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松尾貴史が説く!話題の映画『ブレードランナー 2049』

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1982 年に公開され、SF映画の金字塔として語り継がれる、あの衝撃作『ブレードランナー』から35年。その続編『ブレードランナー 2049』が、とうとう先週10月27日(金)にロードショーとなった。本作を待ち望んでいた一人であり、小誌にて映画コラムを連載中の松尾貴史がおすすめする『ブレードランナー 2049』の見どころとは?

Text:Takashi Matsuo


『ブレードランナー』30周年に公開されたオリジナルのトレーラー映像。

 もうずっと諦めていたのです。
 オリジナルの『ブレードランナー』を見たときの興奮は、すこぶる強烈なものでした。設定や物語の面白さは言うに及ばず、画面からめまぐるしく飛び込んでくる、それまで見たこともなかった世界観とムード、そこにある「統制された混沌」の強かさに舌を巻き、「あの作品が好きだ」というだけの条件で友達になれるような日々が思い出されます。友人の映像作家は、作品に登場する会社名を自身の社名に命名して、無意味に羨ましがったものです。
 もちろん、続編の登場を心待ちにしていた時期もありましたが、いつしかそれも意識しないまでに時が過ぎ去りました。最初に日本で公開されてから、なんと日本の総理大臣は19回も変わっているのです。

BLADE RUNNER 2049

 この『ブレードランナー2049』というタイトルをトレイラーで目にした時には、もう無条件で喝采を贈ろうと思いました。よしんば、それがどんな駄作であってもです。35年前の強烈な印象を想起させてくれるだけでも御の字だと思ったのです。ずっと諦めていたのですから。この時をどれほど夢想したか。ありがとう、これが成立するのに35年かかりましたか、よく頑張りましたね。いや、ずっと作業をしていたわけではないでしょう、監督はあの頃14歳です。

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 はたして、試写で皆様に先んじて『ブレードランナー 2049』を拝見しました。物語の中でも、もちろん時間は進んでいたようです。オリジナルの設定は、現時点での再来年です。あと2年であんなになるのかという野暮な言い草はしますまい。そうです、映画の中の世界は、82年版『ブレードランナー』に繋がっているパラレル・ワールドなのです。さらなる「32年後」の「2049」における世界は、輪をかけて衝撃的な社会になっていました。

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ネタバレになるのは本意ではありませんので具体的には書きませんが、私たちは1シーンごとに慣れない哲学をすることになります。生命とは、心とは、知能とは、感情とは。60年以上も前に手塚治虫が提起した命題が、ここでも掘り下げられ続けているのです。普段使わない脳の部位を駆使する時間が、何と濃密で充実したものであることか。試写室から出て来る時の、他の人たちが最初に漏らす感想の多くは、「長い」でした。そう、2時間45分、確かに長尺です。しかし、その感想を言う時の皆さんの顔は非常に嬉しそうで、その長さにも満足している様子でした。そうなのです、後半に進むに従って、「終わらないでほしい」と言う気分になってくるのです。

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 映画館で再度観ようと思いますが、その時は売店でウイスキーを販売してほしいなあ。ちびりちびり舐めながら観たい。そんな気分なのです。

『ブレードランナー 2049』
製作総指揮/リドリー・スコット
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト、ジャレッド・レトー他
丸の内ピカデリーほか全国公開中
URL/www.bladerunner2049.jp/

Profile

松尾貴史(Takashi Matsuo) 1960年5月11日生まれ。兵庫県神戸市出身。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業。俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広い分野で活躍。カレー店「般°若」(パンニャ)店主。著書にPHP新書『なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門』等多数。最新刊は『東京くねくね』(東京新聞出版局)。

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