天才ファッションフォトグラファー、ヘルムート・ニュートンが表現したもの
女性を撮り続けたファッションフォトグラファーの巨匠、ヘルムート・ニュートン。2020年に生誕100年を迎えたことを記念して制作されたドキュメンタリー映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』が2020年12月11日(金)より全国順次公開予定だ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年1・2月合併号掲載)
ニュートンの作品世界をどう捉えるか
1950年代半ばからファッション誌にユニークかつ衝撃的な作品を次々と発表したヘルムート・ニュートン。70年代に入るとアート界でも大きな注目を浴び、ギャラリーや展覧会でも大規模な展覧会が開催された。
しかし一方で「ポルノまがい」「女性嫌悪主義」と議論も巻き起こしている。映画に登場する“12人の女たち”の一人、批評家のスーザン・ソンタグは本人を目の前にしてこう語る。「あなたの写真は女性蔑視もいいとこよ。女性として不快だわ」
監督のゲロ・フォン・ベームはこの映画を作った目的の一つは、人々にあらためて考えてほしかったからだという。本作にはシャーロット・ランプリングらニュートンにインスピレーションを与えた女性たちのインタビューを収録。彼女たちの現在の視点から写真家、ヘルムート・ニュートンを捉え直すことで私たちに問いを投げかけている。彼がその後のファッションフォトに大きな影響を与えたことは言うまでもないだろう。
「私は悪趣味を愛している」
ニュートンのファッション写真は力強く挑発的で、常に人々を魅了した。それまでの着せ替え人形のようなモードを見慣れていた読者に強烈なインパクトを与えたという。本人いわく「私は悪趣味を愛している。趣味が良いということは所詮、標準的なものの見方しかできないということだ」
12人の女性たちが語るニュートン
この映画の特徴は、被写体という、言葉を発することのなかった女性たちがその声を届けていること。彼女らの発言から、ニュートンとその写真世界の新しい視点が見えてくるはず。
ナジャ・アウアマン/モデル
「性差別的で女性蔑視だと責めることもできるし、社会にあふれている現実を反映してるともいえる」
クラウディア・シファー/モデル
「すごい人よ、目がキラキラ輝いて、人当たりが良くて控えめでウィットに富んでた」
シャーロット・ランプリング/俳優
「彼の写真は想像の自由がある。それがアートの力よ。見る人が自由に想像できるの」
マリアンヌ・フェイスフル/歌手、俳優
「彼はワイマール時代の芸術家。芸術運動が栄えたドイツ表現主義の時代と繋がってる」
●「私はフェミニストだけど、男性優位を主張する作品については1つの文化の表現だと思う」イザベラ・ロッセリーニ/俳優
●「彼の写真はエロティックでありながら示唆に富み、深みがあって、写真の中に物語が流れてる」グレイス・ジョーンズ/歌手
●「ファッションは移り変わり、新しいデザイナーが台頭。でも彼は才能豊かで知的で力強い視点を持ち、ウィットにあふれ写真は少しもブレなかった」アナ・ウィンター/米『VOGUE』編集長
●「彼が気力を保てたのは、小さなカメラのおかげよ。カメラはお守りなの」ジューン・ニュートン/写真家(ニュートンの妻)
映画『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』
URL/helmutnewton.ayapro.ne.jp/
12月11日よりBunkamuraル・シネマ、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開