ヒストリーがあるから面白い、香水物語 | Numero TOKYO
Beauty / Feature

ヒストリーがあるから面白い、香水物語

「あの香りはなんだろう?」センスにあふれたユニークな香水は、ニッチフレグランスである場合が多い。本物志向の違いがわかる人たちに愛されるパフューマリーをその歴史とともにご紹介。創業者や調香師たちの想いが紡ぎ出す香水物語。心地よく。ときにはマニアックに香りの世界に心奪われて。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2018年1・2月号掲載

THE DIFFERENT COMPANY 21世紀の真のラグジュアリーを提供するために、世界的に著名な調香師ジャン・クロード・エレナが設立したブランド。「ユニークな香りと特別なパッケージ」という精神のもと、妥協のないフレグランスを次々と生み出してきた。ジャン・クロード・エレナの娘であるセリーヌ・エレナをはじめ、ベルトラン・ドゥショフールやクリスティーヌ・ナジェル、エミリー・コッパーマンなど数々の才能ある調香師へ自由な創作を託し、最高品質の天然香料を駆使して、他にはないユニークでエレガントな香水を誕生させている。 「レスプリ コロン」の最新作を手がけたのは、女性調香師エミリー・コッパーマン。マダガスカル島への彼女自身の香りの旅から生まれたフロリエンタルな香調。マダガスカル産のブルボンバニラにジンジャーなどのスパイスをアクセントとし、ベルガモット、ネロリ、オーキッドなど魅惑的な花々の香りが柔らかく広がる。レスプリ コロン マジャイナシンオードパルファン[100ml]¥21,000/The Different Company(フォルテ) DAWN PERFUME 画家からパフューマーに転身したダウン・M・スペンサー・ヒュウィッツと、香りのスタイリスト・杏喜子さんの2人の女性により生まれた香水ブランド。天然香料を80%使用。そのセンス良くブレンドされた芳香成分が織りなす、とても複雑で繊細な香りが魅力。杏さんによる”SMELL & TELL”という香りのコンサルテーションは、まず自分の”スキンタイプ”を知り、素肌と相性が良い香りをアドバイス。肌を嗅ぎながら、占い師のようにクライアントの性格や心の変化などを言い当てるカウンセリングにファンが多い。 インドのタージ・マハル宮殿の前に広がる庭園をイメージした新作。インドの神々が花飾りとしても好むマリーゴールドがエネルギッシュに放つ光が、ケールやベルガモットの力強いグリーンに彩られ、祝福に満ちた生き生きとした香り。いつも見ている日常の景色が、無限の光に包まれていることに気づくように願いを込めて作られた。オードパルファム タージガーデン[30ml]¥10,500/Dawn Perfume(デュード) FLORIS 創業者のジュアン・ファメニアス・フローリスが故郷のメノルカ島からロンドンへ渡り、ジャーミンストリート89番地で英国紳士のための理髪店を1730年に開店。生まれ育った地中海の芳しいアロマが忘れられず、お店の地下で香水の調合をスタートし、彼の生み出す石鹸やフレグランスがたちまち話題に。歴代の国王や女王からも愛用され、エリザベス2世女王陛下から「王室御用達許可書」を与えられたほか、フローレンス・ナイチンゲールのために調合した香水もあるほど、歴史的人物から愛され続けるブランド。 クラシックなシプレをモダンに解釈した現代女性のための香り。煌めくようなベルガモットのトップに始まり、クリーミィなオレンジフラワー、芳醇なジャスミン、ローズのミドルノートから、温かみのあるムスクやバニラ、パチュリが包み込む。素肌との相性が抜群の香りだから、香りのランジェリーのように軽やかに肌に纏って。FL オードトワレ シプレ[30ml]¥16,000/Floris(ハウス オブ ローゼ)

FUEGUIA 1833

アーティスト、弦楽制作家、デザイナーの顔を持つ調香師のジュリアン・べデルが、フレグランスに文化的なアイデンティティが欠如していることに気づき、愛する詩やタンゴなどの世界を、パタゴニアの豊かな植物の香りによって表現したいと考え、2010年に創業されたブランド。毎年、新たな芳香植物や薬用植物を探して、ジュリアン自身が南米各地を巡り、前例のない植物も積極的に取り入れて、独創的な香りを作り出している。彼の調香する香水は、纏う人の肌に応じて香りが変化し、唯一無二の物語を紡ぎ始める。

”個々の肌が持つ香り”の個性を、その香りを構成する分子を揮発させることで引き出すために、催淫効果があるとされるアンデスやアマゾンの植物から採取した、香りを持たない揮発分子で作った香水。つまり、「アンチ・パルファン」をコンセプトにした新発想のフレグランス。究極の”個”を引き立てる香りに。ムスカラ フェロ ジェイ[100ml]¥31,000/Fueguia 1833(フエギア 1833 東京本店)

ROGER & GALLET

1862年にパリで誕生したロジェ・ガレは、ナポレオンやその妻、ジョセフィーヌ、ヴィクトリア女王などを魅了してきた歴史あるブランド。18種類の植物を蒸留して得られるエッセンシャルオイル「アクアミラビス」は、素晴らしい芳香だけでなく、伝染病の予防や傷のケアなど当時は”万能薬”として重宝された。生誕155周年の今年、ロジェ・ガレのルーツであるオーデコロンをアルベルト・モリヤスはじめとする著名なパフューマーたちが現代風にアレンジした5種類の「エクストレド コロン」が発売された。

(左)調香師はジュリエット・カラグゾグル。もぎたての爽快なヴァーベナと官能性が同居して。エクストレド コロン ヴァーベナユートピア

(右)アルベルト・モリヤスが手がけたフレグランス。自然由来成分90%。スモーキーな紅茶にベルガモットやサンダルウッド、ベンゾインの神秘的なウッディが絡み合って異国情緒な物語へといざなう。同 テ ファンタジー[各100ml]各¥8,000/Roger & Gallet(ロジェ・ガレ)

LE GALION

ナポレオンの血を引くプリンス ミュラによって、1930年にパリに誕生。5年後、20世紀で最も秀でたパフューマーと言われたポール・ヴァシェールがオーナーとなり、メゾンの明るい未来は約束された。翌年発売した香水「ソルティレージュ」が大ヒット。また、ポールが「ミス・ディオール」に調香師として携わったことで、ブランドとしての地位が不動のものとなる。しかしその後…1980年、ブランドの名は香水史から消えることに。2014年に新オーナーの手により見事に復刻を遂げ、タイムレスな香水として再び脚光を浴びる。

(左)1937年に作られたシングルフローラルノートは極めてモダンな香り。ほのかなイリスの香りは、フレンチシックとナチュラルなエレガンスを体現。イリス オーデパルファム

(右)ブリジット・バルドー、マリリン・モンローが愛した伝説の香りは、ミステリアスなフローラル アルデヒドノート。ソルティレージュ 同[各100ml]各¥18,500/Le Galion(インターモード川辺 フレグランス本部)

ACQUA DI PARMA

1916年にイタリアの小さな工房で誕生した「コロニア」は、顧客の元へ出荷される直前のスーツに「メンズスーツにエレガントさを加える最後のエッセンス」として、多くの高級ブランドで使用され成功をつかんだ。ブランド名の「アクア ディ パルマ」は、初めてのフレグランス「コロニア オーデコロン」とパルマの街に由来している。1940年代には、ハンフリー・ボガードやオードリー・ヘップバーンなどの錚々たるスターから愛され、彼らがインフルエンサーとなりアメリカをはじめ世界的に絶大な人気を得るようになった。

(左)1916年のブランド設立時に生まれた香水は、イタリアンエレガンスを体現し話題に。高価なテイラーメードスーツに気品というファイナルタッチを加えるために使用された。コロニア オーデコロン[50ml]¥13,500

(右)イリスを中心とした柔らかなフローラルシプレの香り。イリスノービレ オーデパルファム[50ml]¥16,500/Acqua Di Parma(インターモード川辺 フレグランス本部)

Cutout Photos : Yuji Namba Edit & Text : Hisako Yamazaki

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