「LIVINGTONE」ドレスアップするための“デニムトラウザー”
ジーンズを昇華させた"デニムトラウザー"を提案する「LIVINGTONE(リヴィントーン)」。いわゆるファイブポケット(ポケットが5つある一般的なジーンズ)ではなく、デザイン性があり、高揚感が得られるアイテムを生み出している。ディレクターを務めるのは、セレクトショップのバイヤーや、ブランドのクリエイティブディレクターとして活躍してきた榎本実穂さん。ブランドコンセプトやデザインのポイント、おすすめのスタイリングを教えてもらった。
少数精鋭のデザインで目指す
社会貢献につながるファッション
ディレクターの榎本さんが前職のブランドから独立し、「LIVINGTONE」のモノ作りに着手した2020年は、新型コロナウィルスが始まったばかりの時期だった。「医療体制が逼迫し、ファッションは二の次になっていたとき、このまま『ファッション業界でモノ作りを続けていいのか?』と自問することもありました。しかし、一緒に取り組む人々との対話を通して、社会貢献につながるファッションを目指そうと奮起。無駄をゼロにすることは難しいですが、自分たちにできることをやってみようとブランドをスタートさせました」。
従来のファッションブランドは年に2〜4回、30型以上のデザインを生産することも多いが、「LIVINGTONE」ではメード・イン・ジャパンで、毎シーズン渾身の約5型を発表している。「過剰な受注発注を避けながらも、継続的に日本の職人さんをサポートできる方法を考えました。生産するのは、デニムの名産地である岡山県倉敷市。人材不足で閉鎖する工場も多い中で、私たちのようなアップデートされたジーンズを作るブランドが出ることで、職人さんと一緒に成長したいと願っています」と榎本さん。
バイヤーやディレクターの経験が生かされた
常識を覆すトラウザーパターンのジーンズ
(写真上/LIVINGTONE 2022-23秋冬コレクションより)
ジーンズは、榎本さんにとってファッションに目覚めるきっかけになるアイテムだった。「姉の影響で、小学生の頃からフリーマーケットや古着屋でアメリカのヴィンテージアイテムを探していた頃から、ジーンズはいつも自分のスタイルに欠かせないものだった」と振り返る。榎本さんはヴィンテージデニムのコレクターでありながらも、これまで手がけてきたブランドではジーンズを作ったことなかった。「『LEVI’S(リーバイス)』や『LEE(リー)』『Wrangler(ラングラー)』など、完璧なジーンズを作る老舗ブランドがあるなかで、私にはデニムはデザインする余地がないと思っていました。でも、独立したタイミングでいちばん好きでもあり、難しいアイテムに挑戦してみようと、チャレンジしました」。
(写真上/LIVINGTONE 2022-23秋冬コレクションより)
「LIVINGTONE」のアイテムには、バイヤーやディレクターを経験してきた榎本さんのこれまでの知恵が詰め込まれている。「デニムの歴史は炭鉱で働く人たちのためのワークウェアから始まります。そのため、機能的で、丈夫で、いつの時代も普遍的。決まった定番の形があり、表現の範囲が狭く、簡単ではないと感じました。でも、これまでたくさんのファッションアイテムを扱ってきた経験から、いいデザインを知っていて、かっこいいシルエットを表現することにも自信がありました。あえて、トラウザーパターンをジーンズに取り入れることで、常識を覆すことができると思いました」。
ブランド名は、ストリートアートで有名なロンドンのリヴィントン通り(Rivington Street)の名前をアレンジしたもの。これまで出張や旅行でさまざまな国を訪れてきた榎本さんがリヴィントン通りで撮影した写真が、ブランドイメージのインスピレーションを与えてくれたという。ストリートアートを背景に、70年代の古着のジーンズと毛皮のジャケット、サンローランのハイヒールを合わせていた榎本さんの姿を写した思い出の一枚。雑多な街並みのなか、ジーンズでドレスアップする着こなしは、今も取り入れたい普遍的なスタイルだった。
スタイルアップ効果のある「DOLK」
ヒールと合わせて着こなして
ワイドストレートの「DOLK(ドルク)」は「Numero CLOSET(ヌメロ クローゼット)」でも展開中で、デビューシーズンから人気のあるアイテムだ。昔ながらのジーンズにリスペクトを込めて、シャトル織機でゆっくり織られた厚手のセルビッチデニムを使用。体にそったハイウエストのシルエットと、裾の大胆な折り返しのデザインで、スタイルアップ効果が期待できる。「ブランドを始める際に、最初にデザインしたのがドルク。きれいな生地と形でも、折り返しとフリンジを入れることでアンバランスな遊びを入れています」。本格的なトラウザーのポケットも特徴的で、フロントにスリットポケット、ヒップには片玉縁ポケットを配置した。
顧客の年齢層も幅広い。20〜40代の女性を中心にジェンダーを超えて、20〜30代の男性の着用も見られるようになった。また榎本さんがうれしかったのは、バイヤーの先輩やファッション業界のデニム玄人にも、愛用者が増えていること。「履いてくださった方々がよさに気づいてくださって、『スタイルがきれいに見える』『ヒールに合わせたい』などうれしい声をいただいています」。クラシックなインディゴと、モードなブラックの2色展開で、選ぶスタイルでがらりと印象が変わる。
おすすめのコーディネートは、ヒールに合わせて、抜け感のあるアクセントを加えること。「足元はヒールがマスト。ヒールでコーディネートすることで、このアイテムのよさがよりわかっていただけると思います。秋冬はブーツ合わせで、つま先の尖ったウエスタンブーツなどもおすすめです」。またウェアは、「春夏はタンクトップやロックTシャツ、秋冬はカジュアルなブルゾンや、かっちりとしたジャケットにもぴったり。パーティーの際にはファージャケットを合わせるのもいいですね。トップスがラフな場合は、アクセサリーはパールや大振りのピアス、メイクは赤いリップ、髪は艶っぽくするなど、どこかに女性らしさを加えておしゃれを楽しんでほしいです」。
LIVINGTONE
https://www.livingtone.tokyo/
Instagram:
@livingtone.tokyo
Numero CLOSET
Photos:Ayako Masunaga(Miho Enomoto) Interview & Text:Mami Osugi Edit:Sayaka Ito