毎日着たい「Vince」の服が生まれる、LAを訪ねて | Numero TOKYO
Fashion / Editor's Post

毎日着たい「Vince」の服が生まれる、LAを訪ねて

LA発のコンテンポラリーブランド、Vince(ヴィンス)。クリーンで洗練されたデザインに上質な素材が光るリアルクローズは、世界中で人気を集めています。とはいえ、まだ日本ではあまり知られていないのは事実。その魅力を探るべく、LAで初開催された各国エディターが集うブランドサミットに参加してきました。

おしゃれすぎるデザインスタジオに潜入!

早速、Vinceのコレクションが作られているデザインスタジオへ。入った瞬間、ここは本当にオフィスですか?と疑ってしまうほどのおしゃれ空間。まるでショールームのようです。開放的で居心地がよく、こんな職場なら毎日来たい!

広いスタジオは、デザインチームやパターンチーム、メンズチームな部署ごとに分かれています。なかでも感銘を受けたのが、デザインチームがオリジナルのプリントを作り上げる工程。ちょうどお邪魔したときは、ボタニカルプリントに取り掛かっているところでした。

そのプロセスはというと、まず植物やガーデンを入念にリサーチしてイメージを広げます。ロンドンのキューガーデンやミラノ、フィレンツェ、サンフランシスコなど、世界のガーデンなどからインスパイアされたそう。

実際に草花を持ち込んで検討することも。その後、生地屋さんなどに足を運んで素材を吟味するのだとか。プリントひとつをとってもこんなにこだわり抜いているなんて。こうやって丁寧に服が作られていくのですね。

スタッフのみなさんは、「自分の仕事は最高」、「自分の仕事が大好き」と口を揃えていたのが印象的でした。フラットでオープンな環境で作られる服は、そんな自由なムードもまとっているのかもしれません。

Vinceのクリエイティブを担うキーウーマンに直撃!

こちらは、Vinceのクリエイティブ・ディレクターを務めるキャロライン・ベルフムールさん。彼女の着こなしは自然体で飾らないのに、とってもおしゃれ! まさにブランドの世界観を体現している女性です。そんな彼女にお話を聞きました。

──Vinceを表すキーワードを挙げるとしたら、何でしょう?

「そうですね、“ロウキーリュクス(Low-Key Luxe)”や、“カリフォルニア”でしょうか。カリフォルニアといえば、カウンターカルチャーやスケートボード、サーフィンなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、Vinceはそんなカジュアルなフィーリングを取り入れつつも、よりリラックスしていて洗練されたラグジュアリーなブランドです。それが、他のカリフォルニアブランドとの大きな違いですね」

──Vinceの服を着る女性はどんなイメージですか?

「年齢や体型に関係なく、ありとあらゆるさまざまな女性です。Vinceの服は、着る人を限定しないのです。私が着ることもできるし、娘が着ることもできる。誰もが着られるシンプルなデザインだからこそ、他のデザイナーの服ともコーディネートしやすいですし、スタイリングで遊ぶことができます。タイムレスで、シーズンレスですね。特に、LAは日中は暖かく夜は冷えるので、レイヤードするのが重要なんです」

Vince 2019-20 FW Collection
Vince 2019-20 FW Collection

──インスピレーションはどこから湧いてきますか?

「私たちはチームで動いているので、お互いの意見を交換することはもちろん、美術館に行ったり旅をするのも好きです。アーティストや映画などから常に刺激を受けています」

──アートや旅といえば、Vinceのインスタグラムには、服だけではなくインテリアや風景などもアップされていますね。

「Vinceはストーリーを語る場所のようなものでもあるのです。ファッションもライフスタイルの一部として楽しんでもらえたらと思っています」
 

──2年前にNYからLAに引っ越しされてきたそうですが、LAという土地からもクリエイティブ面で影響を受けることはありますか?

「LAは自然が美しく、地中海のようなムードが好きです。NYと違って暖かい気候なので、外にいることも多く、自然からもインスパイアされています。カリフォルニアの海岸線は本当に美しいんですよ」

──デザインをするうえで一番大切にしていることは何ですか?

「まずはじめに、カラーから考えます。次に、思い通りの色を表現するためにファブリックも重要です。シルクやカシミア、レザー…。服はシンプルなので素材は完璧である必要があります。その後、どんなシェイプにするか、ディテールはどうするかなど、詳細を詰めていきます」

──キャロラインさんの定番スタイルを教えてください。

「なるべくクリーンで、着ていて楽なものが多いです。シンプルでリラックスしたムードの服や、少しオーバーサイズなものも好き。カリフォルニアに引っ越してからは、足元はいつもフラットシューズです。不思議なことに、ウェストハリウッドやビバリーヒルズではヒールを履いている人を見かけることは少ないですね。NYではよくヒールを履いていましたが、いまではサンダルやスニーカーを愛用しています」

──この秋おすすめのアイテムやコーディネートはありますか?

Vince 2019-20 FW Collection
Vince 2019-20 FW Collection

「このルックのフランネル素材のスーツです。とっても柔らかくて着心地が良いのです。一見オフィスルックのようですが、パンツの裾が少し広がったデザインに仕上げています。インナーに着たカシミアのセーターもお気に入りです」

Vince 2019-20 FW Collection
Vince 2019-20 FW Collection

「それから、このコート。今シーズンは、ブラウンが気分です。ブラック感覚で着るのがおすすめです」

Vince 2019-20 FW Collection
Vince 2019-20 FW Collection

「このベルベットのドレスも、色がきれいで気に入っています」

Vince 2019-20 FW Collection
Vince 2019-20 FW Collection

「ピンクのグラデーションでコーディネートしたこのルックも。最近は色で遊ぶのが好きですね。ニュートラルカラーと馴染むように、あまり明るすぎない色に仕上げています」

気さくにお話ししてくれたキャロラインさん。その最中も、イヤリングやネックレスなどのさりげないジュエリー使いに目が釘付けに(お見せできないのが残念ですが)。Vinceのクリエーションには、彼女のエフォートレスな感覚が反映されているのだと納得!

ブランドの世界観に浸れる最新ストアへ

LAだけでもVinceのお店は5店舗もあるのですが、なかでも一番新しいのが、話題のショッピングセンター、パリサデス・ヴィレッジ(Palisades Village)にある店舗。

白で統一されたモダンな店内。シューズ&バッグをディスプレイしたこのコーナーが可愛くてお気に入り。

キャンドルやクッション、花器なども並んでいて、トータルでライフスタイルを提案しています。

風が気持ち良いテラスもあり、まさにカリフォルニアの空気を感じられる開放的な空間です。

さて、お待ちかねのショッピングタイム! あれこれ試着した結果、この白シャツとサテンのスカートの2点を購入しました。

実は白シャツの、ともすると“気合い入っている感”に少し苦手意識があったのですが、これはノーカラーでVネックの空きも絶妙で、毎日着たい!と思いました。ベーシックだけれどディテールが洗練されている、Vinceの真骨頂。コットン100%で着心地も素晴らしい!

サテンのスカートは、上で紹介したルックの色にインスパイアされて。トレンドのスリップスカートを、ありそうでなかったライラックカラーで作っちゃうなんてさすが。しかもウエストゴムでスルッと履きやすい! これで憧れのカリフォルニアガールになれるかな…。

Vince Palisades Village
住所/15225 Palisades Village Ln Pacific Palisades, CA 90272
TEL/310.525.1380
営業時間/日〜木 10:00〜19:00、金・土 10:00〜20:00

まるで映画のなか!? 夢のようなLA流ホームパーティ

この旅のハイライトの一つは、なんといってもこれでした! キャロラインさん宅でのカクテル&ディナーパーティです。LAの街を眺望できるお家には、素敵なプールが…!! 映画の世界に迷い込んだかのようでうっとり…♡

サンセットが美しいLA。日没後もドラマティックでした。そして、この日はVinceのキャンペーンムービーのお披露目も! 庭のスクリーンで上映され、温かい拍手に包まれました。

「California Creatives」と名付けられたこのプロジェクトは、カリフォルニアで活動している陶芸家や映像作家、女優、アーティストなど、さまざまな肩書きをもつ9人にフォーカスを当て、それぞれのストーリーを伝えるというもの。Vinceの公式ウェブサイトでぜひチェックしてみてください!

この旅で発見したVinceの一番の魅力とは、着る人のパーソナリティを引き立てる服であるということ。ブランドに関わる素敵な人たちの温かさにも触れ、忘れられない思い出になりました!

Profile

新藤友紀子Yukiko Shinto ウェブ・エディター。女性ファッション誌のウェブ編集などを経て2018年『Numero TOKYO』に参加。ファッションをはじめ、カルチャーやライフスタイルなど興味の赴くまま取材。Numero.jpでは連載「パン野ゆりのぶらりパン歩き」「パントビスコの不都合研究所」やスイーツの記事などを中心に担当している。最近は韓国ドラマやK-POPに目覚め、失われた青春を取り戻すかのように沼り中。

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