あなたの推しアート、見せてください! vol.5 ライター・現代美術コレクター 飯島モトハ
アートを所有するってどういうこと?アートを愛するクリエイターたちが見せてくれた“推しアート”から、目で楽しむだけではない、いろんな想いが見えてきた。Vol.5はライターで現代美術コレクターの飯島モトハの推しアートをご紹介。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)
人類の宝を一時的に預かっているという気持ち
「初めてアート作品を購入したのは、なぜこんなにいい作品が売れないんだろうという怒りにも似た気持ちからでした。サディ・スターンというアーティストのペインティングで当時8万円ほどでした」と語るのは、ライターで現代美術コレクターの飯島モトハ。購入することで作品が評価されるのであればそうしたいと作品を所有するようになった。コレクターとしての自意識が芽生えたのは、この1年後、知名度が上がる少し前の梅沢和木の作品を購入したことがきっかけだった。「購入した後すぐ、立て続けにオファーがあって複数の展覧会へ貸し出しをしたんです。そのためなかなか私の手元にはやってこなかった(笑)。でもそれで、所有する作品も実際には“私のものではない”、人類の宝を一時的に預かっているんだという使命感を自覚したんですね」。
そこには確かな審美眼があり、梅沢の初期作品のほかにも、例えば今売れっ子の井田幸昌の学生時代の作品も所有している。しかしそこに見いだしているのは将来性ではない。現在の価値は後から付いてきたものだ。「私が現代アートを買う理由は“当事者意識”を作家と共有できるからなんです。つまり、いま生きている時代、社会における作家の問題意識、目線を一部共有できる。例えばこの作品は3.11の直後に作られたものですが、悲劇を悲劇のまま記録すると、どうしても直視できずに避けたい忘れたいという気持ちになってしまう。でも祝祭的なイメージにすることで、忘れず繰り返し振り返ることができるようにしています。それは美術ならではの戦い方。私はそこに深く賛同して。購入することでその気持ちを表したんですよね」
Photos:Ayako Masanaga Interview & Text:Sayaka Ito, Saki Shibata