女性のアンダーケア事情 Vol.1粘液力=妊娠力。自分の膣に関心を持つ大切さ
朝晩のスキンケア同様に、実はデリケートゾーンも毎日のケアが必要。それは女性としての性を大切にすることであり、もっとも重要なエイジングケアでもある。そこで、“粘液美容”を提唱する植物療法士の森田敦子さんに、膣と女性の健康に関して伺う。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2014年9月号掲載)
粘液美容=デリケートゾーンのケア
1992〜97年まで、国立パリ13大学・医薬学部にて薬草学(フィトテラピー)を勉強しました。日本では不妊症、月経痛、子宮筋腫などで初めて婦人科へ行く人も多いのですが、フランスでは“マイ”婦人科を思春期より持ち、日頃から女性ホルモンを整えるセルフケアを行っています。私自身、20代の頃に「子どもはできないでしょう」と医者に宣告され、38歳あたりから女性ホルモンの数値を戻そうと努力し、粘膜液が正常に出る健康な体になったら、40代半ばで子どもを授かり、粘液の力を身をもって実感したのです。
例えば、目にゴミが入ったり、風邪の菌などが体内に入った場合、涙や鼻水となって異物や汚れを体から外へ出そうとしますよね。これが粘液の働き。つまり、「粘液が出る=免疫力がある」ということ。膣粘液は、子宮の中の不純物やセックス時に入ってしまったウイルスなどの異物を出すという働きがあり、しっかりとたっぷり体の中から出すことができる人が、免疫力の高い人なのです。
また粘度が高いと、精子をちゃんと包み込んで、奥まで引き込めるから妊娠しやすい体へ。膣粘液が乾燥しやすい=体内の老化が進んでいるということ。髪の毛も薄くなり、白髪も増えてきてしまう。日本では「雑菌が入るから、膣に手を入れてはいけない」と教えられますが、日々の膣粘液の状態をデリケートゾーンのケアで毎日セルフチェックしていただきたい。
女性のサイクルと膣のケア
日本では、40代でまるで女が終わっているように考えられ、日本の女性はその頃からセックスレスに。一方、フランスではパリ・プランタンの夏の催事で、水着と一緒に女性のためのバイブレーターが売られていたり。膣粘液が高くなれば、感度が上がることをしっかり知っている。フランス人は、センシュアリティを科学として捉えているんです。日本は品がないと思われてクローズする国だから、デリケートゾーンに関して、30年は遅れていますよね。私の仕事のパートナーであるフランス人の産婦人科の教授のお母様は現在80代後半。旦那様に先立たれた後、音楽会で偶然隣になった16歳年下の男性と恋に落ち、現在も恋愛を楽しんでいます。日本では60代にもなってしまうと、パリパリに乾燥して異性に見せられない膣になる女性が多いですが、フランスでは80歳になってもプリッとしている。アンダーヘアをきちんと処理し、膣周りにクリームを塗って毎日ケアし、ぎゅっと力を入れて骨盤底筋のトレーニングをしているから。だからいくつになっても自信を持って、年齢を問わず恋ができるんです。
「女性は子宮で考える」と言われますが、フランス女性は生きる感覚をまさに膣で捉えている。排卵時はデートをせず、自分磨きの時間に。排卵前のエストロゲンが放出される時期は、膣粘液がしっかり出るときだからデートをする。排卵後は、プロゲステロンが出てイライラしたりするから、チェストベリーやメリッサ、オメガ3などを積極的に摂り、エストロゲンをより増やし粘液力を高めるトリプトファン、ブロッコリースプラウトや乾燥ナッツを食べて、次の排卵時に最もよい状態の膣粘液が出るように準備するのです。
完璧な粘液とは、快感時にしっかりとした粘り気を持つもの。排卵が起こると、「丈夫で上質な精子を体内に入れる」という指令が働き、いかに異性を惹き付けて、自分の粘液をしっかり出して精子を入れ込むかという準備をDNAレベルで行っているのです。粘液が出ないということは、栄養が足りていないということ。膣からしっかり粘液が出ると、究極のセックス“オキシトシン・セックス”ができます。オキシトシンとは別名“ハッピーホルモン”と呼ばれ、出産時に得られるものですが、セックス時の快感によって出産時以上のオキシトシンが最高の粘液が出ると放出され、深いエクスタシーを感じ、幸福感が得られるのです。
妊娠力が高い、美しい女性であるために
粘液=免疫力と言いましたが、目や口が乾きやすい人は、白髪が増えたり、病気になりやすいのです。低体温であったり、冷えがあると、粘液が出にくくなり免疫力が低下し、当然、赤ちゃんも生まれにくい体質へ。元気でアグレッシブな人は、体温が高く、免疫力も高いからエネルギッシュなのですよね。やはり自分自身の女性性と体の健康を毎日のデリケートゾーンのケアを通して、しっかり捉えてほしいです。頭を洗うときはシャンプーを使うように、膣を洗うときは、デリケートゾーン専用のソープを。デリケートゾーンはムレて雑菌が繁殖しやすく、匂いやかゆみの原因になるから、毎日洗って清潔に保つことが大切。専用ソープをたっぷり泡立てて、優しく洗います。膣周辺は指の腹を使ってなでるように、Iゾーンもちゃんと指で優しく洗ってください。排卵前と生理前では膣の形状が異なるので、毎日しっかりケアすることで、自分の体の変化にも気付くことができるのです。
また、生理の終わりかけはビデを使って、黒くこびり付いた経血をしっかり出して。薬局で売られているビデは、厚生労働省で承認された安全な医薬品だから、精製水で膣の中をキレイに安心して洗うことができます。これを出さずに、生理の最後の経血が逆流してしまうと、外に出るべきものが膣内のひだに溜まって雑菌が繁殖し、婦人科系のトラブルの原因になる可能性も。生理の血をしっかり見て、匂いを嗅ぐことも自分自身の体を知る上で必要不可欠です。正しく洗って保湿をすれば、素肌がそうであるように、ハリのあるつややかな肌が保てます。
デリケートゾーン専用スキンケア
(左から)フィトテラピー理論をベースにオーガニック原料を配合して作られたシリーズ。弱酸性のデリケートゾーンの水溶脂質バランスを守り、pHを合わせることで刺激を与えないように作られたデリケートゾーン用洗浄ソープ。常在菌や潤いをキープしたまま、匂いやムレをすっきり洗い上げる。ローズマリー、ラベンダー、オレンジ、レモンを配合。アンティーム フェミニン ウォッシュ[100ml]¥2,000
ショーツとの摩擦によって黒ずんだVラインや、乳輪の黒ずみまでケアできる保湿&美白クリーム。オリーブオイルから抽出したナチュラルな原料が、皮膚に栄養を与え潤いを強化。海藻、セージ、レモン、甘草、ケーパーベリーが美白効果を発揮。オーガニック原料にこだわったから、安心して膣周辺もケアできる。弾力が出てプリッとした質感へ。アンティーム ホワイト クリーム[100ml]¥2,000
ローズの香りがリラックスと心地よさをもたらす、女性に優しいラブローション。オーガニック原料にこだわり、香りも食用香料を採用するなど、口のなかに入っても安全な処方に。トロトロの質感で、使用後は植物の保湿成分で膣をしっとり保つ。ボディローションとしても◎。アンティームローズ ローション[100ml]¥3,000/すべてIntime Organic by Le Bois(サンルイ・インターナッショナル)
粘膜美容をサポートする自宅でのハーブケア
ハーブから抽出した濃縮エキス。メリッサ(レモンバーム)は月経痛やPMS、ホルモンバランスの乱れを整え、胃腸の働きを整え、消化不良や頭痛、不眠、不安を和らげる作用がある。タンチュメール メリッサ[250ml]¥5,000
(左上から時計回りに)ホルモンバランスを整える、ブレンドされた薬草茶。「フランスではこれを飲んで、妊娠の準備をする女性も多く、まさに女性の免疫力を高めるハーブケア」(森田)。ブレンドティザンヌ フォーウーマン[100g]¥3,000
ホルモン分泌調整作用のあるハーブ「チェストベリー」のハーブティ。生理痛、PMS、月経不順、無月経、更年期障害に作用する、女子のためのメディカルハーブ。シングルティザンヌ チェストベリー[100g]¥2,600
長寿のハーブとしてヨーロッパで知られ、ストレスを緩和し気分を高める。女性のリズムや心の不調も穏やかに整えるハーブ「メリッサ」の薬草茶。妊活のサポートにも◎。シングルティザンヌメリッサ[100g]¥2,600
安産のためのお茶として出産準備に古くからヨーロッパで使用されたお茶。粘膜を強化し、粘液力アップ! シングルティザンヌ ラズベリーリーフ[100g]¥2,600/すべてCosmekitchen Herboristerie(コスメキッチン)
森田敦子(Atsuko Morita)
植物療法士。大学卒業後、念願だった客室乗務員の仕事に就くも、清掃時の埃によるダストアレルギーで気管支喘息を発病。副作用を繰り返すケミカルな強い薬に限界を感じたときに、植物療法(フィトテラピー)に出合う。航空会社を退職し渡仏。4年間滞在し、フランス国立パリ13大学にて薬理効果を持つ植物をどう利用するかを探る植物薬理学を本格的に学ぶ。帰国後1988年に、植物療法に基づいた商品とサービスを提供する「サンルイ・インターナッショナル」を立ち上げる。2003年には日本バイオベンチャー大賞近畿バイオインダストリー振興会議賞受賞。06年には東京・表参道ヒルズに「エルボリステリア&メディカル フィトテラピー スパ ルボア」を展開。中目黒にAMPP認定・植物療法専門学校「ルボア フィトテラピースクール」を主宰。 www.leboistokyo.com
Illustration : Emma Mori Cutout
Photos : Yuji Namba
Edit & Text : Hisako Yamazaki