Culture / Lifestyle

多様性が未来を変える vol.1「エンタメ界から見えてくる家族の未来の姿」

国籍も人種も宗教も、セクシュアリティだってさまざまだということを私たちは知っている。個々は多様だ。ではもっとも身近な家族など、コミュニティについてはどうだろう? 多様性を認め合う社会、その必要性と未来を考える。 第1回は「エンタメ界から見えてくる家族の未来の姿」。エンターテインメント界のクリエイターたち、そしてその作品はいつだって社会に疑問を投げかけ、私たちにさまざまな示唆を与えてくれる。映画ライター、よしひろまさみちが語る、いま映画が教えてくれること。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年1・2月合併号掲載)

Photo:Aflo
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不穏な空気が漂う今の世界を、明るい未来に変えるために必要なこと。それは多様性に寛容になること。人それぞれ、何もかもが違うのは当たり前なのに、なぜか同じ意見を求めたり、共感を求めたり。意見や共感は求めるものではなく、自分自身で考えるものだ。そういった思考が停止気味となり、安易に誰かの発言に乗っかることや、既存の考え方をキープしようとすることに、今の社会を生きる人々の問題がある。それを教えてくれるいい教材が映画だ。映画は時代を映す鏡。まさに今、多くの映画が「多様性を受け入れることこそが未来への扉」というメッセージを発している。それも世界を変えるほど壮大な物語ではなく、コミュニティの最小単位であり、多くの人にとってもっとも身近な「家族」の形にフィーチャーした作品が増えていることが興味深い。
 
家族を描いた映画・ドラマは数多く作られているが、家族=血縁関係によって結ばれた人々というのは、すでに古い考えとなりつつあることを示しているのが最近の傾向だ。これをトレンドと捉えるのはちょっと違う。実際のところ、血縁関係にこだわることなく、家族となっている人が増えているから。『マレフィセント2』で来日したアンジェリーナ・ジョリーが作品について語ったときに、自身の家族を彷彿とさせるコメントを発したことが話題となった。ご存じの通り、彼女の子どもたちは養子と実子がいるのだが、養子と実子を区別して語る必要があるのだろうか?

誰からみても彼らは「家族」であり、血縁関係に言及すること自体がナンセンス。彼女だけじゃない。マドンナ、ヒュー・ジャックマン、サンドラ・ブロックなどなども同じだし、リッキー・マーティンのように代理母の協力を得て子どもを迎える同性カップルも多い。それに、結婚にこだわることも古い考えだ。夫婦別姓で社会で活躍することが当たり前となっているだけに、婚姻関係を結ばずにいることだって選択肢の一つといえる。こういったことに反発する人の意見で共通しているのは「血縁こそすべて」という概念だ。だが、よく考えてほしい。そもそも結婚自体が血縁のない他人同士で行われることなのに、なぜ血縁にこだわるのか。また、血縁にこだわったところで、それは幸せにつながるのか。DVや虐待、育児放棄など、旧来の家族観の中で起きている問題が世界中で増え続けていることからも、家族の幸せが血縁にあるとは到底考えにくい。

そこに自然と切り込んでいくのが、映画やドラマをはじめとするエンターテインメントの役目でもある。今を切り取る、もしくは過去を描いてその反省をうながすことに、映像作品は強い力を持つ。ここで紹介する作品群だけでなく、近年の映画やドラマには、旧来の家族観にとらわれつつも違和感を抱く人に、そっと寄り添い、これからの方向性を示してくれる作品が多数散見される。これらを観ていると、固定観念にとらわれた狭い考え方こそが寛容さを失う原因であり、多様化していくコミュニティを受け入れることで、より強く明るい未来社会が訪れることに気づく。誰にとっても生きやすいカラフルな社会作りは、コミュニティの最小単位「家族」の変容を受け入れることから始めるべきだろう。

TOPIC 1

その一言が世論を変える。アンジーが牽引する家族観


アンジェリーナ・ジョリーが主演した『マレフィセント2』は、『眠れる森の美女』のアナザーストーリーだった前作の続編で、完全オリジナルの物語。眠りから覚めたオーロラ姫と、彼女のゴッドマザーであることが明かされたマレフィセントの関係と、オーロラの婚約者である隣国王子の一家の関係が好対照に描かれている。「家族は血縁関係にこだわることはない」とコメントしたアンジーの理念と完璧に合致したストーリー。まさに多様性は強し!

『マレフィセント2』

監督/ヨアヒム・ローニング
出演/アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、ミシェル・ファイファー
全国公開中 ©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

TOPIC 2

カンヌも社会問題として「家族」というテーマに注目

社会問題を鋭く切り取った作品に光を当てることで知られるカンヌ国際映画祭。最高賞であるパルムドールを昨年は『万引き家族』、今年は『パラサイト 半地下の家族』が制した。前者は血縁関係のない疑似家族、後者は2つの家族の格差を描いている。いずれも極端な設定ではあるものの、現実味ある部分も多々。2作とも「現代社会の闇」として捉えられているが、闇にこそスポットを当てて明るみへ、というカンヌの審美眼が顕著に現れた。

『万引き家族』


監督/是枝裕和
出演/リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林
通常盤DVD¥3,800 発売元/フジテレビジョン 販売元/ポニーキャニオン ©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

『パラサイト 半地下の家族』

監督/ポン・ジュノ
出演/ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク
2020年1/10(金)よりTOHO シネマズ日比谷ほか全国公開
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

TOPIC 3

価値観をアップデートしてくれる最新作が続々と登場

最新公開映画にも、古い概念を打ち破る家族映画が多数。複数の家族のうねるようなドラマを紡ぎ上げた『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』、貧困から脱しようともがく家族を描いた『家族を想うとき』、父の死をきっかけに血縁だけでない家族愛を再確認する『最初の晩餐』。どれも「今の家族観」を切り取り、多様な生き方があることを示す佳品。また、人気リアリティ番組の日本特別版、Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ in JAPAN!』では、今現在の日本に横たわる古い価値観を浮き彫りに。ファブ5によって心を開いていく人々を観ていると、さまざまな価値観を持つ人々へ寛容であることが必要、ということを可視化しているのが興味深い。

Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ in Japan!』独占配信中

シーズン1~4が独占配信中のNetflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ』の日本が舞台のスペシャルシーズン。水原希子と渡辺直美が登場。
出演/ボビー・バーク、 カラモ・ブラウン、 アントニ・ポロウスキ、ジョナサン・ヴァン・ネス、タン・フランス

『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

監督/ダン・フォーゲルマン
出演/オスカー・アイザック、オリヴィア・ワイルド
全国公開中 © 2018 FULLCIRCLE PRODUCTIONS, LLC, NOSTROMO PICTURES, S.L. and LIFE ITSELF AIE. ALL RIGHTS RESERVED.

『最初の晩餐』

監督/常盤司郎 出演/染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏
全国公開中 ©2019「最初の晩餐」製作委員会

『家族を想うとき』

監督/ケン・ローチ
出演/クリス・ヒッチェンズ、デビー・ハニーウッド
12/13(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019

多様性が未来を変える

Text:Masamichi Yoshihiro Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara

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JANUARY / FEBRUARY 2022 N°153

2021.11.27発売

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