【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.27 大谷翔平選手のトレード | Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.27 大谷翔平選手のトレード

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

vol.27 大谷翔平選手トレードの行方

Photo:Aflo
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日本ではちょうど今週開催されていましたが、MLBでは一足はやくオールスターも終わり、シーズンは後半戦に突入、大谷翔平の活躍が連日報道されています。あわせて、トレードの噂も日々取りざたされています。

大谷翔平もトレード有力候補、MLB公式サイト「移籍するかもしれない球宴選手」をピックアップ https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202207210000117.html

日本のプロ野球の感覚でいうと、プロ野球のチームの核となる選手がシーズン中にトレードに出されることは非常に稀有で、実績のある一流選手のトレードに関してはシーズン終了後に数年に一度あるかないか、むしろ活躍の機会が限られていたりお役御免となった選手が主な対象となっている印象があります。

その日米の差には、球団と選手の契約の形態が大きく影響しており、まずアメリカのフリーエージェントには宣言という概念がなく、権利を手にすることと行使するということが同義になっています。権利を満たした選手は宣言なしに自動的に全球団と交渉し、最もいい条件を掲示した球団に移籍する、というのが通常のプロセスになっているのです。

そのMLBとNPBの契約形態の差が主たる要因となり、MLBにおいては後半戦に突入するタイミングあたりでは数字を残す選手の価値が、これから優勝を狙うチームとすでにシーズンをあきらめつつある球団の間では大きく異なってくるのです。 まさに今のこのタイミングで優勝争いをするチームが有望な若手を複数放出し、エンゼルスのように低迷する立て直しモードの球団に所属する契約期間終了間際、またはFA取得間際の一流選手を獲得するということはMLBでは日常茶飯事で、トレードの期限である8月2日までに何かしらの動きがあるものと思われます。

ちなみに大谷翔平がFAの権利を手にするのはこのまま順調にいけば来シーズンオフで、エンゼルスはあと1.5シーズン分の保有権があります。年あたり5000万ドル(約68億円)以上と言われる次回契約時の年俸はMLB史上最高となることは間違いなく、いったいいくらになるのか誰も想像できないレベルの活躍を見せている現状で、すでにトラウト、レンドンと高額年俸選手を抱えるエンゼルスにとって契約延長のハードルが高いという状況もトレード話を後押しする要素になっています。

今シーズン終了後にエンゼルスとの契約延長がなされなければ、大谷は来シーズンオフには自動的に全球団と自由に交渉できるようになるので、そこで何も残さず出ていかれてしまうよりは、今大谷を放出して、有望な若手選手を獲得するというオプションがそれなりに有用なものになることで、ここまで毎日のようにトレード話が取りざたされているのです。

とはいえエンゼルスにとっては、大谷翔平は(特に日本企業からの)スポンサー獲得、観客動員やグッズ販売の面からみても金の卵であることもまた事実で安易に放出するわけにもいかないという事情もあります。

日々の活躍も愉しみにしつつ、トレード期限まであと1週間を切りました。最終的にどのようなシナリオになるのか、ハラハラしながらスポーツニュースをみる毎日を過ごしています。

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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