ジオラマのような都市の写真が映し出すもの「本城直季 (un)real utopia」
加工された虚像がSNSにあふれ、バズとなってあふれる時代。でもこれは現実だ。本城直季が見つめる世界の姿なのだ──。作家初の大規模個展。約200点の眺めから、何が現れてくるのだろう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)
この世界は、さまざまな現実でできている。その象徴が都市だ。住む人、通う人、訪れる人……無数の視点や記憶が折り重なり、街の命が鼓動する。現実と虚構が一体となって、無限の奥行きが現れる。もしかしたらそれが、本城直季の作品から立ち上がる不思議な感覚の正体かもしれない。大判のフィルムカメラを携えて、空撮や高所からの撮影に臨む。カメラの蛇腹部分を傾けて、ごく狭い範囲にピントを定める。アオリ(ティルト)と呼ばれる撮影技法だ。
一方、人間の目は近くを見ると、中心だけがはっきりと映る。そのため、視界の中心に焦点の合った俯瞰の眺望がミニチュアのように感じられるという。でも、それだけのことだろうか。例えば、木村伊兵衛写真賞を受賞した代表作シリーズ「small planet」。アフリカのサバンナを写した初公開シリーズ「kenya」や、東日本大震災発生から3カ月後の東北に目を向けた「tohoku 311」シリーズ。あるいは、独自の作風を模索していた活動初期の試みまで。そこにあるのは、街や世界に作り物のような違和感を覚えてきたという本城自身のまなざしと、私たち自身の現実感だ。この奥行きはどこから来るのか。初となる大規模個展で、確かめてみよう。
「本城直季 (un)real utopia」
会期/2022年3月19日(土)〜5月15日(日)
会場/東京都写真美術館 地下1階展示室
住所/東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL/03-3280-0099
https://honjonaoki.exhibit.jp/
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Edit & Text : Keita Fukasawa