松尾貴史が選ぶ今月の映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』 | Numero TOKYO
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松尾貴史が選ぶ今月の映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』

© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ロンドンの高級テーラーという表の顔を持つ、世界最強のスパイ機関を描いた『キングスマン』の大ヒットから2年。新キャラクターを迎えて進化した新作『キングスマン:ゴールデン・サークル』の見どころを松尾貴史が語る。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年1・2月合併号掲載)

再び「面白すぎてひっくり返った」傑作  前作の『キングスマン』を見たときに、私はこの欄で「面白すぎてひっくり返りました」と書きましたが、今回も同じ気分です。前作がすごかったので今度は少々のことでは驚かないよ、という気分で鑑賞しましたが、ここまでしてくれれば何も言うことはありません。息をもつかせぬ矢継ぎ早の乱暴な面白さはさらにパワーアップ(何という陳腐な表現でしょう)、「そんなアホな!」と突っ込む余裕すらありませんでした。ここまで乱暴なのに緻密で針の穴を通すようなアクロバティックなアクションとアイデア、言葉遊び、秘密兵器の数々。

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 今回はイギリスのキングスマンに対抗する形で、アメリカのステイツマンという集団が登場します。いかにもアメリカらしくというか、泥臭い西部劇的な世界観で構成されています。なるほど、イギリスは「UK」ユナイテッド・キングダム、アメリカは「US」ユナイテッド・ステイツ、ですね。京都と大阪(狭!)のような、わかりやすいキャラクターのコントラストです。もちろん、この作品だけを見ても十二分に楽しめますが、継続するストーリーには『スター・ウォーズ』シリーズを思わせる継続した状況をも大切にしています。そして前作を見たことが、この新作に対して何らハードルを上げていないことも実感できます。

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 狡猾で残虐な悪人から人類の運命を質にとった法外な要求を受けて、そこを正義の味方が解決に向かうという、かの『スーパーマン』の時代からの古典的な設定に、ここまで斬新な興奮をもらえることに驚くばかりです。今回はロンドンからケンタッキー、イタリア、そしてカンボジアへ。極端な環境のバラエティにも飽きません。
 ジュリアン・ムーアのノリの脳天気な残忍さにいちいち縮みあがります。あの機械の「あれ」だけは思わず目を閉じてしまいましたが、あえてコミカルに処理してくれているので何とか持ちこたえました。ハル・ベリーの絶対の安心感も素晴らしい。そして、コリン・ファース、ジェフ・ブリッジスと、主要なキャストにアカデミー賞俳優が4人集結していることも注目です。設定自体が荒唐無稽で突飛なのですが、そこで名演技が説得力を持たせてくれるのですね。滑稽とも思える、映画の中での設定が、現実とリンクしている部分も感じました。

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  そして、これまたご覧になる前に過度のそれをあれしても何ですのでこれまた語れませんが、エルトン・ジョンのこのような姿を拝見できて、熱烈な彼のファンでなくとも得難い経験です。それだけでもう木戸銭の価値はあろうというものです。もちろん、劇場の大スクリーンでご覧になるのをお勧めします!!


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『キングスマン:ゴールデン・サークル』
監督/マシュー・ヴォーン 
出演/タロン・エガートン、ジュリアン・ムーア、コリン・ファース、マーク・ストロング、ハル・ベリー
2018年1月5日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
URL/http://www.foxmovies-jp.com/kingsman/

© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

Text:Takashi Matsuo

Profile

松尾貴史(Takashi Matsuo) 1960年5月11日生まれ。兵庫県神戸市出身。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業。俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広い分野で活躍。カレー店「般°若」(パンニャ)店主。著書にPHP新書『なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門』等多数。最新刊は『東京くねくね』(東京新聞出版局)。

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