未来のためにアートに何ができるのか?「世界の終わりと環境世界」展 @GYRE GALLERY | Numero TOKYO
Art / Feature

未来のためにアートに何ができるのか?「世界の終わりと環境世界」展 @GYRE GALLERY

生き物との関係性をテーマに制作を行うAKI INOMATAの作品『ギャラップする南部馬』(2019年)© AKI INOMATA courtesy of Maho Kubota Gallery
生き物との関係性をテーマに制作を行うAKI INOMATAの作品『ギャラップする南部馬』(2019年)© AKI INOMATA courtesy of Maho Kubota Gallery

人間たちの世界が今、終わりの時を迎えている──。この美しい地球を子どもたちへと受け継ぐために、人間中心の意識を終わらせ、生態系全体に広げよう。「環境世界」×アートの視点から、未来を問う展覧会。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)

東日本大震災以降、“生き延びること”を根幹に制作を行う画家。加茂昴『ゾーン#5』(2013年)
東日本大震災以降、“生き延びること”を根幹に制作を行う画家。加茂昴『ゾーン#5』(2013年)

私たちは今「人新世(じんしんせい)」を生きている。気候変動や環境破壊、大量絶滅など、人類の爪痕(つめあと)が地球規模で刻まれる時代。森を燃やし、海や空を汚して利益や覇権を奪い合う。このままでは世界は終わる。いや、終わらせなければならない。個人、企業、国家──“身内の幸せ”を追求する仕組みから脱却し、新たな共生の意識を築かねばならない。でも、一体どうやって?

自身の生と一体化した表現で知られる草間彌生の映像作品。『花強迫(ひまわり)』(2000年)Copyright of YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
自身の生と一体化した表現で知られる草間彌生の映像作品。『花強迫(ひまわり)』(2000年)Copyright of YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts

そのヒントになる言葉が、生物学者ヤーコブ・フォン・ユクスキュルのいう「環境世界(環世界)」だ。私とあなたは違う思考や感性を持っている。さらに人間と他の生物では、視覚も聴覚も時空の認識さえ違ってくる。つまり、世界の在り方がそれぞれ違う。それを理解しなければ、地球レベルの共生はあり得ない。

地球上で絡まり合う生と死の諸相を描くアーティスト。大小島真木『ウェヌス Venus』(2020年)Photo: Shin Ashikaga
地球上で絡まり合う生と死の諸相を描くアーティスト。大小島真木『ウェヌス Venus』(2020年)Photo: Shin Ashikaga

本展はこの「環境世界」をキーワードに、草間彌生、荒川修作、アニッシュ・カプーア、大小島真木ら7名の作品を通して、多様な生命の織りなす時空間へ認識をアップデートしていく方法を問う試み。多くの犠牲を伴う人間中心主義の価値観から、あらゆる存在が互いに関係し合う“種を超えた共生(マルチスピーシーズ)”という意識の地平へ。“世界の終わり”へ向けて今、アートに何ができるのか。一つの展望がここにある。

藻類の習性を利用して描き出されたリア・ジローの作品。『EntropieⅡ』(2015年)© Lia Giraud, EntropieⅡ, 2015
藻類の習性を利用して描き出されたリア・ジローの作品。『EntropieⅡ』(2015年)© Lia Giraud, EntropieⅡ, 2015

「世界の終わりと環境世界」展
会期/2022年5月13日(金)〜7月3日(日)
会場/GYRE GALLERY
住所/東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
TEL/0570-05-6990
https://gyre-omotesando.com/art/
※最新情報は上記サイトを参照のこと

Edit & Text : Keita Fukasawa

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