might×崎山蒼志 新しい才能が出会うとき
アーティストとイラストレーターが融合したアートレーターを名乗るmightと、彼女のラブコールに応える形でシンガー・ソングライター崎山蒼志とのコラボ連載がNumero.jpでスタートする。新しい才能同士が出会ったとき、そこに何が起こるのだろうか。乞うご期待!(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年12月号掲載)
崎山蒼志「mightさんの作品に、同世代の人間としてすごく刺激をもらいます」
──mightさんと崎山さんは浜松出身の同世代です。以前から面識は? might(以下m)「高校1年生の頃、崎山さんの曲を知ってファンになったのですが、たまたま共通の友人がいて。それで、ご連絡したのが最初です。でも、浜松でお会いしたことはありませんでした」 崎山蒼志(以下S)「mightさんが絵を描いているという話はその友人から聞いていて。作品をちゃんと拝見したときに、こんなにすごい人だったのかとあらためて感じました」──mightさんの作品を見て、どんな印象を持ちましたか?
S「言葉に表せないような繊細な人物の表情や、色合いやタッチの感じがすごく素敵だと思いました。ほかの知り合いのSNSからmightさんの作品がリツイートで回ってくることもあるんです。同じ浜松出身で、同世代の人間としてすごく刺激をもらいます」
m「いや、こちらこそです」
might「特に落ち込んでいるときに聴きたくなる、崎山さんにしか紡げない言葉とメロディ」
──mightさんは崎山さんの作品で特にお気に入りの曲はありますか?
m「どの曲も大好きなんですが、最近、毎日聴いているのは『そのままどこか』という曲です。崎山さんの曲は、優しさが寄り添ってくれる感覚があり、どんなときに聴いても心地いいのですが、特に落ち込んでいるときに聴きたくなります。崎山さんにしか紡げない言葉とメロディがあり、同じ年齢なのに、これまでどんな人生を歩んで、どんなことを考えてきたんだろうと不思議になります」
S「本当に恐縮です」
──崎山さんが作曲するときにインスパイアされるものは?
S「幼い頃に母親がよく絵本を読み聞かせてくれたんです。そういうイメージの世界や、今まで見てきた風景がつながるような、夢の世界のような感覚があって、それが第一のインスピレーションです。それから、自然の風景や、ほかの方々の音楽からも影響を受けながらも、自分なりの楽曲が生まれてくるので、それが僕の個性なのかなと思っています」
──ちなみに、今よく聴く曲は?
S「今年コラボレーションをさせていただいたDos Monosさん。ヒップホップも大好きなんです」
──mightさんは作品を制作するときに、音楽から影響を受けますか?
m「描くときにはいつも音楽を聴いているので、音楽に心を動かされて絵を描くことがほとんどです。その曲全体のイメージやメッセージに触発されるというか。私が描く女の子の瞳の奥に映るものは、音楽から触発された風景なのかもしれません」
S「たしかに、mightさんの絵からは、ある瞬間というより、世界観のようなものを感じます」
m「ありがとうございます」
──mightさんが、いつも女の子をモチーフとする理由は?
m「女の子の造形が好きということもあるし、そのときの気持ちを入れ込みやすいという理由もあります。
──崎山さんは、いつもどのように曲を作っているのでしょうか。
S「メロディと一緒に出てくる言葉があって、それが核になって、他の部分の歌詞を書いて、展開を作っていく感じです。ただ、あまり考えすぎるとうまくいかないんですね。ふと思いついた言葉がしっくりくることのほうが多いと思います」
──先ほど絵本の話が出ましたが、絵画に触発されて曲を作ることはありますか。
S「絵画や美術に影響されることはよくあります。自分の基盤になっている音楽や、その時々に聴いている音楽から新しい要素を取り入れることもありますが、美術に感化されて曲を作ると意外とスムーズにいくこともあったりしますね。ちょっと話は変わるんですが、mightさんが印象に残っている浜松の風景はありますか?」
m「高校の頃はバス通学だったんですが、卒業前の半年ぐらいは歩いて帰ることが多く、その通学路の風景が記憶に残っています」
S「わかるような気がします。夕暮れの中で下校する景色は僕も好きでした。朝は学校に行きたくなくて、全く好きじゃなかったですけど」
m「考えてみても、崎山さんが同じ時期に浜松にいたことが不思議です。今回、連載でご一緒してくださって、夢が叶ったような気分です」
──小誌のウェブサイトNumero.jpにて11月に連載をスタート予定です。絵と言葉コラボレーションは、お二人とも初の試みですよね。
S「そうですね、すごく楽しみです」
m「絵と音楽は全く別のもののようでいて、それに触れた人が何かを感じるという点では一緒です。これまで私の絵を見てくださった方が、崎山さんの世界に触れたり、崎山さんのファンの方が私の絵を見てくださる機会にもなりますし、みなさんが何を感じてくださるのか。それに、言葉と音楽で表現する崎山さんが、私の絵から何をくみ取って、どんな新しい世界が広がるのか楽しみです」
Illustrations:might Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito