
目黒の閑静な住宅街にひっそりと佇む「八雲茶寮」。邸宅を改装し、和の美意識と現代の感性が調和する空間では、朝のひとときを整える「朝茶」や、午後を優雅に過ごす「午申茶(ごしんちゃ)」といった趣のあるメニューが楽しめます。

また、四季折々の素材を生かした和菓子を提供する「楳心果(ばいしんか)」、生活道具の販売や季節の企画展を開催する「サロン」、そして旬の食材を職人の手で丁寧に仕立てる料理を供する「茶寮」もあり、五感を満たす上質な時間を過ごすことができます。

以前イベントでお邪魔してから10年ぶりに八雲茶寮にお邪魔し、食事を楽しみながら江戸の文化について深く知ることができる講座を体験してきました。

今回参加した「季節を味わう江戸の宴」は、江戸料理文化研究所代表であり、時代小説家としても活躍する車浮代氏を講師に迎え、年4回にわたって江戸の食文化を紐解いていく講座です。また、江戸の食文化を感じることができる料理も提供され、味覚を通しても江戸の文化を体感できるのもこの企画の魅力のひとつです。

まずは、茶房で車先生によるお話を伺います。この日は春の花見をテーマにした会で、日本料理の起源から江戸庶民の食生活、江戸料理に欠かせない調味料、江戸前寿司の発祥などについてお聞きしました。車先生の軽やかでテンポのよい語り口に引き込まれ、初めて知ることばかりで学びの多い時間となりました。現代の食生活に通じるところもあり、江戸時代の人々の知恵や工夫を私たちも享受しているのだなぁとしみじみ思いました。


お話の後は、江戸のお花見をテーマにしたコース仕立ての料理をいただきました。二段重を開けると、一段目には桜の葉が敷き詰められ、中には鯛の香物酢が。江戸時代に生まれた山吹酢を使い、酸味がしっかりありながらも、桜の葉の香りを纏った上品な味わいでした。


お重の二段目には、ごまめ金平やよもぎ麩田楽、甘夏と人参の白和えなど、江戸庶民が親しんだメニューの数々が詰められています。
(左)山菜天ぷら 竹の子 芝海老
(右)霜降りかつお 叩き芋 玉子焼 座禅豆
江戸では卵が1個200円もする高級品で、まぐろはとても安価な食材だったというのも驚きでした。

身体に染み入る、やさしい味わいの蛤鍋(はまなべ)。菜飯にお出汁をかけていただきました。

江戸の食を忠実に再現しながらも、洗練された味わいに仕上げられており、その絶妙なバランスに感嘆しました。一品一品、丁寧に味わいたくなる奥行きのある味で、心も満たされました。

料理と一緒に提供されるお酒も趣向を凝らしたものばかりで、とても美味でした!

今後の「季節を味わう江戸の宴」は、7月に花火の宴、10月に月見の宴、2026年1月に雪見の宴を予定しています。江戸の文化に思いを馳せながら、八雲茶寮の美意識が息づいた空間で、美食のひとときを体験してみてはいかがでしょう。
季節を味わう江戸の宴
7月12日(土):花火の宴
10月25日(土):月見の宴
2026年1月24日(土):雪見の宴
会費 ¥22,000
オンライン予約
八雲茶寮
住所/東京都目黒区八雲3丁目4−7
TEL/03-5731-1620
URL/www.yakumosaryo.jp/


