あの人がナビゲートする、知る喜び vol.2 モデル | Numero TOKYO
Culture / Feature

あの人がナビゲートする、知る喜び vol.2 モデル

「それ、いいね!」という言葉が飛び出すのは、知らないことを知ったとき。その道のプロでもファンとしてでも、時代の空気感を敏感に、意識的にキャッチしている人たちに聞いた、知ってうれしい深堀りカルチャーあれこれ。vol.2は、フォトグラファー・鈴木親が注目する「モデル」。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年12月号掲載)

インスタで流行らないような人に注目

「惹かれるのは、撮影をこなしているけど売れていなかったり、目立たないタイプのモデル。誰が見てもいい容姿で目立つ人は、事務所もプッシュするので順当に売れます。日本でオーディションをすると欠点を探して選ぶことが多く、残るのは平均的な美の基準を満たす凡庸な人になる傾向がある。ヨーロッパはインパクトありきで探すので、違和感を感じるようなユニークさが好まれる場面が多いですね。また、被写体とのつながりが大事だと考えているので、売れる前のフラットな状態で知り合うこともポイント。何年も時間をかけて撮影を繰り返し、関係性は紡いでいくものだと思っています。縁で出会うことがほとんどなので、背景にあるストーリーは欠かせない。ルックスだけで撮りたいと思うことはまずないですね。それから、女優やモデルでセルフプロデュース能力に長けすぎていると、スタイリングがはまらないことも。振り幅があるほうが服を着たときの発見があり、いい絵になることが多いです」

自分の良さを知らないことが強み

内藤晶水(ないとう・あきみ)/モデル

モデル事務所サトルジャパン所属。トーガ×アウトドアプロダクツのルックやフランスのランジェリーブランド、ヤスミンエスラミのヴィジュアル撮影に起用した。「本人がコスプレ好きというミスマッチを生かすキャスティングをあえてしました。その落差みたいなものがファッションを撮影する上でいい作用をもたらし、モデルとしての伸びしろを感じます」

人並み外れたルックスと存在感

UTA(うた)/モデル

2019年SS、コム・ デ ギャルソンのランウェイでデビュー。「190cm近い身長とバスケットボールで鍛えた身体で、エルメスのようなメゾンブランドのルックも完璧に着こなせます。ビッグサイズの洋服に頼らずにジャストサイズで着られるので、外国人のモデルと並んでも問題なし。小さい頃から知っているので、まるで息子のように可愛がっています」

インパクトも実力も運もある

紅甘(ぐあま)/女優・モデル(現在休業中)

「生まれながらに持っている雰囲気に、内田也哉子や安藤サクラと通じるものがあると思いました。被写体としてただ美しいというより、独特な個性があって面白い。人とのつながりや育った環境など、女優としての運も持ち合わせている。インスタのフォロワーがそんなに増えないのも、消費されないという意味では強み。文章を書くことにも才能があるので注目しています」

ナードな風貌で異彩を放つ

dodo(どーどー)/ラッパー

高校生ラップ選手権で活動をスタートさせ、長い沈黙の後2017年にデジタルでEPをリリース。すべて楽曲は自室で作成するなど独自のスタイルで注目を集める。「前情報なしに雑誌『Ollie(オーリー)』のカバー撮影で出会い、本人の風貌と描く絵に故ダニエル・ジョンストンに通じるものがあると思いました。音もとても良く、ラッパーのKOHHも注目していて、もしかすると楽曲を提供するなんてこともあるかも」

あの人がナビゲートする、知る喜び

Photos:Chikashi Suzuki Interview & Text:Aika Kawada Illustrations:Kaoll Edit:Chiho Inoue, Sayaka Ito, Mariko Kimbara

Profile

鈴木親Chikashi Suzuki フォトグラファー。1972年生まれ。96年に渡仏し、雑誌『Purple』で写真家としてのキャリアをスタート。ほかに『i - D』( 英)、『Dazed & Confused』(英)、『GQ』(日)など国内外の雑誌で活動。イッセイ ミヤケ、ユナイテッドバンブー、トーガなどのワールドキャンペーンも手がける。

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