北海道の「青」に染まる2泊3日旅 アクティブに積丹ブルー編
夏の北海道の“ブルー”を求めて、前回の支笏湖に続き、今回は積丹半島へ! 積丹半島が突き出た日本海はどこまでも澄み渡り、“積丹ブルー”と呼ばれています。今回は“青の洞窟”をSUPで体験、雄大な島武意(しまむい)海岸や神威(かむい)岬へドライブ、そして余市のグランピング施設で貴重なワインをいただきます! アドベンチャーな積丹ブルーは、札幌から2時間圏内で体験できます。
Part2:雄大な積丹ブルーに心洗われ、夜はグランピングで余市ワイン
北海道西部、日本海に突き出た積丹(しゃこたん)半島。アイヌの言葉で“夏”の“シャク”、“村”の“コタン”、つまり“夏の村”を意味します。
積丹半島には粗削りな断崖絶壁が連続する、迫力ある風景が広がっています。その雄大な自然は、「ニセコ積丹小樽海岸国定公園」として守られ、次世代へ引き継ぎたい北海道の宝物「北海道遺産」に選定されています。
積丹半島が突き出た日本海は、ここでしか見られない澄んだブルーゆえ、地名を冠して “積丹ブルー”と呼ばれています。夏こそ、その青の輝きが増す、一番美しい季節です。
積丹ブルーの満喫方法は、いろいろあります。
まずは、SUP(スタンドアップパドルボード)に乗って、青の洞窟へ! “青の洞窟”の本家はイタリアのナポリですが、実は日本国内にも沖縄や京丹後など、各地にあります。なんと積丹の近くの小樽にもあります。
今回は全日本SUP選手権優勝者でもあるケンタさん率いる「K-LABO」のツアーに参加することにしました。
SUPの簡単な手ほどきを受け、いざ海へ! 初心者ゆえ、いきなりボードの上に立つことは難しく、まずは正座の姿勢で洋上散歩をスタート。ボードの上から海中を覗くと、エメラルドがかったブルーの海中に、岩礁のありかが見て取れます。深さはかなりありますが、透明度が高いせいか、手が届きそうに感じるほど。一方、断崖を見上げれば、その押しつぶされそうな迫力に圧倒されます。
いざ、岩の隙間から“青の洞窟”へ侵入! ボードを反転させて、外を眺めると、光あふれる世界が切り取られたよう。入口付近の海底は、外からの光が反射してエメラルド色に輝いています。オールを漕ぐ手を休めて、しばしブルーに見惚れてしまいました。
K-LABO
ツアー料金/積丹SUPツアー7500円~(2名以上、所要時間約2時間)
状況に応じて、札幌からの無料送迎対応。女子ひとり旅歓迎。
https://www.k-labo-sup.com/
日本海に浮かぶ奇岩が続く海岸線をドライブ。トンネルを抜けて積丹ブルーへ
積丹ブルーの二大景勝地といえば、「日本の渚百選」の島武意海岸(しまむいかいがん)と、神威岬(かむいみさき)。
この2つの名所は海岸線を縁取るように走る国道229号線、別名「雷電国道」で結ばれています。トンネルをいくつか抜け、日本海にそびえる奇岩を横目に見るドライブは気分爽快。積丹ブルーを感じながらの道行です。
島武意海岸は、かつてこの地でニシン漁が栄え、その当時に漁獲を丘へ運ぶために掘られた、トンネルを抜けて展望台へ向かいます。ひんやりとしたトンネルは長さ約30メートル。燦燦と光降り注ぐ出口に向かって暗がりを歩く、なんともドラマティックなアプローチです。
展望台に立つと、天に向かって鋭く尖ったダイナミックな岩塊群や、オレンジ色に変色した断崖、そして積丹ブルーの日本海が目の前に広がります。
島武意海岸は、断崖絶壁が続く積丹半島では珍しく、浜まで下りていくことができます。この階段が行きはいいけれど、帰りは……の急傾斜ですが、体力に余裕があるならば、降りてみる価値アリ。透明度が高く、水の存在感を感じさせないほどクリアです。
人智を超えた圧倒的な岬から、積丹ブルー
島武意海岸からさらに約20分走り、アイヌの言葉で“神”を意味する“カムイ”の名が付く、神威岬へ。日本海に突き出た岬は、まさに神によって創造されたと思わせる迫力の地形です。
入口の「女人禁制の門」から尾根伝いに約770メートル続く遊歩道は「チャレンカの小道」と呼ばれています。ここには、悲恋の伝説が残されています。
鎌倉時代、北海道へ逃れた源義経は、アイヌの首長の娘チャレンカと恋に落ちました。けれど野望が捨てきれない義経は、ある日、娘の元を去ることに。遠のいていく義経の船を追って娘は神威岬から身を投じました。以来、この海域を通る船に女性が乗っていると、遭難するという伝説が生まれました。
“女人禁制”であることは、江戸時代にニシン漁で収益を得ていた松前藩が、利益を守るために伝説を利用したという陰謀説もあります。それでも、明治初期まで信じられていたそうです。
ニシンが押し寄せたという、ハート形の宝島で開運祈願
ハート形の島を求めて、カップルはオーストラリアやクロアチアなど、世界各地へ目指しますが、実は、北海道にもありました!
美国港から突き出した黄金岬のちょっと沖に浮かぶ、宝島。ニシンの大群が押し寄せたことから、“宝”の島と名付けられました。
黄金岬の遊歩道から宝島は近すぎてハート形には見えないですが、展望台の前にある衛星写真を見ると、確かにハート形です。ご利益ありそう。
そしてサンセット時、黄金岬の遊歩道からは積丹半島の海岸線が遠くまで見渡せます。いくつもの岬が日本海に突き出し、そのシルエットが茜色の空に浮かび上がる時間帯、かなりの絶景です。
小規模ワイナリーの希少なワインがいただけるグランピング施設
2泊3日北海道旅の2日目は、ぶどう畑の中に昨年オープンした「余市ヴィンヤードグランピング」に滞在。
余市は小規模ワイナリーながらも世界が認めるワインが育まれる産地として、今、注目を集めています。なだらかな丘陵が連続し、1日の温度差が激しく、道内では比較的温暖、夏に雨が少ない……。そんなフランスのブルゴーニュに似た地形と気候は、ワイン用のぶどう作りにぴったり。
昭和50年代からスタートしたワイン用のぶどう作りも(もともと生食用のぶどう生産は盛んでした)、今や生産者は50軒以上、ワイナリーは11軒を数えます。道内で初の“ワイン特区”の認定を受け、小規模でもワイナリーを起業しやすい環境が整っています。
「余市ヴィンヤードグランピング」のオーナーの相馬慎吾さんも、ぶどうの生産者の一人。特定のワイナリーと契約することなく、自分の采配でぶどうを割り振れるので、新しくワイナリーを始める人にも卸すことができるそう。
並行して、予約激戦のワイナリーにも声をかけているので、「余市ヴィンヤードグランピング」の中央にある“コミュニティセンター”では、余市でしか飲めない珍しいワインに出会えるチャンス大です。
今日の夕食にはリタ・ファーム&ワイナリーの「田舎式スパークリングワインHANABI」をチョイス。フランスでワイン作りの修行を積み、シャンパーニュでも認められているワイナリーです。
使用しているぶどうの品種は、“旅路”。聞き慣れないなと思ったら、余市でも一部の生産者しか作っていないぶどうだそう。自然発酵、酸化防止剤無添加なので、まさに余市のテロワール。しかも、コルクやスクリューキャップではなく、瓶ビールのようなフタなのも、特別感があります。
食事はアウトドアでバーベキュー。せっかくだからと、余市の食材をたっぷり楽しめる「道産ブランドBBQ」(¥5,900)をオーダーしました。
余市の地下水で育った「北島豚」、道産の「桜姫鷄」のモモ肉、余市産のズッキーニ、パプリカ、紫玉ネギ。そして余市ブランドEBIJIN鹿のスペアリブ。とれたての野菜は味が濃厚。甘みのあるポークに、臭みのないチキン、初体験の鹿肉も滋味深く、美味! 食材が育まれた地、しかも空の下でいただくのは、なんて贅沢!
さらに「キャンプファイヤーといえば!」と、焼きマシュマロをクッキーに乗せ、チョコソースをかけていただく“スモア”も追加オーダー。
食器やカトラリー、着火剤や炭、薪など、必要なものはすべて用意されているのが、グランピングの良いところ。バスタオルや歯磨きセットまであるので、文字通りに手ぶらでOKです。
こうして余市の食材と余市ワインをいただきながら、星空を見上げつつ、夜は更けていくのでした。
ベッドに寝ながら、自然の音に包まれるグランピング体験
「余市ヴィンヤードグランピング」にはテントが7張。北欧のアウトドアブランド「ノルディスク」の「アズガルド」というコットン製のベルテントです。
ダブルベッド2台に、旅行鞄を模したテーブル、スツールなどを置き、広さは28平方メートルと、ゆったり。感染防止用に、空気清浄機も用意してありました。
これまでのキャンプで抱いたイメージの、寝袋の窮屈さや、翌日の腰の痛さとは無縁。それでいて、テントなので周囲は大自然。鳥のさえずりなど、北の大地が奏でる音がすぐそばに聞こえます。
シャワー&トイレは別棟で、男女別になります。ヨーロピアンカントリー調のインテリアで、掃除もきっちり行き届いています。
2021年8月にはコンテナハウス「リトリートキャビン」が登場。より居住性を高めつつ、大きな窓からシームレスに自然を満喫できそうです。
余市ヴィンヤードグランピング
住所/北海道余市郡余市町登町1399-1
TEL/¥4,000~(4名宿泊の場合の1名料金、1棟1泊、税別)
https://yoichivineyard.jp/
Photos & Text: Chieko Koseki