、こちらは「SKYキャッスル」よりも、女性同士の絆を感じさせたり、夫婦の愛情を思わせたりする描写が多い。登場する母たちは、みんな、子どものために自分の時間、自尊心、キャリアすべてを投げうって、子どもの能力を伸ばし、良い大学に入れるための努力を惜しまない。その姿は見ていて、本当に心が痛くなる。同じクラスに子どもを持つ母たちは時には反目し合い、時には助け合いながら子どもを育てていく。この辺りは、ママ友って本当にそうだな、と共感する人も多いだろう。 ドラマに登場する親たち(特に母親)は、「生まれながらの特権階級で順調なエリート」ではない。育った環境に大きなコンプレックスがあったり、仕事で問題を抱えていたり、と複雑なバックボーンがある。その悔しさ、苦しさ、惨めさを子どもの受験にこれでもか、とぶつけて発散させてくる様子が見ていてつらい。トロフィーワイフならぬトロフィーチャイルドを作り上げるために、親も祖父母も超必死なのだが、その必死さは「自分はちゃんとやっている」「自分は正しく生きている」と信じたい気持ちの表れだ。

「グリーン・マザーズ・クラブ」
受験に熱心な住宅地に住む同じ小学校のママ友たちの愛憎を描く。子どもの大学受験のために、小さい頃から様々な大会での受賞を狙うママたちの争いが描かれる。自分のキャリアと子育てのバランスに悩む母親像など、日本の子育てママたちからも共感の声が多く聞かれた。
出演/イ・ヨウォン、チュ・ジャヒョン、キム・ギュリほか
Netflixオリジナルシリーズ「グリーン・マザーズ・クラブ」独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81572801

3.「シュルプ」

どんな時代も韓国のオンマは子どものために走りまわる

こちらは10月~12月に配信されたての韓国時代劇。え、時代劇苦手、と思った方もUターンはもう少し待ってほしい。このドラマ、完全に“時代が違うだけ”のお受験ママドラマなのだ。

テーマは、広い宮廷内に住む王の妃たちとその子どもによる過酷な跡継ぎ争い。そもそも、舞台となる王朝には王妃の子どもである超優秀な世継ぎ(=世子)がいたのだが、ある事をきっかけに、最も優秀な王子を跡継ぎとして選びなおすことに。息子を「最も優秀な王子」にするべく、妃たちは受験のための家庭教師を息子たちにあてがい、時に優しく、時に木の枝でしばきながら(!)めちゃくちゃに勉強させるのだ。夜中までの勉強に、氷風呂での心身鍛錬など、その内容は過酷を極める。

主人公の王妃も例外ではなく、可愛い女子とイチャイチャしている息子の布団を鬼の形相で引っぺがし、相手を脅迫。当の息子とダッシュで学問所に駆け付けるなど、5人の個性豊かな息子のために文字通り東奔西走する。しかも、この跡継ぎ争い、命を落とす可能性がある陰謀と隣り合わせの真剣勝負なので、見ている方もハラハラが止まらない。

コメディ要素も強いのだが、現代に通じる社会問題もテーマにされており、そういった壁に愛の深さで立ち向かっていく王妃の姿が美しい。王妃以外の妃たちも息子を何とか世継ぎにしようと努力を惜しまないし、それに応えようとする息子たちの姿もジンと来てしまう。どの時代も、韓国のオンマ(=ママ)たちは、子どもの為なら喜んで身を投げ打つのだ。


「シュルプ」
韓国の宮廷を舞台にした王の妃とその子どもである王子たちの跡継ぎ争いを描くドラマ。時代劇でありながら、LGBTQの問題、男女の格差、身分の差別、毒親といった現代の社会問題もふんだんに取り入れられており、まったく飽きずに16話走り抜けられる。
出演/キム・ヘス、キム・ヘスク、チェ・ウォニョンほか
Netflixオリジナルシリーズ「シュルプ」独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81610893

さて、ここまで読んで、「韓国のママたち…お、重すぎる…」と思った人にもご安心いただきたい。どのドラマにも韓国ドラマ特有の「和ませキャラクター」がしっかり配置されているし、セレブの世界を描くだけあって、ママたちのスタイリングも非常に美しいので、楽しみにしてもらいたい。

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Text: Reiko Nakamura Edit: Chiho Inoue

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