進化するブランドコラボ、気になる4つの新しいキーワード
これまでは話題作りの意味合いが強かったコラボレーション。コロナ禍で ファッション業界のシステムが激動したこともきっかけとなり、今、多様化してきている。 新しい動向を中心に、4つにカテゴライズして見てみよう。ジャンルを超えたコラボが生む、モードの新たなかたちとは?(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年4月号掲載)
1|Brands × Visual art インパクトあるヴァーチャル発表を求めて
新作を身に纏ったモデルが観客の目の前に設けられたランウェイを歩く。コロナ禍により、ファッション界で当然のこととして採用されてきた手法を取ることが難しくなった。会場選びやセット、演出、音楽を駆使したリアルなイベントとしてショーはシーズンの世界観を伝えるのに効果的だったことを思い知らされたが、当分ヴァーチャルで発表せざるを得ない状況。 そこでブランドが声をかけたのがヴィジュアルを作り上げる力を持つ人々だ。コレクションのテーマとリンクするような作風のクリエイターに撮影を依頼したり、映画監督とともにストーリー仕立てにした映像を作るなど、これまでにはなかった発表形式が試みられた。今後も引き続き見られそうな取り組み。ヴィジュアルの雰囲気を尊重しつつも服をきちんと見せるというバランスが求められる。Dries Van Noten × Viviane Sassen ドリス ヴァン ノッテン × 写真家 ヴィヴィアン・サッセン
コレクションの着想源となったアーティスト、レン・ライの作風と重なるヴィヴィアン・サッセンがルックブックと映像を撮影。レン・ライのムービーも投影し、鮮やかな色調で喜 びやエネルギーを表現した。Marine Serre × Sacha Barbin & Ryan Doubiago
マリーン セル × 映画監督 サシャ・バルビン & ライアン・ドゥビアゴ
マリーン セルは気鋭の映画監督をディレクターとして迎え、短編映画形式で発表。環境の変化に積極的に適応していく人々を描いた。キャラクターが登場するたびに着用ルックを詳細に見られるカードが出現するという工夫も凝らしている。
Alexander Mcqueen × Jonathan Glazer
アレキサンダー マックイーン × 映像作家 ジョナサン・グレイザー
現代版フィルム・ノワール、「ネオ・ノワール」の旗手、ジョナサン・グレイザーとムービーを制作。陰鬱なムードが漂う泥だらけのロンドンを舞台に、装飾をそぎ落とし、シルエットに注力したコレクションを見せた。
2|Designers × Designers
シームレスなブランド継続の鍵?
複数人で手がけているブランドは多々あれど、プラダのように個々で活動していたビッグネーム同士が1つのブランドを共同でディレクションすることは珍しい。双方の融合によってブランドの新しい方向性を見いだすことが期待できるのはもちろん、同じコレクションを作り上げながら後継者に直接ブランドの精神を伝えることも。ブランドがシームレスに継続していく1つのやり方なのかもしれない。
Miuccia Prada × Raf Simons
ミウッチャ・プラダ × ラフ・シモンズ
2人の初のコラボレーションとなった2021年春夏は、ミウッチャらしいラップコートや、ラフが長年タッグを組んでいるアーティスト、ピーター・デ・ポッターのアートワークなどを用いるなど双方の持ち味を発揮。ショーの後には親密な対話も披露した。
Heritage × Up and coming
伝統×若手が双方の可能性を広げる
貴重なアーカイブを持つ歴史あるブランドや、アイテムに特化することで高度な技術を獲得してきたブランドが、若い才能に注目し始めている。新たな視点が加わることで伝統的なものづくりが活性化される一方で、予算が潤沢ではない若手たちは職人技や質の良い素材に触れる機会を得られる上に細部までこだわることができ、互いを高め合う結果に。今後も続いてほしいコラボレーションだ。
Jimmy Choo × Marine Serre
ジミー チュウ × マリーン セル
ジミー チュウを手がけるサンドラ・チョイは新鋭との出会いを楽しみ、力になれることを願っている。オフ-ホワイトTM、アシュリー・ウィリアムズに続き、今季はマリーン セルとコラボ。
Tomo Koizumi × Emilio Pucci
トモ コイズミ × エミリオ・プッチ
エミリオ・プッチは「アーカイブを才能あるデザイナーにオープンにする」と宣言し、2020-21年秋冬コシェをゲストデザイナーに。今季はトモ コイズミとカプセルコレクションを発表した。
Brands × Games
巣ごもり需要で注目の世界でおしゃれを体験
新型コロナウイルスの感染拡大により世界各国でロックダウンや外出自粛の措置が取られて娯楽施設が閉鎖される中、多大な恩恵を受けたのがゲーム業界だ。家で楽しむことができ、さらに他のプレイヤーたちとの交流も可能。常日頃から新しい広告媒体を探し続けていたファッション界が注目したのは当然のことだった。自分のアバターがおしゃれをしてヴァーチャルの世界を闊歩する姿を見ていると、いつかは現実世界でも同じものを着たい、という気持ちになるのかもしれない。既存のゲームに参加するだけではなく、人物のリアリティ溢れる再現技術や没入感を効果的に利用して、新作ゲームを開発するブランドも。
Gucci × Pokémon GO
グッチ × ポケモンGO
2019年からいち早く公式アプリでゲームセクションを設けていたグッチ。今年はARゲーム「ポケモンGO」とコラボした。プレイヤーはザ ノース フェイス×グッチのアイテムをゲーム内で身につけることが可能。
Christian Louboutin ×Zepeto
クリスチャン ルブタン × ゼペット
韓国発のゼペットは、自分のアバターを作ってユーザーと交流できるゲームアプリ。クリスチャン ルブタンは新作をゼペット内で発表。アバターはそれらを着用してパリ風の街を歩けるほか、豪華ゲストとも会える。
Balenciaga
バレンシアガ
バレンシアガはオリジナルのオンラインゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー」を製作。リアルなキャラクターたちが着用している新作は、角度を変えて見ることも。
Text:Itoi Kuriyama Edit:Saki Shibata