2020年、あの人の偏愛ベスト・ミュージック vol.3 Natsuki Kato (Luby Sparks)
サブスクリプションサービスが勢いを増し、ますます音楽のトレンドが細分化された2020年。パーソナライズされたプレイリストは心地よく楽しいけれど、そろそろ飽きてきたのでは? そこで、音楽をこよなく愛するヌメロ注目のアーティストに、2020年の超・偏愛ベスト・ミュージックを大調査! 新たなお気に入りの一枚を見つけて。 第3回目は、きらめくシューゲイザー・サウンドで注目の新世代Jバンド、Luby Sparks(ルビー スパークス)のベース、ボーカルを務めるNatsuki Katoがコメントを寄せてくれた。
センスが良すぎるロンドンの若き世代を代表。オルタナティブ・ロックの新機軸
『925』Sorry
「2020年僕が最も楽しみにしていたアルバムの一つが、このSorry(ソーリー)のアルバム。生楽器と打ち込みの足し引きが完璧なバランスで、絶妙に少ない音数や、印象的なギターリフ、サックスリフでリードする新手のジャズ/ロック。そして男女ツインボーカルをこんなにもセンス良く、モダンでスタイリッシュにこなしたバンドが未だかつていただろうか。歳下のこのセンスに悔しくなって、思わずすぐに真似た曲を作ってしまったほど。一聴した瞬間からオルタナティブ・ロックの新しい風が耳の奥に流れ込んでくるのを感じた、最高峰のデビュー・アルバム」
ダークな終末世界をリアルタイムで体現する、哀しきZ世代のゴス・ロマンス
『The Great Awakening』Johnny Goth
「僕は去年ごろからレイト90s〜アーリー00sへの関心が強くなってきている。そこへこの男が拍車をかけてきた。顔面はロバスミ(※1)ばりの白塗りなのに、パーカーやニット帽を身に纏い、足元はVansのスニーカー。カジュアルな装いのゴス、トリップ・ホップからトラップまで通過した強烈なビートにドリーミーなアコースティックギターと囁く歌声から成るサウンドは、Adore期のスマパン(※2)からブリトニー・スピアーズまでをも思い出させ、逆に新鮮。自分の好きなものだけを自由に組み合わせたようなチグハグな世界観、リアルタイムに直面してる終末世界を表現したようなダークさ、Z世代による全く新しいゴス定義、クールだ」
(※1)The Cure(ザ・キュアー)のフロントマン、ロバート・スミスの略。
(※2)The Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ)の略。
もうシューゲイザーなんて言ってられない、三歩先を行ってしまった異形ドリームポップ
『Motherhood』No Joy
「こちらもどこか00sを感じながらも全くの異世界へ到達してしまった作品。元々は生楽器中心の王道なシューゲイザー・バンドだったNo Joy(ノー・ジョイ)が、ニューメタル、トリップ・ホップ、インダストリアルなどなどをごちゃ混ぜにして衝撃の変貌を遂げた。サンプリング・ビートにツーバス、甘い歌声にシャウト、ダンスもメタルもシューゲも何のその、自由奔放なサウンドに思わずニヤリ。僕のバンドもジャンルという枠にはめ込まれて身動きが取りづらくなる事が多々あった、しかしバンドは何をやってもどんなに変化しても良いという勇気すら貰えた強烈なジャンルレスアルバム」
Edit:Mariko Kimbara