真っすぐだった少女の気持ちを思い出す、最新カルチャー10 | Numero TOKYO
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真っすぐだった少女の気持ちを思い出す、最新カルチャー10

大人になるにつれて、いつの間にか自分にリミッターをかけていない? 何だってできると思っていた純粋な少女の頃の無敵パワーで、再び踏み出したい。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年5月号掲載)

少女時代の無敵パワーを取り戻せ

情報があふれかえる現代。何を大切にしたいのか、何を求めているのか。少女時代を描いた作品は、あなたのハートの一番ピュアな部分を教えてくれる。

1.映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

少女たちの多様なパワフルさ

ルイーザ・メイ・オルコットによるアメリカの古典的名作『若草物語』を『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグが映画化。ヒロインはマーチ四姉妹ことジョー、メグ、ベス、エイミー。現実と向き合い悩み成長した彼女たちと、賑やかできらきらした少女時代とを軸に綴る。結婚なんて興味ないけど、一人は寂しい。愛する人と結婚したけど、貧しいのは嫌。経済的に安定したくても、愛のない結婚はしたくない。150年前に書かれたものとは思えないほど、彼女たちが日々抱える矛盾や葛藤、弱音は、今を生きる多様な女性たちの声と重なる。幼い頃の無敵な自分は消えてはいない。自分の中に確かに存在しているその声に、耳を澄ませたくなる。 監督・脚本/グレタ・ガーウィグ 出演/シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、エマ・ワトソン 公開日未定 https://www.storyofmylife.jp/

©2018 EPIPHANY FILMS.ALL RIGHTS RESERVED.
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2.映画『はちどり』

あの頃経験した、痛みと傷

14歳のウニが経験する、思春期特有の揺れ動く思いや家族との関わりを、1994年のソウルを舞台に映し出す。キム・ボラ監督が、自身の少女時代の体験をベースにした本作は、世界各地の映画祭で計45冠を獲得し、韓国で大ヒット。真剣な恋も男性優位社会に生きていることも知らなかったウニが、不思議な魅力を持つ塾の先生・ヨンジュと出会い、傷つき、世界と向き合うことを学んでいく。誰もが経験した、あの頃の記憶と再会できる。

監督・脚本/キム・ボラ
出演/パク・ジフ、キム・セビョク、イ・スンヨン
初夏ユーロスペースほか公開予定
https://animoproduce.co.jp/hachidori/

©2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
©2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

3.映画『ムーラン』

偽りの姿 vs 本当の姿

初めてアジアを舞台にした1998年のディズニー映画長編アニメの実写化。男性と偽り、病気の父に代わって戦いに挑んだ女将軍の伝承文芸「花木蘭」をベースに、ディズニー史上最強と名高いヒロインを『ユダヤ人を救った動物園』のニキ・カーロ監督が描く。実写版に寄せてクリスティーナ・アギレラが再レコーディングしたというキーソング「Reflection」は、社会や家族が望む理想像と、本来の自分とのギャップに悩むすべての人々に寄り添う。

監督/ニキ・カーロ
出演/リウ・イーフェイ、コン・リー、ジェット・リー、ドニー・イェン
近日公開
https://www.disney.co.jp/movie/mulan.html

4.TVシリーズ『ノット・オーケー』

爆発寸前な10代の苛立ち

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の製作総指揮ショーン・レヴィと、『このサイテーな世界の終わり』の監督ジョナサン・エントウィッスルがタッグを組んだNetflixオリジナルドラマ。居心地の悪い高校生活、母との微妙な関係。親友への報われない片思い……と、何もかもオーケーじゃない17歳のシドニーが、ひょんなことから自分の特別な力に気づく、という青春ブラックコメディ。爆発寸前な10代のモヤモヤ&イライラがリアルに伝わる。

出演/ソフィア・リリス、ワイアット・オレフ
Netflixオリジナルシリーズ「ノット・オッケー」独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/80244781

©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス
©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

5.マンガ『違国日記』

それぞれが違う“私の物語”

15歳の朝は交通事故で両親を亡くし、叔母である35歳の少女小説家、槙生と二人暮らしをすることに。圧倒的な「違う国」に生きる槙生に対し、他人の「違う国」を認めず、自分の「違う国」も模索中の朝。時にぶつかりながらも、二人はともに生きていくために、折り合いのつけ方を学んでいく。互いに否定することなく、押し付けることなく、違うところに立ったままで人と関わることができたなら…。純粋な優しさについて考えさせられる。
ヤマシタトモコ/著(祥伝社)

©高松美咲/講談社
©高松美咲/講談社

6.マンガ『スキップとローファー』

ためらわず進め、若者よ!

地方から上京した、みつみちゃんこと岩倉美津未が、純粋で真っすぐな健やかさで、ジャッジしがち、空気読みがちな都会っ子たちのカッコつけや緊張感を自然と緩ませていくという、ほのぼの青春漫画。イケメン志摩くんも眩しくその背中を見つめるみつみちゃんは、他人の意見は受け入れても、惑わされず、ためらわず、信じる道を突き進む。すれ違いや誤解から逃げることなく向き合おうとする彼女の強さが周りを変えていくのだ。
高松美咲/著(講談社)

7.本『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』

「女の子写真」が意味したもの

「女の子写真」と呼ばれ、90年代の若手女性写真家たちを中心に巻き起こった写真ブームについて、長島有里枝が当事者の視点で、シビれるほど客観的に再検討、再構築。「特定のジェンダー」だからという理由で、「理解のある擁護者」から代弁された物語も、過去にさかのぼって自らの物語として書き換え、自尊心を取り戻せるのだと勇気を与えてくれる一冊。もともと、私たちは「女の子」の型にはまることのない、それぞれに違った個人なのだから。
長島有里枝/著(大福書林)

8.本『「好き」の因数分解』

複雑な「好き」という感情

ミッフィー、マックグリドル、ゆらゆら帝国、クロード・モネ、UFOキャッチャー、書くこと、肉、クリスマス、ポイント10倍キャンペーン。最果タヒが、48の「好き」なものについて、3層のテキストで書き分けたエッセイ。「好き」という感情は、簡単なようで複雑。「好き」の種類はさまざまだし、一言では片付けられない。幼い頃、何が好きだったか。その実感や記憶を切り捨てない彼女の言葉は、好きの理由を考察する楽しさを思い出させてくれる。
最果タヒ/著(リトルモア)

いわさきちひろ スイートピーとフリージアと少女 1963年 雑誌「子どものしあわせ」1963年3・4月号
いわさきちひろ スイートピーとフリージアと少女 1963年 雑誌「子どものしあわせ」1963年3・4月号

9.展覧会『いわさきちひろ 子どものしあわせー12年の軌跡』

子どもらしさが笑顔を運ぶ

1963年から亡くなる74年までの12年間、いわさきちひろが描き続けた、月刊雑誌「子どものしあわせ」の表紙絵の原画、ピエゾグラフ作品を中心とした展示。いわさきちひろの作風の変遷を、四季を彩る草花や子どもの表情を通してたどることができる。子どものちょっとした仕草や表情がリアルで愛らしく、くさくさした心もどこへやら。柔らかくて温かくてなんだか懐かしい、幸せな気持ちになれる時間が待っている。

会期/開催中~9/22(日)
会場/ちひろ美術館・東京
住所/東京都練馬区下石神井4-7-2
Tel/03-3995-0612。
※5月1日(金)現在、臨時休館中です。最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://chihiro.jp/tokyo/

フェリックス・ヴァロットン《女の子たち》1893年 木版/紙 三菱一号館美術館蔵
フェリックス・ヴァロットン《女の子たち》1893年 木版/紙 三菱一号館美術館蔵

10.展覧会『開館10周年記念 画家が見たこども展』

子どものいる日常に触れる

開館10年目を迎える三菱一号館美術館の記念展。現実世界にとらわれず自由な色や形で画面を構成するなど、革新的な表現を生み出したナビ派。
ボナール、ヴァロットン、ドニなどのナビ派、そして彼らに影響を与えたゴーガン、ゴッホらが独自のアプローチで描く、さまざまな瞬間の子どもと出会
える。子どものいる世界で、子ども心を取り戻そう。

会期/開催中~6/7(日)
会場/三菱一号館美術館
住所/東京都千代田区丸の内2-6-2
Tel/03-5777-8600(ハローダイヤル)
※5月1日(金)現在、臨時休館中です。最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://mimt.jp/

 

Text:Tomoko Ogawa Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara

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