アートなマイアミ訪問記 後編「デザイン・ディストリクトで買い物&アート三昧」 | Numero TOKYO
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アートなマイアミ訪問記 後編「デザイン・ディストリクトで買い物&アート三昧」

アメリカ・フロリダ州のマイアミを舞台に、毎年12月に開催される国際的なアートフェア「アートバーゼル」。その期間アート一色に染まる、マイアミの街を前後編の2回にわたりダイジェストでご案内。後編は、ハイエンドなファッションとアートを両方楽しめる、マイアミ・デザイン・ディストリクトをぶらぶら散策。

ショッピングしながらアート&デザイン鑑賞 マイアミ屈指のおしゃれエリア、デザイン・ディストリクト

2015年から開発が進められてきたマイアミの新名所である「デザイン・ディストリクト」。現代美術館やギャラリーと、ディオール、エルメス、ルイ・ヴィトン、フェンディ、カルティエ、ティファニーなど挙げ出したらキリがないほど、様々なラグジュアリーブランドのブティックが立ち並ぶ、まさにハイエンドなアートとショッピングのエリアです。アートというだけあって、ブティックの建物自体やファサードにインテリアも、他の都市のショップに比べてどこかアーティスティックな気がするのは気のせいでしょうか?

ジョナサンの意匠とアーティストの作品が共鳴し合う場

その中にある、ロエベ(Loewe)のブティックでも、毎年アートバーゼルの時期には、多様な分野のアーティストによる、予期せぬ対話を生み出すことを目的とした展覧会「チャンス・エンカウンターズ」を開催しているということで、のぞいてみました。

店内の中央には、18世紀にポルトガルで建てられたという石造りの穀物庫が堂々たる存在感で鎮座。その上や、周囲にはコレクションと対話するかのように、イギリス人現代アーティストのヒラリー・ロイド(Hilary Lloyd)が今回のために制作したテキスタイル、サウンド、ビデオインスタレーションが展示されています。

さらに、そこにイギリスの先駆的な陶芸家イーウェン・ヘンダーソン(Ewen Henderson)による古来の土器や石器、岩盤や土そのものを思わせる、プリミティブで抽象的な造形と色味の力強い陶芸彫刻が並ぶ。ジョナサン・アンダーソンによると、「チャンス・エンカウンターズ展は、私の意匠と強く共鳴するアーティストおよび作品同士が時空を越えて対話をする機会。ヒラリー・ロイドの作品は、非常に現代的で、我々の視覚世界との過剰な関わりを示しています。さらに、イーウェン・ヘンダーソンの大胆で豊かな物質性を含有する作品との印象的な対話を演出してます」なのだとか。

Loewe

住所/110 NE 39th Street NW102 and 202, Miami, FL33137
TEL/305-576-7601
www.loewe.com/jap/ja/art_basel

元コレットのサラも参戦。Mira Mikatiとコラボ・ポップアップストア「HELLO MIAMI」

パリの伝説的セレクトショップ『コレット(colette)』を手がけたサラ・アンデルマンが、イギリス人の新鋭デザイナー、ミラ・ミカティ(Mira Mikati)とのコラボによるポップアップストア「ハロー・マイアミ」を期間限定オープンしていました。

話題のサスティナブルブランド「パンゲア(Pangaia)」と日本人アーティストのハロシ(HAROSHI)のコラボTシャツ、ファレル・ウィリアムスとシルバーウエアの老舗「クリストフル(Christofle)」のコラボによるカトラリーセットMOOD、さらには、ミラ・ミカティとカイカイキキの現代美術家ミスター(MR.)とのポップなコラボグッズなど多数登場。サラの審美眼でキュレーションされた、アート&ストリートカルチャーのミックス空間でした。

Miu MiuとM/Mの遊び心満点のコラボスツールの新作

エリア内の特設会場では、ミュウミュウ(Miu Miu)とM/M PARISとの限定コラボ家具「Miu Miu M/Marbles Stool」も発表されていました(ブティックでも展示)。2019年4月に発表された、Miu Miu M/Matching Color Stoolが、よりアーティスティックに進化し、ウォルナットの枠にマイアミの街路樹でおなじみのパームウッドを貼り合わせた3本足のスツール。その表面には、靴のソールに用いられるパンチング加工されたラバーが埋め込まれ、そこにアクセサリーのようにカラフルなガラス(ビー玉的な?)のマッチ棒をさしてパーソナライズするというデザイン。

マットなウッドに、色と光沢のあるガラスというコントラストが特徴のオブジェ兼スツールは、パズルゲーム的に遊んだり、色の組み合わせでオリジナルのグラフィックパターンを作ったり、世界に一つの作品に仕上げることができる。まさにミュウミュウの異素材ミックスの妙と、M/Mのウィットが合体した作品。

Miu Miu

住所/NE 39th Street, #190, Miami, FL33137
TEL/305-341-9342
www.miumiu.com/jp/ja/miumiu-club/special-projects/marblestool.html

注目作家スターリング・ルビーのレトロスペクティブ
ICA MIAMIにて。

スターリング・ルビー(Sterling Ruby)といえば、ラフ・シモンズ時代のカルバン・クラインとのコラボレーションで話題を呼んだアーティストとして記憶している人も多いのでは? 一見キャッチーに見えるモチーフ使いの作品の中にも、抑圧されたアメリカ文化の根源、権力や暴力の記号化などのメッセージが込められています。

2017年に誕生した現代美術館、ICA マイアミ(The Institute of Contemporary Art Miami)にて、有名なセラミック作品やキルト、ペインティングから、あまり知られていないドローイングやインスタレーションまで彼の20年以上に渡るキャリアを集約した、いろんなアプローチを知ることができます。

そして、1階では、Carlos Sandoval de Leonというアーティストによる、レンガ、土、古着、石鹸、防弾ガラス、ピッツァの箱、民芸品など様々なマテリアルを掛け合わせ、再利用、再構築した彫刻を陳列した巨大なインスタレーション展示。

作品本来の背景や意味を知らずとも、こういう組み合わせの妙がひかる作品は発見する面白さがありますが、実のところは、私たちを取り巻く製品主導型の文化、物質社会を通じて、消費者と生産者間の溝を探求し、裏側にある労働や社会経済の歪みを言及しているのだとか。

ICA MIAMI(The Institute of Contemporary Art Miami)

住所/61 NE 41st Street, Miami, FL33137
TEL/305-901-5272
https://icamiami.org/

ICA MIAMIの前に立つ、なにやらアーティスティックな建物は、立体駐車場。数人のアーティストの作品が壁面を飾っていますが、その中の1人には、日本でもおなじみのフランス人アーティスト、ニコラ・ビュフ(Nicolas Buffe)も。

7.3mのバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)の「フライズアイ・ドーム」と、藤本壮介のデザインによる青いガラスのファサードがシンボリックなパームコートへ。

広場に生えるパームツリーを見上げると、ピンクに染められたサイザル麻の可愛いナマケモノのファミリーの姿があちこちに!また木の下には、ハンモックが張られ、ナマケモノ気分で休憩することも。こちらは、Fernando Laposseの『PINK BEASTS』というパブリックアート作品。ここだけに止まらず、数千もの長いタッセルとナマケモノがエリア全体に点在しています。

アーティストであるFernandoの故郷メキシコをルーツにした作品で、マヤの伝統的な織物の村で暮らす、70名もの先住民族の女性たちとコラボレーションし、アガベから採取した繊維を、サボテンに寄生する虫を使ったナチュラルダイで、マイアミを象徴するピンク色に染め上げ、メキシコに古くから伝わる伝統素材と技術で制作したのだという。スローライフで賢いナマケモノの生態は今の世の中にインスピレーションを与えるに違いない?

PALM COURT

住所/140 NE 39th Street, Miami, FL 33137

ムーア・ビルの吹き抜けと共存する、Zaha Hadidの作品『ELASTIKA(2005)』
ムーア・ビルの吹き抜けと共存する、Zaha Hadidの作品『ELASTIKA(2005)』

ザハ・ハディッドの作品と一体化した空間も圧巻!
ガゴシアン&ジェフリー・ダイチの企画展

ムーアビルの吹き抜けにダイナミックかつ緊張感いっぱい張られたザハ・ハディッド(Zaha Hadid)の作品『ELASTIKA(2005)』も見ものだけど、ここを会場に開催されているのは「The Extreme Present」と題された、2大ギャラリストである、ガゴシアン(GAGOSIAN)とジェフリー・ダイチ(Jeffrey Deitch)による企画展。2015年に出版された、ダグラス・クープランド、ハンス・ウルリッヒ・オブリストらによる著書『The Age of Earthquakes: A Guide to the Extreme Present』にインスパイアされたもので、今回で5回目。

展示作品を通じて、メディア、コミュニケーション、一体感、孤立といった概念を探求するという内容。アンディ・ウォーホルから、エド・ルシャ、ハーモニー・コリン、ダミアン・ハースト、カースティン・ホラーなど錚々たる顔ぶれの作品群は、後から展示の意味を知ってなるほどと納得。もっとじっくり鑑賞すればよかった。

MOORE BUILDING

住所/191 NE 40th Street, Miami, FL33137

連日満員!予約の取りにくい、人気レストラン
ファレル・プロデュースの「Swan and Bar Bevy」

ランチには、あのファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)がマイアミのナイトライフの仕掛人、デヴィッド・グルットマン(David Grutman)と協業プロデュースした、ヒップなおしゃれレストラン「Swan and Bar Bevy」を訪問しました。ピンクとペパーミントグリーンを基調にした、マイアミ的なちょっとレトロでトロピカルムードの店内はとにかくおしゃれです。

お庭もグリーンいっぱいで、レストランに面した通りからは、生い茂るグリーンの壁で中を覗くことができません。さすが、セレブへの配慮も万全。料理は、イタリアンやらフレンチやらの創作フュージョン料理といった印象。でも料理がでてくる度に会話が生まれそうな、話題を提供してくれる、そんなメニューです。ちなみに私が訪問した際には、奥のシートに、ベラ・ハディッド様ご来店中でした。

Swan and Bar Bevy

住所/90 NE 39th Street, Miami, FL33137
TEL/305-704-0994
www.swanbevy.com/

まだまだたどり着けなかったアートスポットがたくさんあるマイアミ。デザイン・ディストリクトから南に下ると、グラフィティだらけの倉庫街エリア、ウィンウッド・ディストリクト(Wynwoods Walls District)に、グラフィティアート専門の美術館「Museum of Graffiti」もオープンしたり、ディオール(Dior)がメンズのフォール2020コレクションを発表したショー会場にもなった、ルーベルファミリーのコレクションによる「Rubell Museum」も新しく誕生。キース・ヘリング、クリスチャン・ボルタンスキー、マルレーネ・デュマス、アイウェイウェイから、草間彌生、村上隆、奈良美智まで、スター作家の作品が勢揃いしている。
他にも、ダウンタウンのウォーターフロントには、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計を手がけた「Pérez Art Museum Miami」まで、美術館巡りもいろいろできて、アート好きにはたまらない、何度でも訪れたい、そんな場所でした。

Photos&Edit&Text:Masumi Sasaki

Profile

佐々木真純Masumi Sasaki フリーランス・エディター、クリエイティブ・ディレクター。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツ、企画を手がけ、2019年に独立。現在も「東信のフラワーアート」の編集を担当するほか、エディトリアルからカタログ、広告、Web、SNSまで幅広く活動する、なんでも屋。特技は“カラオケ”。自宅エクササイズ器具には目がない。

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