Art / Feature
小さき視点のアートたち【5】今村遼佑
見慣れた眺めのはずなのに、目を凝らしてみた途端、自分を取り巻く景色が一変する。身近なものの形や影、思わぬ隙間や裏側まで。いつもの世界の見え方が鮮やかに変わる。それこそアートの得意技! 小さな視点から広がる奥行きを、じっくり覗いて感じてみよう。Vol.5は今村遼佑。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年7・8月合併号掲載)
Ryosuke Imamura|今村遼佑
『辞書と街灯』
2015年 © RYOSUKE IMAMURA
日常の何げない感覚と記憶をもとに、音や光などを使い、人と環境の関係性を探る今村遼佑。「普段、意識のいかない場所や時間の比喩として夜を扱うようになった」といい、本作ではその象徴として“街灯”を用いている。小さな街灯が、膨大な言葉の詰まった辞書の上に立ち、一箇所だけ明かりを灯す。照らし出された先には「現在」の文字。小さなたたずまいには特別な物語性や親密感、詩的な奥行きがある。そんなささやかな視点から物事の存在感や時間の感覚について、想像をめぐらせてみたい。
Text : Akane Naniwa Edit : Keita Fukasawa
Profile
今村遼佑Ryosuke Imamura
1982年、京都府生まれ。日常の記憶やふとした気づきをもとに、現実の確かさと不確かさを探求するような作品を手がける。表現方法はインスタレーション、映像、絵画、テキストなど主題に合わせて多岐にわたる。2016年よりポーラ美術振興財団在外研修員として1年間ポーランドに滞在。参加した主な展覧会に「ヨコハマトリエンナーレ 2011」、原美術館「『アート・スコープ 2012-2014』―旅の後もしくは痕」(2014年)、アートラボあいち「雪は積もるか、消えるか」(2018年)などがある。