Culture / Post

あの人がナビゲートする、知る喜び vol.4 ミュージック

「それ、いいね!」という言葉が飛び出すのは、知らないことを知ったとき。その道のプロでもファンとしてでも、時代の空気感を敏感に、意識的にキャッチしている人たちに聞いた、知ってうれしい深堀りカルチャーあれこれ。vol.4は、WAVE/MISTERGENTLEMAN/PARIYAを手がける吉井雄一がおすすめする「ミュージック」。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年12月号掲載)

木曜深夜、洗練された音が時代の空気を変えてゆく

「洋楽志向なんです。英語かぶれなとこがあるのかもしれませんが、仕事でファッションもやっているので、『今っぽい』ものを感じる音楽が好きですね。ファッションでいえばモードやモダンになるのかなと思いますが、洗練されていないと嫌なんです。昨日、今日、明日と瞬間ごとに時代は変わっていくし、その中で、少し前まで良いと思っていたものを『古い』と思ってしまえる自分の耳や、『空気感が変わった』『素敵』と、感覚的に感じられる音楽に出合えたときはすごくうれしいですね。新しい方程式を見つけたときの喜びみたいな。僕は音楽がないと生きていけないんです。それは10代の頃から変わらない。今は、リリースが多い木曜日から金曜日になる深夜の時間、毎週パソコンの前に座ってスタンバイをして、日付が変わると同時に落ちてくる新譜をチェックしています。金曜の、あの瞬間に、時代は変わっているんですよ。僕にとって週に一度の神聖な時間ですね」

意思のある最新フォーク&パンク

『Designer』 Aldous Harding

革新的フォークソングともいえる、注目の新世代シンガー・ソングライター、オルダス・ハーディングのアルバム。「すごくスローなフォークなのに、パンク感もあれば、R&B感もある。本当にニュー“デザイナー”という感じ。格好いいアティチュードを打ち出した女の代表ですね」。お気に入りは、5曲目の「The Barrel」。

音が交差する優しい半狂乱の世界

『Reward』 Cate le Bon

「聴いていて途中で思わずため息をつきました(笑)。薄っぺらくなく、深いから、彼女は過去にどんな音楽を聴いて、ここまでたどり着いたんだろうって」。ウェールズのニコ、とも異名を持つシンガー・ソングライター、ケイト・ル・ボンの最新作。フォーキーなベースとソフトロックを今にアップデートした傑作。

曖昧さと陶酔感にひたる

『When I Get Home』 Solange

ジャズ、トラップ、ビートミュージックなどを融合させ、現代のムードを見事に表現した、アメリカ発シンガー・ソングライター、ソランジュのアルバム。「前作よりもさらに曖昧なんです。すべてフワッとしていて、酔いしれるみたいな。19曲入りの39分で一つのアート作品を見たような感じがしました」

次世代ポップアイコンのデビュー作

『Immunity』 Clairo

「このアルバムでおすすめの曲は、絶対的に『Bags』。彼女は新世代ウーマンの中でも成功を収めているし、ポップミュージックとのバランスがすごく良い。いろいろな“本性”が散りばめられているので、アルバム2枚目以降で化けるのではと推測しています」。若干20歳。アメリカ・マサチューセッツ出身のシンガー・ソングライター、クレイロのデビューアルバム

ハイブリッド感満載オルタナサウンド

『Miss Universe』 Nilüfer Yanya

「これまでにEPやシングルをリリースしていたんですが、まさかデビューアルバムの1曲目で、いきなり違うテンションで上げてきて。かなりハイブリッドな感覚を持った人ですね」。ロンドン在住のトルコ系イギリス人。ギタリスト兼シンガー・ソングライターのニルファー・ヤンヤ。ブラックミュージックを軸に展開するオルタナティブなサウンドに注目。

北欧発のポスト・シャーデー

『Essentials』 Erika de Casier

「シャーデーやアリーヤなどを聴いて育った女の子たちの新しい表現、という感じがします。洗練されていて、モダンです」。デンマーク・コペンハーゲンを拠点に活躍するシンガー・ソングライター、エリカ・デ・カジエールの1stアルバム。90年代R&B感のある、メロウで優しい歌声と、センチメンタルでドリーミーな最新の打ち込みサウンドが心地よい。

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あの人がナビゲートする、知る喜び

Interview & Text:Kana Yoshioka Illustration:Kaoll Edit:Chiho Inoue, Sayaka Ito, Mariko Kimbara

Profile

吉井雄一Yuichi Yoshii メンズファッションブランド「MISTERGENTLEMAN」のデザイナーであり、デリカテッセン「PARIYA」のディレクションも行う。昨年より日本屈指のレコードショップ「WAVE」を再構築したプロジェクトをスタート。11月に渋谷PARCOにショップをオープン予定。

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