あの人がナビゲートする、知る喜び vol.6 少年マンガ
「それ、いいね!」という言葉が飛び出すのは、知らないことを知ったとき。その道のプロでもファンとしてでも、時代の空気感を敏感に、意識的にキャッチしている人たちに聞いた、知ってうれしい深堀りカルチャーあれこれ。vol.6は、ビューティライターAYANAがおすすめする「少年マンガ」。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年12月号掲載)
女性にも伝えたい! 少年マンガの魅力
「夢とか仲間とか冒険とか。逆境とか天才とか戦いとか。少年マンガには男子が憧れを抱く要素が詰まっているものですが、それは結構、私たち人間が生きていくために必要な情熱そのものであるというか。ファンタジーからスポ根までその題材自体はさまざまで、現実的ではないものも多いけれど、実生活に役立つなんらかの教えを必ずくれるし、『おまえ、本気で生きてるか?』とビシバシ問いかけてくる。その熱い感じがとっても好きです。そもそもマンガという表現自体ほぼフィクションの世界であり、人間の願望や夢が詰まっているものですが、“幸せ”を問うのが少女マンガなら、“美学”を問うのが少年マンガ。主人公やその仲間たちはもちろん、敵キャラにも美学があるし、眩しい光や成長のかっこよさだけでなく、ダークサイドのかっこよさ、負けることのかっこよさをも示してくれるんですよね。落ち込んだとき、迷ったとき、何かを見失ったとき、ページを開くのはいつだって少年マンガです」薙刀に青春をかける女の子たちが眩しい!
『あさひなぐ』
こざき亜衣(小学館) 文化部出身の運動音痴なメガネっ子・東島旭が、高校でひょんなことから薙刀部に入部し、周りの仲間たちとともに成長していく……という汗と涙の王道オブ王道スポ根ストーリー。勝負に、自分自身に、真剣に向き合うことの美しさと強さを教えてくれます。女性版スラムダンクと言っても過言ではない、かも。破天荒なミナレにどこまでもついていきたい
『波よ聞いてくれ』
沙村広明(講談社)
札幌のスープカレー屋で働く鼓田ミナレが、突然深夜のラジオDJになってしまう話。宗教団体に監禁されたり、オカルトなリスナー宅を訪問したり、ミナレの行き当たりばったりの性格と天才的アドリブ能力がもたらす展開にしびれます。エログロ・バイオレンスといえばの沙村先生ですが、ギャグセンスも天下一品。細かいセリフもすべて面白いので見逃すなかれ。
武将の数だけ美学あり。言わずと知れた名作
『キングダム』
原泰久(集英社)
春秋戦国時代の中国で、天下の大将軍を目指す少年の信と、後に始皇帝となる若き秦王の贏えいせい政が親友となり、王座奪還から中華統一を目指していくという、史実とフィクションを織り交ぜて描かれる壮大なストーリー。とにかく登場人物がみんな(女であっても)男前。それぞれの使命を胸に抱き、極限で命を燃やすさまがかっこいいです。人間力とは何かを学べるマンガ。
仲間×戦い×成長。興奮し通しの大河もの
『アルスラーン戦記』
漫画/荒川弘 原作/田中芳樹(講談社)
同名のファンタジー小説を『鋼の錬金術師』の荒川弘先生が漫画化。14歳の王太子アルスラーンが、侵略により奪われた王国パルスを奪還していくストーリー。心優しいアルスラーンと、そんな彼に惹かれ集っていく有能な忠臣たちによる戦隊の活躍っぷりがあざやか! 「チーム」って少年マンガの醍醐味ですよね。