スケートボードとアートの関係 Vol.4 名作アートのスケボーデッキ
スケボーとは単なる遊びにあらず。お仕着せのルールにNOを突きつけ、自分を表現する生き方でありアクションなのだ!その姿勢が現代アートと出合うとき、どんな眺めが広がるのか。作品表現とデッキ(板)、二つの側面から見てみよう。Vol.4は名作アートのスケボーデッキにフォーカス。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年12月号掲載)
名作アートのスケボーデッキ
あの作品が“滑れるアート”に!? 現代アート史×デッキの傑作選
Andy Warhol『32 Campbell’s Soup Cans』 32枚セット(缶入り)$10,000/The Skateroom©/®/TM The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. Richard Open/Camera Press/AFLO
Andy Warhol
アンディ・ウォーホル × The Skateroom
アメリカの大衆文化や現代社会をアイロニカルに描き、ポップアートの旗手となったアンディ・ウォーホル(1928-87)。自身のスタジオ(通称:ファクトリー)でシルクスクリーンを使い、作品を量産。大量生産・大量消費という社会の側面を表現したことでも知られている。彼の代表作の一つ『キャンベルのスープ缶』をモチーフとしたスケートボードは、なんと32枚で1セット! 一挙に並んだその姿は、インスタレーションさながら圧巻の風貌だ。
Yayoi Kusama
草間彌生 × MoMA Design Store
無限に反復する水玉。それが一枚の絵であろうと、かぼちゃの彫刻であろうと、一目で草間彌生(1929-)の作品だと気づく人は多いだろう。スケートボードになってもまた然り。草間の代名詞でもある“ドッツ・オブセッション”を施した本作は、既存の作品のプリントかと思いきや、デッキ用に彼女自身が手描きしたものの複製版だという。“水玉の女王”の異名を持ち、長きにわたり最前線を走り続ける、アーティストのプライドさえ感じさせる一作だ。
Paul McCarthy
ポール・マッカーシー × The Skateroom
ポール・マッカーシー(1945-)はアメリカの消費文化のイメージを使いながら、性や暴力などタブーに挑んだ過激な身体表現で知られている。10種類のヴィジュアルからなるスケートボードは、彼が「後世に残すため」スーツケースに保存していた数々のガラクタによる『PROPO』シリーズにインスパイアされたもの。売り上げは南アフリカの貧困層の子どもたちが通うスケートスクールに寄付されており、未来へと続くアクションになっている。
The Skateroom and The Keith Haring Foundation『Untitled』3枚セット¥85,800/MoMA Design Store
© Keith Haring Foundation. www.haring.com. Licensed by Artestar, New York.
Keith Haring
キース・ヘリング × The Skateroom
日本でも抜群の知名度を誇るキース・ ヘリング(1958-90)は、80年代よりニューヨークの地下鉄やストリートで絵を描き始めたグラフィティの草分け的存在だ。そんな出自を持つヘリングの絵と、ストリートカルチャーの象徴であるスケートボードは、間違いのない組み合わせといえるだろう。彼が得意とする生き生きとした人物のフォルムに、抽象的な記号やパターンを組み合わせて、構図いっぱいにヘリングの世界が描き出されている。
Raymond Pettibon and The Skateroom『No Title (You Have a clear…)』¥47,300/MoMA Design Store
© Raymond Pettibon Courtesy the artist and David Zwirner
Raymond Pettibon
レイモンド・ペティボン × The Skateroom
パンクバンドBlack FlagのロゴやSonic Youthの名盤『Goo』のジャケットイラストでお馴染みのアメリカのアーティスト、レイモンド・ペティボン(1957-)。音楽、アートシーン、文学と、数々のカルチャーに大きな影響を与えてきた。300点を超えるMoMAコレクションの中から、スケートボードにあしらわれた『No Title(You have a clear…)』は「あなたには清らかな魂と鉄の意志がある」というペティボンからのメッセージ入り。
The Skateroom x Estate of Jean-Michel Basquia『tHornPlayers』3枚セット¥77,000/MoMA Design Store
© Estate of Jean-Michel Basquiat Licensed by Artestar, New York
Jean-Michel Basquiat
ジャン=ミシェル・バスキア × The Skateroom
独特なセンスの色彩、音楽的なモチーフ、政治的なメッセージをはらんだ言葉のミックス。生涯でわずか10年ほどのキャリアながら膨大な数の絵画作品を生み出し、社会に衝撃を与えたニューヨークの奇才、ジャン=ミシェル・バスキア(1960-88)。『Horn Players』は、その作風を象徴する絵画作品の一つだ。ストリートアートからコンテンポラリーアートに昇華したバスキアの作品が、時代を巡ってスケートボードとなり、新たな輝きを放つ。
Ai Weiwei
アイ・ウェイウェイ × The Skateroom
中国現代アート界の夜が明けて間もない1980年代からアーティスト活動を始め、民主的な社会活動家としても注目を浴びるアイ・ウェイウェイ(1957-)。ベルリンのライヒスターク議事堂やパリのエッフェル塔、北京の天安門などさまざまなモニュメントや施設に向かって中指を立てる写真シリーズ『Study of Perspective』より、この一枚がスケートボードに変身。ホワイトハウスに向けた指が、彼の率直な政治観を浮かび上がらせる。
Yoshitomo Nara
奈良美智 × MoMA Design Store
忘れがたい印象を残す少女たちの肖像をはじめ、絵画や彫刻作品、大型インスタレーションで見る者を魅了する奈良美智(1959-)。スケートボードになった『Welcome Girl』(右)と『Solid Fist』(左)でも、そんな奈良ワールドが全開だ。ポップなテイストながら、危うさも感じさせる表情をした少女のドローイングはもちろん、バックの赤や白の色合いもアーティスト自身によって吟味されたもの。アートファンならぜひとも部屋に飾りたい一枚だ。
問い合わせ先
The Skateroom(ベルギー)
theskateroom.com
MoMA Design Store オンラインストア
www.momastore.jp
Text : Akane Naniwa Edit : Keita Fukasawa