【連載】これからの服作りを探る、デザイナー訪問記 vol.9 Harunobu Murata | Numero TOKYO
Fashion / Feature

【連載】これからの服作りを探る、デザイナー訪問記 vol.9 Harunobu Murata

ミニマルで上質な服づくりやオリジナルな視点を貫く、日本発のインディペンデントなブランドにフォーカスする連載「これからの服作りを探る、デザイナー訪問記」。デザイナー自ら、作り手の視点でコレクションを解説し服へ込めた熱い思いを語る。見た目ではわからない(知ったら着たくなる)服の真髄を徹底深掘り。
第9回は「Harunobu Murata(ハルノブムラタ)」のデザイナー村田晴信にインタビュー。

佇まいを生み出す服で現代のラグジュアリーに挑む

【2021SS】

ドレス ¥107,800

布の流れの一瞬の「美しい」を切り取る

肌の見え方や陰影、角度など美しいと感じる瞬間、その偶然を探し求めてドレーピングしながら布の流れを研究し、再現していった形です。表はマットで、裏はサテンのような艶のある素材なので、ひねりを加えて布に動きをつけることで裏の光沢面が現れます。ファスナーも縫い目に忍ばせるよう斜めに入れていたり、構造自体はシンプルですが、そう見えないように作られたドレスです。

コート ¥140,800

繊細さと抜け感を併せ持つ海辺にふさわしいコート

リネンとコットンのバサッとしたミリタリーベースのコートに、ジュエリー感覚で繊細なスナップボタンをジュエリー感覚で付けました。プールサイドや海辺で羽織るトレンチコートとして着られるようなハリ、シワ感、軽やかさが特徴です。このコートを羽織る女性はきっと腕をまくって着るだろうと想像して、袖幅を狭くできるように袖にボタンを付け、腕まくりしやすいようにしています。さらにハリのある素材のおかげでしっかりしたシルエットが作れました。

ドレス ¥140,800

ミニマルなパターンで追求する立ち姿の美しさ

裏までイタリア製のシルクの生地を使っていますが、まず形を作るための仕様を考えつつ、それにふさわしい素材を選びます。パーツ数が多ければいいというわけではないので、3枚のパターンだけでできる限り布をカットせずに完成させました。背中の空き具合やラインをきれいに見せることからスタートし、細く華奢なストラップ、裾に向かって広がるボリューム感、サイドに付けたポケットなど、立ち姿勢がきれいに見えるよう計算しています。

コート ¥231,000

イタリアの職人技で仕上げるシグネチャーコート

ファーストシーズンから、色や素材を変えながら出しているブランドの定番的コート。21SSシーズンは、1773年創業の世界で一番古いイタリアのメーカー「ピアチェンザ」の生地で作りました。ヴァージンウール90%に硬さを出すためにナイロンを10%加えたガーゼ状のちょっと不思議な表情が特徴のダブルフェイスの生地です。

ダブルフェイスの生地を扱うのがイタリアの職人さんはとても上手なので、縫製はオートクチュールブランドでお針子さんをしている方のアトリエにお願いしています。仕上がりは、肩にかけたのを忘れるぐらいに軽くて、ストレスフリー。ウエストも高めにしているので、身長が低い方でもバランスよく着られます。

バッグ ¥148,500

置いてある状態を計算した自立するバッグ

服づくりの発想と出発点は同じで、バッグとは何かと考えた結果、バッグを持つことをデザインすることにしました。実際にバッグは持ち運ぶ時間より、置いている時間の方が長いような気がして、ならば置いてあるときもきれいであるべきだと思ったのがきっかけ。そのためにバッグそのものが自立している必要があったので、家具的なアプローチになりました。両足のパーツをオリジナルでデザインし、さらにショルダーストラップをバッグに沿わせて収められるよう長さを調整し、機能面と見た目を兼ね備えました。ゴールを決めてから、方法論を模索した結果のバッグです。

インタビュー
「服を通して着る人の姿勢や気持ちの変化をデザインしたい」

衝撃的だったファッションの世界への入口

──そもそもファッションを意識し始めたのはいつ頃ですか?

「中学生の頃ですかね。僕は制服のある学校に通ったことがないので、そこで服を変えるだけで人の印象は変わるというのが、自分の経験からあって、着る服によって変化する感情に昔から興味がありました。別人になれるような感じというか、自信がついたり、歩き方や話し方が変わったりすることがある気がしていて。それが単に着るものというだけではない、服というものを意識した原体験ですね」

──そこから、さらにファッションの世界に進んだきっかけは?

「ディオールのファッションショーをテレビか何か見てからですね。2000年代前半、ジョン・ガリアーノがデザイナーをしていた頃のショーで、白塗りのゲイシャさんのようなメイクに極端に大きいライダースジャケットを羽織って、音楽や演出も含めてあまりにも衝撃的で、それが鮮明に記憶として残っていて。普段、目にしていたリアルな服から、コレクションブランドのような服に触れた最初の体験でした。自分が着たいということではなく、服そのものに興味があったと気づきました。それを機にコレクションを作ってみたい、ならば日本でやるよりパリやミラノといった本場に行きたいと、高校を卒業する頃から漠然と海外でファッションを勉強したいと思うようになりました」

──かなり早い段階でデザイナーになりたいという思いがあったのですね。

「デザイナーを意識しだしたのは、17、18歳くらいです。そもそもは、ただかっこよく生きたいと思っていただけなんですけど、かっこいい生き方とは何かと考えた時に、自分は服が好きだったから、自然にそこに行き着いたというか。それで、高校時代に実際に服を作ったりしました。パターンを買って、生地を買って、服を作って、ファッションショーのようなことを、何人かで集まってやったり。そこから自分もできるかもしれないと思いようになって」

──ウィメンズの服を作るというのは自然な流れでしたか?

「あまりメンズの服に興味がなく、もともとプラモデルといったギミックやスペックの世界とは縁遠かったんです。マニアックな話をするよりも、印象として可愛いとか、美しいとか、なんとなく雰囲気がいいと思うことのほうが多くて。メンズの世界によくある、こうであるべき、こうでなければならないというような伝統や型より、もっとスピード感のあるものに興味がありました」

──スピード感というと、移り変わりの速いトレンドの方に興味があったと?

「なんとなくありますね。トレンドを意識するわけではありませんが、時代に渦巻いているモヤモヤしたところを、飄々とさらっていくような軽やかさにすごく惹かれて。もしかしたら移り気なのかもしれませんが、シーズンによって自分の興味の対象はころころ変わっていきます」

<左>スカート ¥138,600 <右>ジャケット ¥121,000、中に着た水色のジャケット ¥107,800、スカート ¥74,800

プロダクトとしての完成度を追求した最初の服づくり

──デザイナーを志して最初に作った服は?

「シンプルで切り替えさえもない、本当に何もない徹底的にミニマリズムを突き詰めた服でした。2008年にイタリアに行ったばかりの頃は、周りの人たちの服が何百パターンからできているなかで、『関係ない、僕は2パターンだ』と言い切って、いかにクリーンでピュアなものを作っていくかに関心が向いていました。イタリア行きのきっかけになったコンテストでも、ダーツも何もなく、ただ折り目を付けただけで立体的になるようなコンセプチュアルな服をデザインしました。イタリアで一年間マスターコースを学んだ後、現地のファッションコンペで賞を獲得し、ミラノコレクションで合同ショーに参加した時に作った服も、さらにイタリアの生地の良さを活かしたもので、女性像よりもプロダクトとしての完成度を求めていました」

──素材とデザイン、形のコンビネーションを優先した感じですか?

「一枚の布が歩いているような。この素材を最大限に活かすための服、着る人への意識より、布としての意識が強かったですね。そこから数年間、その方向性とは真逆のようなブランドでデザイナーの下に就いて、刺繍のデザインやプリントに始まり、プレコレクション全体を任せてもらっていました。セクシーさを全面に引き出すようなきれいなドレスを作るパタンナーがいたり、ファッションに関わるメーカーさん一つとっても、例えば、ボタンメーカーが毎シーズン新しいデザインを発表していて、その素敵なアイテムをどう料理すれば、より素敵な服になるかを追求する世界があることを知れたのは非常にいい経験でした。ただ、自分の中の引き出しは増えましたが、やっぱり違うなと感じるようになって、その後、ジル サンダーに入りました」

ジル サンダーでブランドに必要な要素を学んだ

──本棚にも経営学の本が並んでいましたが、デザイナーと言っても、経営まで見る人もいれば、経営は他に任せてクリエイティブに専念する人もいます。村田さんはどちらのタイプですか?

「僕は前者ですね。大きく影響を受けたのは、ジル サンダーで、ルーク(・メイヤー)さんと一緒にお仕事したことです。ルーシー(・メイヤー)とルークの二人がクリエイティブディレクターに就いたときから一緒に働かせてもらいましたが、ルークさんはすごくロジカル。男性的で物事を理論立てて遂行するのが得意。ルーシーさんも頭はいいのですが、経営的なジャッジに関しては感覚的。リブランディングの過程で、二人のバランスが上手に取れていて、右脳と左脳の両方があってはじめて魅力的なブランドになっていくのを目の当たりにしました。服の作り方はもちろん、ブランドを築いていく上で、どう見せていくかも重要だと、頭ではわかっていましたが、実践で学んだ感じです。僕もイタリアに行く前に、ファッションのPRオフィスでインターンをしましたが、PRになりたかったわけではなく、デザイナーになるために、自分の服をどう見せたらいいのかを学ぶためでした。その経験が何年か経って、ジル サンダーに入ったときに、役に立った気がします」

──作りたいものを作るだけでは、ビジネスとしては成立しにくいですよね。

「そうです。同じものでも、見せ方を知っているかいないかで、実際に与える価値をより高められると思います。例えば、セールをした時に、ごちゃごちゃいっぱい並んでいる空間の中で買うのと、何人かを自宅に招いて「よかったらお茶しに来ない?」と誘って、お茶しながら、ゆっくり試着してもらって、直接デザイナーと話しながら「この服にはこういう背景があるんだ」ということを知って買うのとでは、同じ服でも全然満足度が違う。そういう機会を作っていくことで、買う側、着る側と価値観を共有することができるのかなと。極端な話、イメージとしては、僕はお客さん全員と友達になりたいんです。そうすることで、服だけを着るより、お客様に与えられる満足度を高めることができる。そういうことが今後は大事になってくるのでではないかと思っています」

シャツにも合わせたショートパンツのポケットに手が入れられるよう深いスリットが。 シャツ ¥63,800

日本でブランドを立ち上げたかった理由

──日本で自身のブランドを立ち上げようと思った理由は?

「ジル サンダーもそうですが、名だたるブランドのコレクションには日本製の生地がかなり使われています。それに海外では生地の技術や品質だけでなく、文化的な部分、感性や情緒性も評価されていると実感しました。例えば、イタリアの山奥に、日本に魅せられたイギリス人夫婦がやっている旅館があるんですが、わざわざ檜を輸入してお風呂を作ったり、日本よりも日本的なんです。でも、日本の製品(服)の輸出額を見てても、生地の輸出に対してわずかしかありません。世界的に評価の高い、魅力的な素材や資源はたくさんあるのに、日本の作り手が魅力的なブランドに変換して世界に発信できていないから、それが輸出額という数字に表れているように思い、すごくもったいない気がしました。なので日本に戻って、イタリアで見てきた、たくさんのいいものと、世界では既に評価されているのに日本人が知らないような日本のいいものを、組み合わせて世界に出していくことが、いま必要なのではないかと思ったのが自分のブランドを始めた一つのきっかけです」

コート ¥184,800

──海外のメゾンで働いていると、それこそいろんな国籍の人がいて、それぞれの国民性やルーツが出る場面もあると思いますが、そんな中で、自分の日本人としてのアイデンティティはどう感じましたか?

「日本人のアイデンティティというものを、否が応にもすごい意識させられました。どこか料理みたいなものだと思っていて、日本と言えば、寿司的なイメージはあるけれど、日本人デザイナーとして、直接的に和を打ち出すわけではないけれど、共通認識としてある日本人ってこうだよねみたいな部分を示すことは、すごく大事だと思っています。そこから、こういうミニマルなものにたどり着いたという感じです。ドレーピングをするときでも、この一瞬が美しいという瞬間の美を、スパッと切り取って出していくみたいなことが、日本人的なルーツとして宿っているような気がします」

ブランドの哲学は、ムードや佇まいをデザインすること

──実際の形やデザインをどうミニマルに落としこんでいますか?

「いま(アッキーレ・)カスティリオーニの本を読んでいて、彼は照明器具をデザインするとき、箱としてデザインするのではなく、どういう光を作るか、光のあり方のデザインから入ると語っています。これって服にも言える気がします。ハンガーに掛かっている服のデザインでなく、どの素材をどう使ったら、着る人の姿勢や気持ちの変化をデザインできるんだろうと考えています。例えば、ポケットに手を入れる時、腕をまくる時、ただ立っているよりもそういう所作でカッコつけることで、自分に自信も出てくるし、佇まいが美しいというか。実際、ルーシーさんや周りの女性スタッフたちも会議中にそうやって話していた様子がかっこよくて、そのムードを作りたいというのがデザインのソースにはあります。ルーシーさんが機械式時計のネジを巻く仕草もすごい素敵でした」

──素敵だと感じる女性像のような存在はありますか?

「2021AWコレクションでは、Neal Bascomb『faster』という本の中に登場する、Lucy O’Reilly Schellというアメリカ人女性からインスピレーションを受けています。彼女は1920年代に女性で初めてグランプリレースのチームを作った、アメリカの大富豪の令嬢でいわばビジネスウーマンなんですが、フランスのレーシングチームの指揮を執りながら、一方ではオートクチュールの服を着ていたという記述があり、素敵だなと思って、この女性を表現していこうと思いました」

2021AWコレクションより <左>ドレス ¥115,500 <右>コート ¥167,200、ジャケット ¥121,000、パンツ ¥68,200 

──どのようにこの女性の存在に辿り着いていったのでしょう?

「たまたまリサーチしていたあるクラシックカーで、メタリックな車体のボンネットをレザーベルトで留めているコントラストが単純に美しいと思って、調べていったら、Lucy O’Reilly Schellに辿り着き、しかも、僕が見た車も実は彼女が作らせていたとわかり、点が繋がって行きました。その美意識を持った女性でありながら、みんなが揃いのつなぎを着ているような場でドレスでいたりするのも、エレガントで魅力的に見えたんです」

──毎シーズン、具体的な女性像やストーリーを立てて服づくりをしているんですか?

「かなり立てています。女性像やムード、それに関連する佇まい。2021SSは、Slim Aeronsという、いわゆるジェットセッターやハイソサイティの方々のバカンス写真を撮っているフォトグラファーの写真の世界からインスパイアされました。リッチなプールサイドや南フランスの避暑地で過ごす、力の抜けた感じがエレガントで、そのシーンをテーマに服を作っていこうと考えました」

──エレガントは大切な要素なんですね。

「エレガントはかなり重要です。どういうところに品を感じるか、ムード自体を再現することで、どうやってその女性像を作っていけるかを常に考えています。例えば、プールサイドにいて、そのまま水中に飛び込み、あがってくると、日差しが強くて服がパリパリに乾いてしまったというように、シーンを想像しながらデザインしていく。だから表にはシワ感のある素材を、裏には硬くパリっとしたを生地を使って、洗い晒しの雰囲気もきれいになりすぎず、ちょっとした味のようなこともエレガントだと思っていて」

<左>ドレス ¥107,800 <右>ドレス ¥140,800

偶然を逃さない、一瞬の美の探求

──デザインや服にどう落とし込んでいくんですか?

「まずは、ジル サンダーで働いていた時に集めていたものや昔のファッションのリサーチ資料のファイルを見返すところから始まります。毎回見てるのでほぼ暗記しちゃっているぐらいですが、その時の気分によって、昔は通り過ぎていたイメージが今になって引っかかってきたりします。空気感やムードが固まってきたら、あとはずっとフィッティングしています。デザイン画はほとんど描かず、パターンを引くこともあまりしません。マネキンの上で、ドレーピングを何度もやったり、実際にモデルを呼んで、いろんな服を着せて動いてもらいながら、この見え方がいい、このポーズがいいと、欲しい瞬間を探り、そこを切り取るためには、どういうディティールをいれればいいのかということを形にしていきます。自分の中に、こういう見え方にしたいというイメージがあって、服を作っているというよりは、その女性像を作っているという感覚。僕自身が美しく生きることをコンセプトにしているので、服で生き方をデザイン、提案できたらいいなと考えています」

──女性像を作る、生き方をデザインするコレクションとは具体的にはどういうこと?

「2020SSシーズンは、実際に、以前イタリアの小さな港町のポルトフィーノに行ったとき、アンドレア・ボチェッリという盲目のオペラ歌手がたまたまライブをしていて、ちょうど日が沈む時間で、そこに集まっている人たちがエレガントだったので、その1日の光景をコレクションにしよう、この人たちのシーンを美しく演出するのはどういうスタイルだろう、というところから入りました」

2020SSコレクションより

──空想の物語が広がっていくんですね。

「一回のコレクションで本が作れるくらい、コレクション自体にストーリーがあります。朝は海辺を散歩して、ランチに街に出る時にはトレンチコートをさっと羽織り、夜はドレスアップしてディナーへというような、ムードや世界観を作り、それをベースに素材を選んで、色を選んで形を作っていきます」

──そして、完成したのはどんな服ですか?

「シンプルな形を作るというよりは、自分のデザイナーとしての跡を残したいというのはあります。いい服とはどんなものだろうと考えた時、昔買ったヴィンテージのジバンシィのパンツを思い出します。ウエストはジャストなのに、丈がやたら長くて、こんなの誰がはくんだろうと思って、裾を折り返したら、縫い代ににシルクのテープが貼ってあったんです。デザイナーの意図があって、折り返したときに美しく見えるようになっていることを発見したんです。デザイナーと直接話したわけではありませんが、そこにコミュニケーションが生まれたように感じましね」

2021AWコレクションより <左>ドレス ¥92,400 <右> コート ¥140,800、ワンピース ¥74,800

自分なりのラグジュアリーで勝負する

──作り手としては狙いを読み解いてくれたのは嬉しいですよね。

「たくさん物が溢れている中で、思いや意図が感じられるような、コミュニケーションが生まれるような服が、現代のラグジュアリーな体験なのではないかと。僕のブランドも、さすがに1対1は難しいかもしれませんが、そういったパーソナルな繋がりのような感覚をうまく組み込めていけたらと考えています」

──エレガントでラグジュアリーという文脈は、どちらかというとコンサバティブな印象もあると思います。

「確かに自分の服は、ファッション、ファッションしたものではありません。実際に着てくれている人は、いわゆるファッション好きかと言われるとそうではない。でも先進的なブランドが好きな人というよりは、自分がいいと思うものを着る人が、そもそも想定している女性像だったりします」

2021AWコレクションより <左>トップス ¥63,800、パンツ ¥46,200 <右>ブラウス ¥57,200、スカート ¥90,200

──それは自分の中で納得できていることなんですね。

「完全に納得しています。ジル サンダーのような立ち位置もありますが、僕の服はそんなにファッションではないと思うので、自分なりのラグジュアリーの解釈やクラシックの世界でどこまで戦えるかという勝負です。お客様にも満足はしていただいているという手応えは感じているので、そこをさらに広げながら進めていく感じです」

──最後に、高校時代、かっこよく生きるためにデザイナーを志したときの思いと、デザイナーとして自身のブランドを立ち上げた今、かっこよく生きるための服という考えに変化はありましたか?

「ずっと変わってないですし、服を通じて、その生き方どうですかって提案することがブランドをやっている意味かなと思います。そして、かっこよく生きるということを考えたときに、このドレーピングが必要だとか、こういう立ち姿がエレガントだとか、そういった部分を掘り下げてデザインしていくことが、僕が服づくりのベースです」

Harunobu Murata(ハルノブムラタ)
harunobumurata.com/

【連載】これからの服作りを探る、デザイナー訪問記

Photos:Kouki Hayashi(Item, Portrait) Interview & Text:Masumi Sasaki Edit:Chiho Inoue

Profile

村田晴信Harunobu Murata 東京都出身。エスモードジャパン卒業後、PRエージェントSTEADY STUDYでのインターンを経て渡伊。MARANGONI学院マスターコース修了。在学中、「DINARD INTERNATIONAL FASHION FESTIVAL」にてパリ市長賞を獲得。2012年イタリアファッション協会「CAMERA NAZIONALE DELLA MODA」主宰のコンペティション「NEXT GENERATION」にてアジア人として初受賞し、2012AWミラノコレクションにてコレクションデビュー。その後、JOHN RICHMONDを経て、15年よりJIL SANDERウィメンズデザインチームに参加。18年に「HARUNOBUMURATA」を本格始動。
佐々木真純Masumi Sasaki フリーランス・エディター、クリエイティブ・ディレクター。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツ、企画を手がけ、2019年に独立。現在も「東信のフラワーアート」の編集を担当するほか、エディトリアルからカタログ、広告、Web、SNSまで幅広く活動する、なんでも屋。特技は“カラオケ”。自宅エクササイズ器具には目がない。

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