Culture / Feature
森で暮らす人たち 【3】SEEALLデザイナー・瀬川誠人の場合

購入時は人が入れないほど一面雑草だった300坪ある庭の植栽はすべて自分で。何事も自分でできることは自分でやってみたいという思いから、勉強を重ねて手を入れ続けている。
子どもの成長のため、仲間との時間のため、趣味のため、そしてもちろん自分自身のため。都会での居場所を持ち続けながら森に自分の住まいを見つけた人たちに、森での暮らしの喜びを教えてもらった。【3】SEEALLデザイナー・瀬川誠人の場合(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年3月号掲載)

窓を大きく取った、採光抜群の平屋。以前はアメリカ人の物書きが住んでいたのだとか。
自分を成長させてくれる自然とのコミュニケーション
瀬川誠人 SEEALLデザイナー
生地作りにこだわり、実現したいデザインに合わせて世界の職人たちや技術をモダンに取り入れたファッションブランドSEEALL(シーオール)のデザイナー、瀬川誠人。3年ほど前に鎌倉の山側に自宅を構えた。「仕事で1年の半分をイタリア・ヴェネト州のブドウ畑くらいしかないようなところで過ごしていたことがあり、都会に住むのがしんどくなったんです。東京にもアクセスしやすいので鎌倉で物件を探しました」。 譲れなかったのは広い庭と、窓から民家が見えないこと。その条件を満たしていた築80年の古民家を友人と2年かけて改修し、庭も試行錯誤しながら自分で手入れしている。
山梨県北杜市で自然農を実践。家を建ててデュアルライフを送る計画も進行中だ。遠くに山が見える風景は、子ども時代を過ごした京都で見ていた風景と重なる。

畑で収穫した野菜たちは生き生きとして色も鮮やか。近いうちにベジタブルタンニングにも挑戦してみたいという
さらには自然農が盛んな山梨県北杜市に畑を借り、週末になると出かけていくという。「庭を作っていたら、自分の食べるものにも意識が行き始めて。野菜ってあっという間に育つんです。1週間見ないうちに畑の様子が変わっている。面白い作業だし、気づきがたくさんありますね。
とはいえ、とにかくトライアンドエラーの繰り返しで、まったく思いどおりにいかないことを受け入れなければいけないので人間的にも大きくなれます(笑)。それに、土をいじってると無になれるんですよ。普段どうしても情報量が多いので、頭を空っぽにすることは自分にはすごく大切です」。

リビングからの眺め。イタリアで経験した生活と同じように、窓からは自然しか見えないところが気に入っている。
一方で、カルチャーを感じる都会的暮らしも必要だそう。「僕にとってはヴィヴィッドな感覚をキープするためのカウンターとして自然が必要。都会も自然もどちらも必要不可欠なんですよね」
Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara, Chiho Inoue
Profile

瀬川誠人Masato Segawa
商社に勤務後、名古屋でのセレクトショップ立ち上げを経て、イタリアのブランドMAISON FLANEURのクリエイティブディレクターを務める。2019年より自身のブランドSEEALL始動。京友禅の絵付職人を父に持つ。