鏡リュウジさんに聞く「風の時代」 | Numero TOKYO
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鏡リュウジさんに聞く「風の時代」

「地の時代」が終わり、価値観がガラリと変わる新時代がスタート。風の時代をしなやかに乗り切るには? その心がけとポイントを鏡リュウジさんが教えます。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年4月号掲載)

「風の時代」というワード。最近、耳にしたことがあるという方は多いのではないでしょうか? この閉塞感のある雰囲気の中「風の時代」という言葉はSNSのトレンドワードにもあがっていましたが、何らかの希望や期待を見出したい…という願いの表れだったのかもしれません。「風の時代に入ったらしいよ」「何百年に一度の時代の転換点なんだって」「世界がガラッと変わるみたい」などと言われています。

ところで、「風の時代」ってなんでしょう?

最近になって耳にし始めた流行語のように思うかもしれませんが、実はとても長い伝統と歴史、深い由緒に根ざす占星術のアイデアからきているものなのです。ここでちょっとおさらいしておきましょう。古代から時代の変化を告げる指標として重視されていた星に木星と土星がありました。木星と土星は約20年に1度接近します。これを大会合、グレート・コンジャンクションといいます(昨年12月にこれが起きたことを、ご存じの方も多いでしょう)。木星は若い王、土星は古き王。この接近はおよそ20年ごとに起こる世代交代、あるいは世相や経済の変化を意味すると考えられるようになりました。さらに、木星と土星が接近する星座の分類によって、長いスパンでの時代変化を捉える方法が編み出されたのでした。 木星と土星はおよそ200年の間、同じエレメントの星座で接近を繰り返します。過去200年ほどの間は、木星と土星は「地の星座」(牡牛座、乙女座、山羊座)で接近していました。ですが、2020年12月、この二つの巨大惑星は「風の星座」である水瓶座で接近し、以後、200年ほど、「風の星座」(双子座、天秤座、水瓶座)で接近を繰り返すことになります。

今はちょうど「地のエレメント」の時代から「風のエレメント」への大きなシフトの時期にあたります。これまでの土地やお金や権力(地のエレメント)重視の時代から、情報や知識、科学(風のエレメント)が大切にされ、より自由で多様な時代に大胆に軸足が移動していく転換点だといわれているのです。たとえば、テレワークが中心になって大企業が次々に本社ビルを売却している……という世情も、まさに「地から風へ」の流れですね。

“水瓶座”的な人やものへの注目

また、木星が水瓶座に入るため、“水瓶座”的な人やものに注目がいきそうです。たとえばエンタメ業界などでも知的でクールな人や、バイリンガルで国際感覚をもっているアーティスト、科学的なことにも通じているタレントなど、新しいタイプの人が注目され、オピニオンリーダーになっていくこともありそうです。一方、水瓶座は「風」の星座ではありますが、そのシンボルは「水を運ぶ人」。水をどんなふうに扱うか――美容でも“水”に注目。新しい形で肌に水分を届ける技術や保湿ケアが出てくるかもしれません。

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星たちは「追い風」を送ってきてくれている

でも、現実はよいことばかりではありません。世界では多様性の重視を訴える多くの人の声と裏腹に、格差は拡大し、政治的意見で分断が広がっています。古い価値観から抜け出せないリーダーたちの失言がネットを炎上させることもしばしば。なにより、「自由な風(空気)」の時代の始まりに、私たちは「マスク」をすることを余儀なくされています。でも、こうした状況はひとつの大きなきっかけになるとは、考えられないでしょうか。水の中にずっと暮らしている魚は水の存在を意識できないように、私たちはよほどのことがない限り、「風」(空気)の存在を意識しがたいのです。自由、多様性、知性。そういうものの大切さに、今だからこそ気がつき始めています。変化はそんなに急には起こりませんが、でも焦ることはありません。なにしろ「風の時代」は200年も続くのですから。

そして、これだけは言いたいのです。もし今あなたが、ちょっとしんどくて、ちょっと物足りなくて、自分の人生に何か違和感があると感じているとしたら――。そんなあなたにこそ、星たちは「追い風」を送ってきてくれていると。なぜかというと、時代は大きく変わっているからです。今が100パーセント幸福、満足、なんていう人は、過去の価値観に生きているからにすぎません。今、「何かおかしい」「漠然と不安」と感じているということは、あなたが過去ではなくこれからの価値観をひと足先に生きていることの証拠なのです。初めは小さかった風が、巡り巡って大きな気流になるように。あなたの小さなアクションが、新しい時代を拓くことになるかもしれません。

風の時代の開運ビューティー

 

 

 

Photos : John Chan Illustration : Asami Hattori Edit & Text : Naho Sasaki

Profile

鏡リュウジ(かがみ・りゅうじ) 翻訳家・占星術研究家。京都文教大学、平安女学院大学客員教授。占星術の第一人者として雑誌やテレビ、ラジオなどで活躍する。『占星術の文化誌』『鏡リュウジの占星術の教科書』など著書多数。

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