あなたの推しアート、見せてください! vol.1 「CFCL」代表兼 クリエイティブディレクター 高橋悠介
アートを所有するってどういうこと?アートを愛するクリエイターたちが見せてくれた“推しアート”から、目で楽しむだけではない、いろんな想いが見えてきた。Vol.1は「CFCL」代表兼 クリエイティブディレクター高橋悠介の推しアートをご紹介。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)
人生を豊かにする新しい視点を得るために
モードで現代的なニットウェア「CFCL」を手がける高橋悠介。自身の探究心からファッションだけでなく、建築、音楽、ダンスなどクラシックからコンテンポラリーまで、さまざまカルチャーをそれぞれが生まれた背景まで学び、吸収し、審美眼を磨いてきた。彼にとってアートもまた、欠かせないジャンルの一つだ。「現代アートに目覚めたのは大学1年生のとき。ロバート・ライマンというミニマルアーティストの正方形のキャンバスに白い絵の具をのせた作品を深く理解できた瞬間があって、そこで“開いた”という感じですね。なぜ彼がそのような作品を制作したのか背景を知ることで、今まで持っていなかった新しい視点を得られ、とても美しい作品だと感じました。見る側の視点が変われば主体が変わる。それって美意識が拡張されることだなと」
オフィスの入り口に飾られているCFCLのテーマであるニットウェア「Knit-ware(ware=器)」から磯谷がインスピレーションを受けて制作した作品。CFCLのニット地を花瓶に見立てている。長野県にある小海町高原美術館にて磯谷博史展「動詞を見つける」開催中。6月19日(日)まで。
「磯谷博史さんの作品にも同じことが言えるんです。『Lag』は棚も含めて作品なのですが、額の写真には、額が棚から落ちる瞬間が捉えられていて、時間のズレを感じさせます。そういった目に入ってくる情報を分解して考える、一つの視点を嚙み砕いて読み解くコンテクストの面白さがあって、いわば思考の体操を促してくれる。しかも上品で緊張感があるというのが僕の好みなんです。さらにいうと、社会を俯瞰して捉え、そして社会に対してメッセージ性を持つということも僕にとっては大切。まさにそれは僕がファッションでやりたいことと重なります。その賛同を示すためにも磯谷さんの作品を所有しているといっていいですね」
Photos:Ayako Masanaga Interview & Text:Sayaka Ito, Saki Shibata