毎月の生理、デリケートゾーンの悩み……我慢できてしまう小さな不調を見逃していませんか。不調があって当たり前と見過ごしていると、思わぬ病気や妊娠時のトラブルの原因に。連載「まさき先生が導く全女性のためのウェルネスメソッド」では、産婦人科医の安部まさき先生が、専門的な視点から女性の体と心に寄り添うアドバイスをお届けします。
TOPICS
1.生理痛はなぜ起こる?
2.ひどい生理痛は、「月経困難症」という病気
3.放置すると、病気や不妊症のリスクアップに
4.セルフケアでできること
5.おすすめのアイテム
「昔は多産の女性が多かったので生理が止まっている期間が長く、一生で生理は50回ほどが普通でしたが、少子化が進む現代では、約450回も生理が来るとか。つまり昔の9倍も生理の回数が増えているんです。それなのにつらい生理痛を我慢する人が多い。我慢する必要は全くありません」(安部まさき先生)
生理痛はなぜ起こる?
──おなかが痛くなるほか、頭痛や吐き気など多岐にわたる症状が出る生理痛。その原因は? なぜ子宮から離れたところにも影響が出るのでしょうか?
「子宮内膜は、受精卵が着床し、妊娠を成立させるために毎月分厚くなるのですが、妊娠しなかった場合、この子宮内膜は不要になり、出血を伴って剥がれ落ちてきます。それが「生理」(医学的には「月経」)です。このとき、「プロスタグランジン」という子宮内膜で産生される物質が、子宮を収縮させ、内膜を排出しようとするため、下腹部痛が起こります。プロスタグランジンは血流に乗って全身に作用し、頭痛、吐き気、下痢などの症状を引き起こすことも。
症状は、生理1日目や2日目など最初のほうがひどく、次第に緩和されていく傾向にありますが、個人差があり、人それぞれ。生理が終わるまで続く方もいますし、なかにはPMS(月経前症候群)から続いて起こるというケースも」
ひどい生理痛は、「月経困難症」という病気
──痛みやだるさがひどく、“生理休暇”を取るというケースも。それでも病気ではないという認識から、市販の鎮痛剤などを服用して、ひたすら耐えている人も多い印象です。
「痛くていつもどおりに動けないなど日常生活に支障をきたすのなら、それはひどい生理痛であり、月経困難症というれっきとした病気。生理のある女性の約40%に見られると言われており、特に多い症状は、おなかや腰の痛み。その他にもむくみ、過多出血、気持ち悪さ、めまい、頭痛などが挙げられ、多岐にわたります。子宮筋腫や子宮内膜症が潜んでいる可能性もあるため、受診をオススメします」
放置すると、病気や不妊症のリスクアップに
──生理痛を放っておくと、どんなことが起こるのでしょうか。
「月経困難症には、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫といった原因疾患がある器質性月経困難症と、そういった原因疾患がない機能性月経困難症に分かれます。
つまり、生理がひどい場合、子宮内膜症などの疾患がすでにある可能性が。また、もし疾患がなかったとしても、長年放置していると子宮内膜症などの病気を発症することに。子宮内膜症は一度発症すると完治することはないため、発症する前に月経困難症に対する治療をスタートさせるのが賢明です」
──では、子宮内膜症とは?
「本来、子宮の内側にしか存在しないはずの“子宮内膜に似た組織”が、卵巣や腹膜など子宮の外側にできてしまい、そこで増殖・炎症を繰り返す病気です。進行すると、不妊の原因や、卵巣がんのリスクが上がることも。
つまり、“ただの生理痛”と思って放置してはいけないということ。早めにクリニックで相談することで、負の連鎖を断ち切ることができます」
──とはいえ、何年も当たり前のように毎月、生理痛があると、クリニックの行き時を見失いがちです。
「生理痛が毎回続くようであれば、一度婦人科の受診を。つらい、わずらわしい、どうにかしたいと思うことは、立派な受診の理由です。ちなみに治療は一般的な保険診療なので、高額にはなりません」
──病院選びに迷うという声もよく聞きます。
「友人や家族のオススメなど通いやすい病院を。相性も大切なので、“この先生”と思える人を見つけてほしいと思います。
PMSなどは内診が必須ではありませんが、やはり一度は内診や検査をしてくれたり、親身になって治療の選択肢を与えてくれるところがおすすめ。お薬だけをすぐに処方するところは注意が必要です。性交渉が未経験、内診が苦手という人は、腹部エコーでもチェックする方法もあるので、相談してみてくださいね」
セルフケアでできること
「生理痛の場合は、とにかくおなかや腰を温めることが大事。カイロや腹巻きなどを活用するのもオススメです。また、下痢を引き起こすホルモンは生理を起こすホルモンと一緒。腸の蠕動痛が生理痛と重なることもあるので、なるべく腸に負担がかからないよう消化の良いものを食べましょう。リラックスを促す、自分が心地よいと思う香りを楽しむのもオススメです」
──生理期間は鎮痛剤を常用するという人も。たくさん飲んでも問題ありませんか。
「市販の痛み止めでもいいいので、我慢せずにすぐに飲んでください。鎮痛剤は、子宮内膜で産生される物質、プロスタグランジンを抑えるお薬。痛みが本格的になってから飲むと効きが悪いので、痛くなる気配を感じたら早めに飲むのが正解です。
鎮痛剤は体に悪そうというイメージから、飲むのを我慢している人も多いようですが、放置していると、神経が敏感になり、より痛みを感じやすくなるため、ピークを迎える前に、ぜひ。ちなみに、月に10日ぐらい飲むのは乱用にはなりません。また、痛み止めがクセになって効かなくなることもないので安心を」
おすすめアイテム
シンピュルテ

生理前と生理中、それぞれの時期特有の心の乱れにアプローチするアルコールフリーのフレグランス。専門家との共同研究から脳波解析に基づき、生理前をイメージしたBliss Flow LPは、イライラする気持ちをポジティブに変換するバニラや蘭による柔らかく甘い香り。生理中をイメージしたNot Alone MPは内にこもりがちな気分を外に向け、集中力をアップさせる穏やかでいて晴れやかなティーノート。
エナジーデカフェコーヒー

生理前になるとやってくる異常な眠気。仕事や家事、毎日のルーティーンにコーヒーは飲みたいけど、カフェインはなるべく抑えたい……そんな方におすすめなカフェインを97%カットしつつ、注意力や作業精度の向上に効果があるマンゴーの葉っぱを配合したデカフェコーヒー。
安部まさき先生からひとこと
「生理痛は当たり前、痛みは我慢するもの。そう思って毎月、つらい日々を過ごす必要は全くありません。生理の辛さや重さは自分でコントロールできるものではないからこそ、鎮痛剤やホルモン薬を利用しながら、上手に付き合ってほしい。そのためには、一生寄り添ってくれるようなパートナードクターを早い段階で見つけることがとても大切です」
なのはなレディースクリニック
住所/埼玉県さいたま市見沼区東大宮5丁目33-12 柏洋ビル1F
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Photo:Kouki Hayashi Styling:Ako Tanaka Hair &Makeup:Kei Kouda Interview & Text:Hiromi Narasaki Illustration:Akari Kuramoto Edit:Saki Tanaka
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