アーティストが改めて考える“家族” vol.1 山田梨詠
急激な変化を余儀なくされたいま、あらためて日常とはなんと愛おしいものだろう。写真で表現するアーティストたちにとっての、家族のつながりとは。ベルリンを拠点に活動しするアーティスト、山田梨詠の場合。 (『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年10月号より抜粋)
社会の変化とともに考える、家族写真の在り方
「家族とは?」の答えに近づくために、現在、過去、未来の家族の物語を作ろうと、山田が活動の場となるベルリンを拠点に始めた三部作プロジェクトの最初の作品『Familie werden(家族になる)』。個性あふれる家族の写真、よく見るとみな同じ顔をしている。
「ドイツの蚤の市では家族写真が売られているのですが、それを買取り、再現しました。すべての役を私が演じることで、現代は自分で家族を選ぶことができ、家族のどのポジションにもなり得ることができる時代でもあるというメッセージを込めています」
スマートフォンの普及やデジタル技術の進化により、写真が大衆化した時代に入ったからこそ、山田は家族写真について真髄を追い求める。「家族写真は私たちが存在していたことの証明でもある。社会が変化している今だからこそ家族の形について考えるときなのかもしれません」
そんな山田が家族や友人、そして仲間に求めることは「時に煩わしいと思うこともあるけれど、折り合いをつけて、お互いのために何かできることをしたり、してもらえたりできる関係が理想。誰かにずっとそばにいてほしいという願いよりも、私にとって大切なつながりだと感じられる人たちと長く付き合っていけたら」とのことだ。
Interview & Text:Kana Yoshioka Edit:Mariko Kimbara