目利きが選ぶ! 世界の“コメディ”映画 〜森直人編〜 | Numero TOKYO
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目利きが選ぶ! 世界の“コメディ”映画 〜森直人編〜

映画通の中の映画通4人が「2010年代の世界各国コメディ映画」というお題に答えてくれた。コメディとひと口に言っても、その笑いはさまざま。あなたはどの笑いが好き? ここNumero.jpの映画紹介でもおなじみの映画ライター、森直人のセレクトをお届け。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年6月号掲載)

『こっぴどい猫』(日本/2011)

恋愛劇の新しい名手が贈る、すれ違いの輪舞

『愛がなんだ』の大ヒットで注目を浴びる俊英・今泉力哉監督の初期の傑作。モト冬樹が扮する妻を亡くした作家と、彼に接近する若い女性を中心に15人もの男女が交錯する。軽妙な恋愛群像に細やかな描写や会話の面白さが光る。 DVD¥4,700 発売中 発売元:東映ビデオ 販売元:東映

『清須会議』(日本/2013)

天下分け目の戦国時代の史実が喜劇に変身

日本の国民的喜劇作家といえばこの人、三谷幸喜。大泉洋が「羽柴秀吉」時代の豊臣秀吉に扮して、敵を陽気さやサービス精神で包み込むチャーミングな人たらし術を発揮する。時代劇も独特のコメディに仕立てる、さすがの三谷流。 「清須会議 スタンダード・エディション」DVD ¥3,800 発売中 発売元:フジテレビジョン 販売元:東宝

『テルアビブ・オン・ファイア』(ルクセンブルク/2018)

中東問題を笑いに変える異色バディ

イスラエルとパレスチナの対立は政治的・宗教的に根深く複雑な背景を持つ。ところが本作は人気テレビドラマをめぐる珍騒動を通して二人の男が奇妙な絆を築いていく。個人同士なら民族の違いもひょいと乗り越えられるのだ。

公開中 ©Samsa Film-TS Productions-Lama Films- Films From There – Artémis Productions C623

『オン・ザ・ミルキー・ロード』(セルビア/2016)

愛と生命力があふれる大人のおとぎ話

戦火の中で繰り広げられるドタバタ喜劇のような男女の逃避行。長い内戦を経験した旧ユーゴ出身のクストリッツァ監督は圧政下を楽天的に生き抜く人々を描いてきた。本作では自ら主演も兼ねて祝祭のエネルギーを爆発させる。

DVD ¥3,800 発売中 発売・販売元:キングレコード © Love and War LLC 2016

『イタリアは呼んでいる』(イギリス/2014)

風光明媚な景観とトークのグルメトリップ

英国の人気俳優スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンの名コンビによる“旅バラ”シリーズの第2弾。肩の力が抜けたおしゃべりを交わしながら、イタリア各地の美食と名所を巡る珍道中。笑いの中に大人の粋もたっぷり。

DVD ¥3,800 発売中 発売・販売元:KADOKAWA ©Trip Films Ltd 2014

『希望のかなた』フィンランド 2017

北欧の名匠が優しく描く社会の片隅の哀歓

カウリスマキ監督は常に弱者の味方。本作ではヘルシンキに流れ着いたシリア難民の青年が、生き別れの妹を探す旅の中で人々の小さな善意に救われていく。とぼけたユーモアは世界を覆う差別や不寛容に対する解毒剤のよう。

DVD¥3,800 発売中 発売・販売元:松竹株式会社 © SPUTNIK OY, 2017

2010年代を振り返り。漫画&映画で笑おう!

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara

Profile

森直人Naoto Mori 映画評論家、ライター。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』、編著に『ゼロ年代+の映画』ほか。ユーチューブ番組『活弁シネマ倶楽部』でMC担当。

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