Trip / Feature

アートなマイアミ訪問記 前編「アートバーゼルの自己流楽しみ方」

アメリカ・フロリダ州のマイアミを舞台に、毎年12月に開催される国際的なアートフェア「アートバーゼル」。その期間アート一色に染まる、マイアミの街を前後編の2回にわたりダイジェストでご案内。前編は、旅のメインイベント「アートバーゼル マイアミビーチ 2019」でお気に入りアートを発見!

マイアミビーチの海岸沿いのアール・デコ地区には、文字通りアール・デコ建築やグラフィックの看板が目を引く。
マイアミビーチの海岸沿いのアール・デコ地区には、文字通りアール・デコ建築やグラフィックの看板が目を引く。

アートバーゼルが開催される、12月5日から8日までの4日間を中心に前後数日間は、普段は太陽とビーチのご機嫌で陽気な街マイアミが、ラグジュアリーなアートとデザインで溢れる。初のマイアミ訪問ということで、どこまで常設でどこまで期間限定なのかはわからないものの、アートバーゼル、デザインマイアミの会場はもちろん、ラグジュアリーファッションのブティックでもアーティストとのコラボ作品を展示したり、ホテルやイベントスペースではポップアップのアート空間が登場し、さらにビーチや公園、街角でもパブリックアートなどとにかくたくさんの作品に出会える。

マイアミビーチのメインストリート、コリンズアベニュー。建物の上にも!
マイアミビーチのメインストリート、コリンズアベニュー。建物の上にも!

また、現代アートに特化した美術館が充実している点も魅力。期間中に新たにグラフィティ専門の美術館と、また一つ新しいコンテンポラリーアートギャラリーもオープンしたという(時間切れで、今回が訪問できず無念)。駆け足で訪問したマイアミビーチのアートバーゼルと、選りすぐりの現代美術館、「デザインディストリクト」エリアまで、アート三昧のマイアミ。まずは、マイアミビーチで、アートバーゼルとバス美術館、アール・デコの街並みを巡ります。

新鋭から大御所まで世界中のギャラリー&アートが集結。
「アートバーゼル・マイアミビーチ 2019」へ

マイアミビーチのコンベンションセンターにて開催されているのが、今回のアート巡りのメインイベントの一つでもある「アートバーゼル」。それはもう巨大すぎる会場に、細かくブースが仕切られており、世界中から200以上ギャラリーが参加し、各々のイチ押しアーティストたち総勢4000人以上の作品をお披露目しております。はっきり言って前情報も仕入れぬまま、不勉強のまま訪れてしまった私は、会場マップもギャラリーリストも全く目に入ってこず、もう感性の赴くまま(つまり適当に)入口から順に縦横無尽に歩くしかないという結論に至りました。

ということで、気の向くままに練り歩いて察知した、個人的に気になった作品をざざっと紹介します。

たまたまキャッチできた超巨匠ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)のシルクとコットンのコラージュ作品。グラフィカルな造形とカラーリングが素敵です。『Night and Day』(2007)

オーストリアを拠点にするガーナ出身のアーティストAmoako Boafoによるペイント『Black Diaspora』シリーズ。白、黄色といった単色の背景に浮き上がり、際立つ黒人たちのポートレートの美しさが印象的でした。

後述のバス美術館で再会することになるカラフルな彫刻は、Ugo Rondinone作の『Swiss,1964』。

メゾン・エルメスのギャラリーや日本の美術館でも個展を行うなど、日本でも知られる韓国の作家ス・ドホ(Do Ho Suh)の、半透明な布地を用いた浮遊感のあるバスタブ彫刻『Bathtub,Apartment A, 348 West 22nd Street, New York, NY10011,USA, 2013』。

ぱっと見のパステルトーンの色に惹かれたインスタレーション。ベルリンベースのアートデュオ、Elmgreen & Dragset『Before the Storm, 2019』
ぱっと見のパステルトーンの色に惹かれたインスタレーション。ベルリンベースのアートデュオ、Elmgreen & Dragset『Before the Storm, 2019』

前情報があると、つい知っていたり、有名だったりするアーティストや巨匠やレジェンドたちの作品を見にいきがちですが、この無謀な鑑賞法の唯一のメリットは、まさにこれからというアップカミングな作家や、本能的にキャッチした作品、好きな作風の作家に出会え、新たな発見があったこと(ぐらい)。下調べするに越したことはない、というのは間違いありません。

好き系作家シリーズ。Raymond Pettibonの『American』(1957)。
好き系作家シリーズ。Raymond Pettibonの『American』(1957)。

チケットは、1日兼、通し券、さらには向かいの特設会場で行われているデザインマイアミとのセット券などいくつかバリエーションがあります。結論から言うと、1日で、正確には半日で回ることは完全に不可能でした。よって教訓ですが、複数日のチケットを入手すること!

この投稿をInstagramで見る

We regret to inform you that ‘Comedian’ will be removed from our Art Basel Miami Beach booth for the last day of the fair, Sunday, December 8th. This morning, following recommendations, we removed the installation at 9am. We want to thank the organizers of the fair for their help and continued support. Art Basel collaboratively worked with us to station guards and create uniform lines. However, the installation caused several uncontrollable crowd movements and the placement of the work on our booth compromised the safety of the artwork around us, including that of our neighbors. ‘Comedian,’ with its simple composition, ultimately offered a complex reflection of ourselves. We would like to warmly thank all those who participated in this memorable adventure, as well as to our colleagues. We sincerely apologize to all the visitors of the fair who today will not be able to participate in ‘Comedian.’ — #cattelanbanana #artbaselmiamibeach #artbasel #mauriziocattelan #cattelan #perrotin

Perrotin Gallery(@galerieperrotin)がシェアした投稿 –

そして、開催中の最大のニュースと言えば、ペロタンの会場で展示され、なんと1,600万で売れた、あのマウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)による、本物のバナナをダクトテープで壁に貼りつけただけ!?の、なんとも大胆な作品『コメディアン』にまつわる事件かと思いますが、それには出会うことはできませんでした。もしかしたら、もう既に、事件後(例のアーティストに食されていた後)だったかもしれません……(笑)。合わせて、こちらのアカウント @cattelanbananaもぜひチェックを!


そのニュースを受けて、街中にも模倣アートが早くも登場! カテランバナナ現象が起こりつつある?

お気に入りアーティストのひとり、バーバラ・クルーガー(Barbara Kruger)も!しかも、カテランの作品が驚愕の高値で売れたのが話題だったこともあり、このフレーズがあまりにも的を得ていて。1987年の作品とは。

グラフィカルなモチーフや異素材ミックスのアートが好きという自分の本性に気づきがありました。

MARTHA TUTTLEの『Basin(2019)』『Arrangement 6(2019)』は、素敵なグレーのグラデーションのテキスタイルの組み合わせだなと思ってよく見ると、隙間に、水晶や石が埋め込まれてます。

DAVID BATCHELOR『My Own Private Bauhaus』。幾何学モチーフのカラーアクリルの板やかけらやガラスとコンクリートという組み合わせに一目惚れした、アブストラクトな彫刻。

ミニチュアの本がなんだか可愛い。Charles LeDray『Free Public Library』。背後は、コンセプチュアルアーティストMel Bochnerのペイント『Obliterate』

そして、くるくる回るという動きと、ガラス瓶と、アナログなシステムとの調和がお気に入り。実は日本人作家でした、AKI SASAMOTOの『Past in a future tense, Table1&2』

とにかく緻密で気が遠くなりそう。色とりどりの美しい天然石のビーズで作り上げられた、カビの生えたフルーツの山!は、女性彫刻家Kathleen Ryanによる『Pleasures Known(2019)』。実は、2×4メートル強という巨大な作品。

見た目のインパクト大の、Raúl de NievesCajsa von Zeipelのド派手でエキセントリックなコラボインスタレーション。気になり過ぎて後から調べたら、Raúl de Nieves は、マルチメディアアーティストであり、パフォーマーであり、ミュージシャンという多才な顔を持ち、過去にアートバーゼルでブルガリ(Bvlgari)とコラボしていたアーティストでした。

ブラジルのギャラリー「Galeria Marilia Razuk」がフィーチャーしていた、同じくブラジルのアーティストVanderlei Lopesの、この一見しなやかな新聞や雑誌は、実はブロンズ製。

まだまだたくさんありすぎて、もう紹介しきれない訳で、スター作家を抱える人気ギャラリーにもたどり着けず、唯一たどり着けたのが、ペースギャラリーとガゴシアンだけ、、。次に来るときは、初日は流し見、翌日はしっかり的を絞って見学、さらにデザインマイアミまでチェックする、少なくとも3日間は必要だと悟りました。

もっと詳しく見たいという人には、アートバーゼルのオフィシャルサイトに参加ギャラリーとアーティスト、作品情報がしっかり載ってますのでチェックしてみて! ちなみに、2020年度は、12月3日〜6日まで。

Art Basel Miami Beach 2019

会場/マイアミ・ビーチ・コンベンション・センター
住所/1901 Convention Center Dr, Miami Beach, FL33139
www.artbasel.com/miami-beach

アール・デコの歴史的な建物の上部に、掲げられている常設展示のネオンサインは、個人的にも好きな作家、Sylvie Fleuryの『ETERNITY NOW』。このETERNITYはあの書体だよね?
アール・デコの歴史的な建物の上部に、掲げられている常設展示のネオンサインは、個人的にも好きな作家、Sylvie Fleuryの『ETERNITY NOW』。このETERNITYはあの書体だよね?

アール・デコの歴史的建造物とコンテンポラリーアートの共存
The Bass Museum

1930年代に図書館兼アートセンターとして建設され、1964年にバス夫妻のプライベートコレクションを展示する美術館としてオープンした、The Bass Museum(バスミュージアム)。マイアミらしいアール・デコ建築が美しい歴史的建造物にも指定されている美術館で、しばらくリノベーションのため休館していたらしいですが、2017年秋にコンテンポラリーアートの美術館としてリニューアルオープン。

ロビーの壁一面に、世界各国の言葉で綴られた「ようこそ」のサインが点滅。PASCALE MARTHINE『WELCOME WALL』
ロビーの壁一面に、世界各国の言葉で綴られた「ようこそ」のサインが点滅。PASCALE MARTHINE『WELCOME WALL』

余談の豆知識ですが、こちらの素敵な建物は、マイアミビーチの開発者であり、ファミリーネームはメインストリートの名前にもなっている、ジョン・コリンズの孫ラッセル・パンコーストがデザインしたのだとか。2001年と今回、二度に渡る増築、改装は、日本人建築家・磯崎新が手がけている。ちょうど訪問時は、イタリア人作家LARA FAVARETTOの個展「BRIND SPOT」(2020年4/20まで)と、韓国人作家のHAEGUE YANG「IN THE CONE OF UNCERTAINTY」(同年4/5まで)が開催中でした。

大量生産され、日常で大量に消費される、缶詰の缶やトイレットペーパーに懐かしいハンドニットでドレスアップさせるという対比によって、メッセージを投げかかるHAEGUE YANGの『Can Cosies』『Roll Cosies』。


こちらもHAEGUE YANG。バウハウスのオスカー・シュレンマーによる「トリアディック・バレエ」にインスピレーションを得たという『Boxing Ballet』。全体に鈴がついているのでバレエ団たちが踊りだすとどんな鈴の音が響くのか、気になります。

展示ルームの空間に、互い違いに吊るされたベネチアンブラインドに反射し、透過し、変化する赤い色と光の動きのインスタレーション、HAEGUE YANG『Red Broken Moutainous Labyrinth』『Yearning Melancholy Red』(2008)。奥にはドラムセットが設置されゲストが自由に叩くことで、空間に響く音と振動で光の変化が生まれる。

色とりどりのカーウォッシュのブラシが絶え間なく交互に同時に回転し、背後のメタルの板ですり減っていくという、LARA FAVARETTO『Gummo』シリーズの彫刻インスタレーション。間を通る時、少しドキドキ。

天然パールのナチュラルなカラーのグラデーションが美しい作品は、Paola Pivi『Call Me Anything You Want』(2013)。

美術館の前の広場には、ランドマーク的な、Ugo Rondinoneによるカラフルな石を積み上げたような彫刻『MIAMI MOUNTAIN』がシンボリックに佇んでいます。

The Bass Museum

住所/2100 Collins Avenue, Miami Beach, FL33139
TEL/305-673-7530
https://thebass.org/

マイアミビーチのまさに海を臨む砂浜に登場した特設会場では「UNTITLED,ART」が開催されてました。もちろん残念ながら見られず。
マイアミビーチのまさに海を臨む砂浜に登場した特設会場では「UNTITLED,ART」が開催されてました。もちろん残念ながら見られず。

いわゆるアートバーゼル以外にも、マイアミビーチでは、いろんなところで、キュレーターチームやギャラリー主催のフェアなども開催されています。そんな現代アートのエキシビションの一方で、ビーチ沿いには古き良きアール・デコの建物が連なり、まるで映画のセットの世界に迷い込んだような気分が味わえます。

クラシックなホテルやショップの建築、ネオンサイン、看板のタイポグラフィもまた、私にとってはパブリックアートのように映りました。せっかくだからアール・デコ地区にある、可愛いプチホテル「The Marlin Hotel」に宿泊して、さらに酔いしれることにして、後編に続く。

Photos&Edit&Text:Masumi Sasaki

Profile

佐々木真純Masumi Sasaki フリーランス・エディター、クリエイティブ・ディレクター。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツ、企画を手がけ、2019年に独立。現在も「東信のフラワーアート」の編集を担当するほか、エディトリアルからカタログ、広告、Web、SNSまで幅広く活動する、なんでも屋。特技は“カラオケ”。自宅エクササイズ器具には目がない。

Recommended Post

Magazine

ec

JULY / AUGUST 2020 N°138

2020.5.28発売

Time is Precious

時間が教えてくれること

オンライン書店で購入する