【連載】これからの服作りを探る、デザイナー訪問記 vol.10 CFCL
ミニマルで上質な服づくりやオリジナルな視点を貫く、日本発のインディペンデントなブランドにフォーカスする連載「これからの服作りを探る、デザイナー訪問記」。デザイナー自ら、作り手の視点でコレクションを解説し服へ込めた熱い思いを語る。見た目ではわからない(知ったら着たくなる)服の真髄を徹底深掘り。
第10回は「CFCL(シーエフシーエル)」のデザイナー高橋悠介にインタビュー。
VOL.1 オケージョンにもフィットする着る器
編み組織の組み合わせが生む多様なデザイン
リブ組織からなるポッタリーシリーズは、リブとリブを90度回転させたガーターで構成しています。リブは横に縮まり縦に突っ張る性質があるので、ガーターとリブ、天竺編みと裏天竺編みを交互に配列。リブとガーターを組み合わせることによって縮まるものと突っ張るものが、切り替え地点でぶつかり、そこになおかつ急激にダーツを取ることで、より立体的なシルエットを作り出しています。
(写真左)POTTERY KAFTAN ¥59,400
カフタンドレスは肩から下まで全部ガーターにして、横張りにして体型を隠すような構造にしています。腕はリブで細く、袖口にかけてガーターに。つまりカフタンドレスの袖とポッタリードレスの構造は同じ。ダーツを取る場所を変えていますが、さらに途中でスパッと切ればスカートになり、逆さにしたらトップスになる、という考え方でデザインしていく。リブとガーターの切り替えがデザインの最大のポイントなので、短くしたり長くしたりとピッチを変えながら、基本構造はこのリピートとなります。
VOL.2
ニットの持つイメージを裏切るソリッドなテクスチャー
様々な時代の建築それ自体の外観や文化的な側面をインスピレーションとしたVOL.2コレクション。ニットが持つ、柔らかく暖かな素材でほっこりというイメージと対局にある、コンストラクション、硬い、堅牢といった言葉をぶつけることによって、ニットの概念や可能性の拡張を試みました。また、全コレクション共通のテーマを「Knit-ware(ware=器)」としており、人々の営み、時間、生活を容れる器としての建築の機能を参照しています。トレンド性とどれだけ距離が取れるか、器の起源に遡って考えると、人類の歴史とともに生活の中に存在し、機能や用途を考えながら、進化し続けてきたもの。建築もまた、より快適さを追求し、あるいは権力の象徴として共に発展してきた歴史があります。服も本来であれば文化や人々の生活とともに発展してきたはずです。
具体的には、ミース・ファン・デルローエなどのシカゴの高層ビルや集合住宅のような画一化されたモダニズム建築を連想させるテクスチャーを参照したファサードシリーズ。水溶性の糸を部分的に使用し、縫製後に洗いをかけることでカールがかかったような独特なテクスチャーが生まれます。3Dコンピューター・ニッティングの可能性を追求した存在感のあるデザインです。
また、ギリシャ建築のイオニア式の柱を思わせるフォルムから名付けたCOLUMN(柱)。同じく、ギリシャ建築の柱を連想するテクスチャーから名付けたFLUTED(柱の縦溝)。幅やストレッチ性の違う2種類のリブを使い分けて波型デザインを表現しました。
(写真左)FLUTED JACKET ¥46,200、FLUTED SKIRT ¥35,200
一般的なリブスカートは、主役というより、どちらかといえばコーディネートアイテムですが、FLUTEDのリブスカートは存在感があるので、トップスはシンプルでも様になります。かなりの伸縮性があるうえにウエストもゴム仕様のため着る人の体型を選びません。無縫製のため縫い目が肌に当たるストレスもなく、着心地と独創性が両立されたデザインです。また、着た時にガーターが上まであるとヒップラインを拾いすぎるので、わざと段差をつけることで体型のカバーも考慮しました。個性的な形状はオーセンティックなカーディガンに取り入れることで機能性とともに日常での着やすさを考えています。
VOL.3
ニットで春夏らしい透け感に挑戦
建物の窓やフェンスから見える向こう側の景色、窓から光が射してくる様子などをイメージしました。ニュートラルなファーストコレクションのVOL.1、建築的な硬いイメージのVOL.2に続く、VOL.3は、春夏という季節感を感じられるよう試みました。「春夏なのにニット?」という印象を払拭するために、和紙素材や透け感のあるテクスチャーを用い、ニットの可能性を拡張したコレクションです。
独特の凹凸のある編み目が建物から突き出た窓のようなので、19世紀以前のヨーロッパの建築に見られる出窓の一種、オリエルと名付けました。裏は再生ポリエステル100%のマルチボーダーで、表はポリエステルに和紙を巻いた糸を使った二重構造。紙という素材は軽やかなイメージを持ち、シャリ感のある肌触りもニットに適している。和紙がミックスされたニットはあまり見たことないので、あえてチャレンジしました。
ガーデニングの際に使う格子状の柵から着想を得たラティス。窓やフェンスといった、外部と内部の境界線、内側と外側から見た景色を表現しています。ライフスタイルの中にテーマ性を持たせた服作りがしたいという思いもあり、常に「Knit-ware(ware=器)」をテーマにし、そこに思い切り春夏を感じられる透け感と色彩を重ね合わせています。
高橋悠介インタビュー
「ニット・モードを掛け合わせて唯一無二のブランドに」
──自身のブランド「CFCL」を立ち上げるにあたって、あえてニットで勝負することにしたのなぜですか?
「これだけアパレルブランドがある中で、歴史も裏付けもない一デザイナーがゼロからやり始めるのは、なかなか難しいことです。レッドオーシャンに飛び込んだところで絶対にうまくいかない。なので、社会は求めているけれど、まだ他が気づいていないニッチなマーケットで勝負し、一言二言で語れるようなわかりやすい服を作る必要があると思いました。僕は学生の頃から3Dコンピューター・ニッティングを学んでいたので、コンピュータープログラミングのノウハウがあり、製作の過程で、職人やプログラマーと同じ言語で会話することができます。
その強みを生かし、ニットとモードをかけ合わせた今までにないブランドを始めることにしました。これまでのキャリアではテキスタイルについて知見を深めていたので、ついニットのトップスに布帛の薄地のスカートを合わせたくなりますが、ブランドとしての立ち位置を明確にするため、CFCLでは全てのアイテムをニットとしています」
──ニットに特化したコレクションを発表することのメリットは? やれることが制限されてしまう気もしますが。
「ホールガーメントで生産する最大の特長は、無縫製のため、縫い代が肌に当たらず着心地が非常にいい。もう一つは、製造工程で糸の余剰がほとんど出ず無駄がない。それからプログラミングと編機があれば原理的にはどこででも作れ、品質も安定している上に、縫製の必要がない。同じ糸でも編み組織で個性的な製品を作ることができるので、プリントや刺繍などの後加工を施さなくても良く、製品の工場間の移動をさせずに済む。結果、輸送コストと温室効果ガスの排出量が少ないというメリットがあります」
──通常ですと、生地屋、染色、縫製など服が出来上がるまでの過程に各工場間を移動しますよね。
「さらに環境的な視点で言うと、ポッタリードレスは、ペットボトル由来の再生ポリエステル糸を100%使用しています。なおかつGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)認証を取得した素材で、自宅の洗濯機で洗うことができる。速乾性があってシワにもなりにくい。そして首回りの控えめな肌の見え方や、ホールガーメントによる3Dフレアのシルエットを作り出すことで、女性らしさを付け加えています。これまでの僕のキャリアの中で培った文脈を押さえながら、時代にフィットしている、社会に求められているもの、でもまだ存在していないものに取り組んでいます」
──先ほどのポッタリードレスは、再生ポリエステル100%とのことですが、現在使用している糸は全て再生原料ですか?
「現状、ウール100%のアイテム以外の全品番に再生素材は使っています。100%のものもあれば12%のものもある。再生素材を使うことが目的のブランドではなく、都会のオケージョンにもフィットするシャープさとエレガントさ、そしてイージーケアといった要素を持ち合わせていなければCFCLのタグは付けられません。そのためのボリュームやシルエット、硬さ、テクスチャーを成立させるには、現状の再生素材のバリエーションの少なさでは難しい。例えば、再生ウールはゴワゴワした粗野な質感だったりします。ただ、CFCLのビジネスが成長することで、再生素材の需要も高まります。CFCLの求める質感やテイストを実現できる素材が出てくれば、随時置き換えていくつもりですし、徐々に糸屋さんと共同で再生素材の開発にも取り組んでいます。2025年までには、すべてのアイテムの再生素材使用率100%にすることを一つの目標として掲げています」
──ニットという枠の中で、いわゆるテクニック、プログラミングでやれるデザインはたくさんあるものですか?
「こんな言い方をするとおこがましいですけど、僕だからできるニットアイテムだと思います。ほとんどのブランド、デザイナーには、ニット担当がいて、一部のニットブランドを除いてはニット担当がメインコレクションのデザイナーになることはほとんどありません。学校でもデザイナーを志す場合、パターン、デザイン、素材については勉強しますが、ニットの技術に至ってはほぼ学ばないことのほうが多い。だからコレクションの中でニットアイテムを作るときは、ニットデザイナーが工場とやりとりしながら作っていくため、割とオーセンティックな形に落ち着きやすい。他にテキスタイル、刺繍、プリントなど山ほど技術があるので、ニットの可能性の追求までは手が回らないのだと思います。CFCLはニットだけに集中したことによって、既視感のない独創的なフォルムやテクスチャーを追求できているんです」
──他のデザイナーたちが、さまざまなテクニックに時間を費やしている間に、編み方、糸とのバランスなど徹底的に掘り下げられるということですね。
「だからやれることはいっぱいある。ホールガーメントで製作する場合は、糸を仕入れ、機械にセットしてボタンを押すと出来上がる。コンピュータープログラミングニットだと、リブとガーターなど編み方の組み合わせが自由自在です。さらに配色まで要素に入れると、デザインの可能性は無限大に近い。ベーシックな形の中でデザイン性を加えることができるので、オリジナリティが出せる上に、定番にもなりやすく、カラー展開をしやすい。プロダクトデザインに近いアプローチです」
シーズン毎のコレクション発表に対する考え方
──コレクションをシーズンで区切らずに、VOL.1、2、3と銘打っていますが、シーズンごとにコレクションを発表すること、その必要性についてはどう考えていますか?
「半年に1回定期的にやってくる発表に対してテーマをどう答えるかを先に考えるようになると、テーマを作ること自体が目的になり、本末転倒になる気がしていたんです。そういった服作りから少し距離を取りたいと考えました。ブランド名でもある、CFCLとは、Clothing for Contemporary Life(クロージング・フォー・コンテンポラリー・ライフ)の略で、『現代生活のための衣服』という考え方からスタートします。そういう意味で、コロナ禍の前と今では、現代生活の考え方ががらりと変わりました。常にこのくらいのスピード感で時代は変化しているのに、これまでのファッションは社会の変化にあまり向き合えていなかったのではないでしょうか。つまり、半年に1回ぐらいは、コレクションをアップデートしていく、新しいものを開発していく作業は依然として必要だと思います。ただシーズンによってまったく違う内容であったり、デザイナーの美意識に依存したコレクションではなく、あくまで社会に向き合ったクリエーションが大切であるとCFCLでは捉えています」
──逆に言うとライフサイクルにおいて、半年に何か新しいものを提示すること自体は必要だと。
「例えば、先進国を始め日本でも2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ達成という目標がありますが、つまりあと28年、逆算すると意外に時間はありません。ビジネスとしてやっていくには、ある程度スピード感を持って、開発にもSDGsにもライフスタイルにも向き合っていかないと置いていかれるし、他の企業にそのマーケットを奪われるだけです。日本の国としても世界に遅れをとってしまいます。社会における企業のあり方という考え方をするなら、どれくらい売り上げたいかという話よりも、どれくらいの規模感で未来を示せるかということが正解だと感じています」
──その考え方を踏まえると、シーズンでガラッと入れ替わる商品ラインナップではなく、継続の定番品もあり、 実際の商品展開としてはどう示しているのでしょう?
「まだ自分たちでマーケットの主導権を握れていないのと、若いブランドだから、何が売れるかということも手探りなので現在はリピート商品の比率は低めですが、最終的には定番をなるべく多く展開したい。安定して収益を得るためには定番品でリピーターやファンを増やすこと、新しいことを提示しながら、常に動き続けているブランドとして発信していくことのバランスがビジネスとしてとても重要だと考えています。ファンタジーとリアルの両立が求められているのではないかと思います」
──では高橋さんにとってのファッションにおけるファンタジーとは?
「お客様にワクワク感、高揚感を与えること。それは新しいもの、見たことのない組み合わせだったり、それらを生み出す姿勢がファンタジーだと思っています。スタイルも、色、形、素材も、全方向で新しいものを生み出せるように取り組んでいます。それこそコレクションブランドの得意とすることだし醍醐味でもあります。一方では、ある程度の規模感を持ってビジネスを拡大していき、企業としての責任を果たす必要もあります」
サステナブルとモードの両立を実現する
──モードならではのファンタジーをサステナブルの範疇で実践することに難しさは感じないですか?
「サステナブルな製品を作ること自体が目的になると、納得のいくクリエーションは続けられません。CFCLはサステナブルを自ら謳っておらず、SDGsへの取り組みはあくまで「現代生活のための衣服」に必要な一要素として捉えています。
アパレル業界が古いものより新しいもののほうが価値があるということを浸透させ、購入意欲を掻き立てるような仕組みを作ってきたから、なかなかサステナブルとモードは結びつかないところはありましたが、今はラグジュアリー自体の価値観も変わってきていてるように感じます」
──確かに、今はそれが当たり前で、スタンダードになってきているように思います。
「古いものより新しいものに価値があるという概念が集約された、最たるものがセールだと思います。古いものは値段が下がる=(イコール)価値が下がる、新しいものがプロパーのプライスになる。そのサイクルをどうやって壊すかとなると、来シーズンも何年経っても、欲しいと思われるものを意識してデザインしていかないといけない気がします」
──フリマやオークションアプリで高値が付く服ということは、確かにそういうことですよね。
「だからブランドらしくないものを作ったら売れ残ってしまう。例えば、メルセデスのゲレンデが長く売れているのは、やっぱりみんな欲しいし、中古下取りするときにもある程度値段が保たれるわけです。問題視されている過剰な余剰在庫などを考えると、ファッション業界は余計なもの、不要なものをたくさん作ってきたように思います。今必要なのは、お客様が求めているそのブランドのイメージを大切にしながら、その中でアップデートしていくという作業。もちろんそれだけではビジネスがシュリンクしてしまうので、新規顧客も獲得していく両輪のバランスなんですけど、その比率がアパレルは悪すぎる気がします」
──確かに、ファンがそれぞれのブランドに求める要素は必ずありますから。
「となったときに、やはりどのような価値を提供できるブランドなのかコンセプトを明確にすることは必要ですよね。ただアパレル以外のことを同じ目線で取り組んでみてもいいかなとは思います。例えば、香りや音楽といった要素はCFCLで取り組んでいます。リテールの店があれば、実際に店で体験できるし、試着も可能ですが、オンラインで買うとその体験の場は自宅になる。それこそEC化が進む世の中において、オンライン購入にも体験の場を提供することが重要だと思います。買った商品に香りが付いていたり、カードに音楽をダウンロードできるQRコードがついているなど、その時に日常と切り離してくれるものとして環境的な要素が作用すると思っています」
──洋服を買って着るまでの一連の行為に対する付加価値を付ける要素まで拡大していくということ?
「CFCLを選んで着てくれるお客様は、社会に対して意識がちゃんと向いている方が多いです。そうすると、ファッションだけでなく、インテリア、食品、外食産業でも、CFCLの世界観や美意識を社会に対して提案できるものがあれば、それは衣服だけで表現しなくてもいい気がします。テスラの企業としての価値が世界的に上がったのは、EV化に世の中の関心が集まる中、電気自動車に特化しているからで、他の大手自動車メーカーが電気自動車をいくら出しても、ディーゼル自動車もやってるよねとなる」
──ブランドの中に矛盾が生じてしまいますね。
「テスラの強みは、電気自動車が持ってるノウハウを生かして、蓄電や充電のビジネスを展開していることだと個人的に思います。さらには住宅のソーラーパネル事業も拡大している。そういう意味では、CFCLがいきなり野菜を発売するのは難しいですが、ヴィジョンが明快で、合理性が伴う分野であれば構わないし、まだそういう視点で取り組んでいるブランドはあまりないので、そこにチャンスがあると思っています。
ただ、世の中にエシカル系のブランドはいっぱいありますが、何が正解かを見極めるのは難しい。レザーやファーを使用しないと言っても、多くのボアやフリースは大量のマイクロプラスチックを出すから海洋汚染問題においては悪になる。ビーガンという概念も動物愛護の観点で見ればエシカルですが、例えば肉に代替する大豆を栽培するためにアマゾンの木を伐採して畑にしたり、バイオマス発電も再生可能エネルギーに需要が集中しすぎて、間伐材だけでは足りず、結局海外から管理されていない木材を輸入していたり、さまざまな問題が生じてきます。様々な問題に対して正解が一つではないように思います。CFCLは社会に対する自社の取り組みや環境へ与える負荷を数値を持って公表しています」
CFCLが社会と未来に示す存在証明
──CFCLとしては、サステナブルという観点では具体的にはどんな取り組みを行っていますか?
「CFCLとしては、2030年までの再生繊維100%の使用、2025年までの全品番における温室効果ガス排出量の数値化を目標とします。取引先や工場も一緒に取り組んでいく必要があるので、SDGsに対してどれだけ実践しているかサプライヤーの皆様にアンケートを行い、LCA(ライフサイクルアセスメント【注】)の実施によるアイテム一着の温室効果ガス排出量を公表したりと、社内にCSO(Chief Sustainability & Strategy Officer)を配置し取り組んでいます。そこまで見える化しているアパレルブランドが少なかったり、グリーンウォッシュと叩かれる企業も多い中で、社会問題に関心がある人は何を着ればいいのかわからない。そういった人たちの受け皿にCFCLがなるべく取り組んでいます。これは社会的に求められている義務でもあります。
また、SDGsなどの勉強会を社内で月に一度行っています。環境問題以外にも解決しなければならない問題は山ほどありますが、それに対してどう向き合うべきかをみんなで議論しています。社内で対話すること自体も価値ある行為なので、こういう活動も今後公表してもいいのかなと思っています。そういった姿勢においてもCFCLのブランドの存在意義を明確にしていくつもりです」
【注釈】
LCA(ライフサイクルアセストメント)
商品の環境に与える影響を、原料の調達、加工・販売・消費を経て廃棄にいたるまでの各過程ごとに評価する方法のこと。
──ところでブランドを立ち上げる以前から、環境や社会への問題意識は強く持っていたのでしょうか?
「母が社会派のライターだったこともあり、その影響は大きいかもしれません。自身の癌治療の体験を踏まえて、日本の癌患者の実情や北欧のホスピス事情などを取材したり、水俣病、諫早湾干拓、川辺川ダム建設など、公共事業における環境破壊の問題を取り上げたりしていました。下北沢の小田急線線路の地下化に伴う再開発でも民間の反対派と企業や自治体との調整役のようなスタンスで活動をしたことも覚えています」
──お母様の背中を見て育ったんですね。社会に対する自分の役割というか存在証明のような。
「母が亡くなり、自分も結婚して子どもが生まれるタイミングで、次の世代に対して、大人として責任ある行動を取れているのかと自問自答したときに、例え小さくても実践していくことが大事だと思うようになりました。そして、グレタさんの活動にも心を動かされました。本当に名もない何の権力もない女の子があそこまで大きく社会を動かすというのも、今の時代ならではです。そう考えると、一社員として社会を変えようと雇われている会社の中でアクションを起こすよりも、初めは小さい力であったとしても全て一から企業を作り上げることで独自性のある取り組みを行うことができ、結果、社会に対して影響力を持つことができるのではないかと。
僕にとってファッションはあくまでもメディアであり、社会に対して提案するアプローチのツールの一つなので、その先にあるビジョンやアティテュードがしっかりあれば、必ずしも服でなくてもいいかもしれません。でもまずは、アパレルで10年やって培ってきたノウハウや見てきたものと、100%向き合って服を作っていくこと。CFCLというフィロソフィを通じて行動していきたいと思います」
CFCL(シーエフシーエル)
www.cfcl.jp/
Photos:Anna Miyoshi(Item, Portrait) Interview & Text:Masumi Sasaki Edit:Chiho Inoue