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「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」オープン記念展レポート

「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年) カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton ジョアン・ミッチェル『Untitled』1979年(三連画)、『Minnesota』1980年(四連画)、『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年) カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton ジョアン・ミッチェル『Untitled』1979年(三連画)、『Minnesota』1980年(四連画)、『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)の国内最大級の店舗として昨年オープンした「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」。その5階に、日本では東京に続く2軒目となるアートの発信拠点「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」が誕生した。注目のオープン記念展の見どころをレポートする。

注目のアート発信拠点「エスパス ルイ・ヴィトン 大阪」とは?

大阪・御堂筋。百貨店やラグジュアリーブランドのショップが立ち並ぶ、関西圏最大級の繁華街。その一角でひときわ目を引くのが、2020年2月にグランドオープンした「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」だ。

海に浮かび、帆を風になびかせる船を彷彿とさせる外観。かつて大阪は“天下の台所”として知られ、全国各地から船が集結する物流の要所だった。なかでも要だったのが、江戸へと結ぶ「菱垣廻船(ひがきかいせん)」だ。この大阪御堂筋店は、かつての街の姿と、そこから旅立つ廻船の物語から着想を得て設計されたという。土地のストーリーを汲み取り、建物に反映させる建築家の青木淳ならではの設計だ。もともと旅用のトランクにルーツを持ち、“旅の真髄(こころ)”を讃え続けてきたルイ・ヴィトンの歴史とも重なるような建築である。

ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋の外観。 Photo: ©Stéphane Muratet
ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋の外観。 Photo: ©Stéphane Muratet

店内に入り、5階に進むと現れるのが「エスパス ルイ・ヴィトン 大阪」だ。
20世紀以降の現代アートに特化し、展覧会企画と所蔵作品を通じて幅広い人にアートに触れる機会を創出する芸術機関「フォンダシオン ルイ・ヴィトン(以下、フォンダシオン)」が運営するギャラリーである。これまでにヴェネチア、ミュンヘン、北京、ソウル、東京と拠点を広げ、世界各地でフォンダシオンのコレクションを紹介してきた。そして今年2月、国内2号目となる大阪拠点が誕生したのだ。

オープニングを飾るのは、2人のアーティストの展覧会

この「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」のオープンを記念して、ジョアン・ミッチェルとカール・アンドレの作品を公開する「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE(ある風景の断片)」展が開催中だ。

「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)<br />
カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton<br />
ジョアン・ミッチェル『Untitled』1979年(三連画)、『Cypress』1980年(二連画)、『Minnesota』1980年(四連画)、『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton<br />
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル『Untitled』1979年(三連画)、『Cypress』1980年(二連画)、『Minnesota』1980年(四連画)、『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

空間に入るとまず、対照的な作風がきわ立つ展示構成に思わず息を飲むだろう。
ジョアン・ミッチェル(1925-92年)は、1950年代に活動を始め、第二次世界大戦後の抽象表現主義の旗手となった画家の一人。一方のカール・アンドレ(1935年-)は、70年代初頭のミニマルアート運動を牽引した彫刻家だ。ともに現代アメリカを代表するアーティストだが、エモーショナルなミッチェルの作品と、無機質的にも思えるアンドレの作品は、まったく異なる作風である。作品を詳しく見ながら、それぞれの特徴をひも解いていきたい。

中央に設置されているのが、カール・アンドレの作品『Draco』(1979-2008年)。本作は、未加工のウェスタンレッドシダー(ベイスギ)の材を縦横に組み合わせ、並べただけのものである。可変的な作品で、本展では空間に合わせ23ピースが設置された。

カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton © Adagp, Paris 2021 エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)<br />
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton © Adagp, Paris 2021 エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

このように、鉄や木材といった見慣れた素材をそのまま用いるのが、アンドレ作品の特徴だ。アンドレは早い時期から、床や地面との関係を重視し、ダイレクト・カービングなどの手法によって、彫刻に根源的な変化をもたらそうと試みてきた。その過程のなかで、素材にまったく手を加えないという手法を確立。作品は、形状・構造・場所が等価であることを原則としている。さらに「作品は周辺の環境と切り離せぬ関係」にあると考えており、作品自体に固有の意味があるわけでもない。だから『Draco』を見て、これは作品なのだろうかと疑問を抱く人もいるだろう。それはすなわち、「芸術とは何か」と思いを巡らせることでもある。アートへの根源的な問いこそが、アンドレ作品の醍醐味かもしれないのだ。

空間を囲むように展示されているのが、ジョアン・ミッチェルの絵画だ。グランドオープン時より展示されている『Untitled』(1979年)と『Cypress』(1980年)に加え、5月1日には『Minnesota』(1980年)と、『South』(1989年)が新たに公開された。この2点は、本展が初披露となるコレクションだ。

ジョアン・ミッチェル『Minnesota』1980年(四連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)<br />
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル『Minnesota』1980年(四連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

『Minnesota』は、フランスのヴェトゥイユに暮らしていたミッチェルが、庭を見ながら描いたものだという。ヴェトゥイユは、パリより北西に位置するセーヌ川沿いの街だ。印象派の代表的存在であるクロード・モネが、好んで訪れていた地でもある。そこで始まったという豊かな色彩によって光を描くミッチェルの表現は、モネの作品と重なる部分がある。

季節の移り変わりを描いたという『South』は、彼女が敬愛していたアンリ・マティスの切り絵を彷彿とさせる、嬉々とした豊かさにあふれている。作品の前に立って見ると、吸い込まれそうなほど深い、絵の奥行きに驚くはずだ。

ジョアン・ミッチェル『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)<br />
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル『South』1989年(二連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

いずれの作品も、アメリカとフランスの近代表現が見事に融合している。つまり2つの国で過ごしたミッチェル自身の経験と記憶が、1枚の絵に結実した結果ともいえるだろう。

フォンダシオン ルイ・ヴィトンの活動紹介&新たな試みも

スペースの手前には、フォンダシオンの歩みを紹介するコーナーも設けられている。過去に開催された展覧会や、コンサート、ワークショップなどの様子を4台のモニターで見ることができる。ジャンル、世代、人種・国籍、ジェンダー……いくつもの壁を越境しながら、現代のクリエイションすべてを支援する、フォンダシオンの姿勢を感じさせる。

なお、これらの映像はQRコードを読み取ると、会場内でのみ自身のデバイスで閲覧することができるほか、開催中の展示作品の詳細も同様に読み込むことができる。リーフレットの受け渡しを省くことができ、他者との接触を極力少なくさせる試みは、このコロナ禍において有効な手段となるに違いない。その上ペーパーレスであることは、この先の未来にとって重要な姿勢になるだろう。

写真奥に見えるのがフォンダシオン ルイ・ヴィトンの活動紹介コーナー。 「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)<br />
カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton<br />
ジョアン・ミッチェル『Cypress』1980年(二連画)、『Minnesota』1980年(四連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton<br />
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton
写真奥に見えるのがフォンダシオン ルイ・ヴィトンの活動紹介コーナー。 「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2021年)
カール・アンドレ『Draco』1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル『Cypress』1980年(二連画)、『Minnesota』1980年(四連画) Courtesy of Fondation Louis Vuitton
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

まだ見えぬ先へとまなざしを向けるルイ・ヴィトンの、広大な物語がまた一つ大阪にて始まった。その始まりをぜひ、目撃してほしい。会期は7月4日(日)まで。

※掲載情報は5月10日時点のものです。
最新情報は各サイトをチェックしてください。

JOAN MITCHELL / CARL ANDRE
「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE(ある風景の断片)」
会期/2021年2月10日(水)〜7月4日(日)
会場/エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所/大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
時間/11:00〜19:00
休館/ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる
TEL/0120-00-1854
URL/https://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/osaka

Text : Akane Naniwa Edit : Keita Fukasawa

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