葉山奨之インタビュー「教科書通りの芝居はしない。自由に表現することがいい作品につながる」 | Numero TOKYO
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葉山奨之インタビュー「教科書通りの芝居はしない。自由に表現することがいい作品につながる」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.91は葉山奨之にインタビュー。

1992年に劇場公開され、日本アカデミー賞5部門を受賞した『シコふんじゃった。』で描かれた大学相撲部の30年後という設定のドラマ『シコふんじゃった!』が10月26日よりディズニープラスで独占配信する。何にも夢中になれない“崖っぷち”大学4年生から思わぬ相撲との出会いによって、心身共に成長していく主人公の森山亮太を演じるのは葉山奨之。オフの過ごし方や生活に欠かせないという音楽と映画についても聞いた。

主人公・亮太と僕は『現代っ子』が共通点

──「シコふんじゃった!」の脚本を読んだ時はどう思いましたか?

「30年前に映画があって、その続編のような感じかと思っていたら全然違う内容で、しかも”ドラマ”。単純に、ここからどう展開していくんだろうというワクワク感がありました。だからこそ、気合を入れて頑張んなきゃと思いましたね」

──葉山さん演じる亮太は、小学校から続けていた野球を怪我で辞めて以来、無気力に生きている大学生ですが、どんな印象を持ちました?

「令和に生きる大学生というか、『現代っ子』的な要素をたくさん持っていて。でも芯がある魅力的な青年だなと思いました。僕は勢いで何とかしちゃうところがよく『現代っ子』って言われるんですが(笑)、そこは亮太と似ているのかなと思いながら演じていました。あと僕も、スポーツに打ち込んで挫折した経験があるので、その苦しみはよく分かりました。」

──演じる上でこだわった点というと?

「最初亮太はアクの強いキャラクターなのかなと思ったんですが、台本を読み進めるうちに、どんどん他のキャラクターの個性が強くなっていって。周りに比べると亮太って意外と普通の人間なんですよね。だからそこをちゃんと描こうと思って演じました。周りの人物が何かしら仕掛けてくるので、それに応えていくというのが自分の中でのテーマでした。」

──亮太は相撲部唯一の部員だった穂香の相撲への情熱に影響され変わっていきますが、葉山さんご自身は価値観が変わる程の影響を受けた人はいますか?

「僕は結構影響を受けやすいタイプなんですけど、これまで一番影響を受けたのは事務所の社長ですね。割とアットホームな事務所で昔から皆で一緒に食事に行く機会も多いんです。まだ10代の頃、芝居の向き合い方に対して社長にものすごい喝を入れられたことがあったんです。当時の僕は若さでとがっていて『何言ってんだ』と、反発心がありましたが、そこで社長に、『セリフ一言で魅力的な芝居をしろ。いろんな色を見せられる俳優になれ』と、みっちりと時間をかけて叱られたんです。終わった時に緊張感から解放されたあまり泣いてしまったのですが、そこを意識するようになってから、どんどん仕事が決まるようになったんですよね。今となってはとても感謝してます。」

──俳優をやる上で一番大事だと思っていることは何でしょう?

「自由にやることを大事にしています。現場に入ってどれだけ自由にできるか、どれだけ台本の中で遊べるか、どれだけ共演者と一緒に楽しめるか。自由にやるって言われてもどうすればいいか難しいところもあると思うんですが、周りが思ってもいなかったような芝居ができた時は、自分で『自由にできたな』と思います。昔から、教科書通りの芝居はしないように心がけています。『シコふんじゃった!』では、芝居を初めてやる方たちが何人かいましたが、『僕がこれだけ台本に書いてあること以外のこともやっているから、もっと自由に遊ぼうよ』と言い続けていました。この現場で『芝居って面白くない』って思われたら嫌なので、楽しんでもらうことは特に意識しました。みんなすごくアイデアが豊富で、僕も新鮮なエネルギーを吸収させてもらって良い空間が生まれたと思いますし、みんなで作る一体感が強かったですね。ただ、”座長”を意識し過ぎると緊張して楽しめないタイプなので(笑)、スポコンのドラマですし、チームメイト感を出すためにちゃんとみんなと仲良くなることを大事にしました。芝居じゃない部分で、画面に仲の良さが出ていたら嬉しいですね。」

全部出し切ったあと、全力でオフを楽しむ

──最近のオフは何をすることが多いですか?

「最近はゴルフをしたり、ドライブに行ったりすることが多いですね。ゴルフは3年前ぐらいに友達が始めて、『僕は絶対やらない』って思ってたんですけど、誘われてやってみたら、楽しくてまんまとハマっちゃいました(笑)。春と秋は結構行ってますね。芝居における集中力と似てるところがあるんですよね。グリーンに入ると自然と私語厳禁の”聖なる場所”みたいな雰囲気になって、あれだけ小さな穴にボールを入れるので集中力が鍛えられる。カップにボールを入れられたら、ちゃんと芝居が成立したと、勝手に置き換えながらプレイしてます。ギリギリで入らないことも多くて、そこは自分の芝居に似てるなって思います(笑)」

──(笑)葉山さんは、音楽がなくてはならないと思うくらいお好きだそうですね。

「そうですね。よく聴いてますね。一番影響を受けたのは、プライベートでも仲良くさせてもらっている石崎ひゅーい君です。羨ましさも感じますし、天才だと思いますし、いろんな感情にさせてくれる存在ですね。ひゅーい君の曲は映画っぽい感じがする、唯一無二な世界観だと思います。いろんなメッセージやエネルギーが詰まっている『アンコール』という曲は僕にとっての応援歌です」。

──あと、映画もお好きだとか。

「ジャンル問わず観ますね。アプリで気になる映画をチェックしたり、映画館の予告で面白そうだなと思った作品をチェックして観たりします。最近だと、ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』が見応えのあるエンターテインメント映画で面白かったなと。特にブラッド・ピットが常にかっこよくて、自分が58歳になった時にあんな色気を出せるのかなとか思っちゃいました(笑)。そんなブラッド・ピットに勝るとも劣らない真田広之さんも素晴らしかったです」

──これまでで一番好きな映画というと?

「大好きでいつか絶対に仕事をしたいと思っている監督のひとりがグザヴィエ・ドランなんですが、『Mommy/マミー』が特に好きです。当時のマネージャーさんに、『主人公が奨之にピッタリだから絶対見たほうがいい』って言われて観て、『いつかこんな映画に出れたらいいね』とふたりで話した思い出があって。それこそ自由に芝居をするとはどういうことかがわかる映画だと思うので、迷いが生じたり悩んだりした時に観返しています。最初は画面のサイズが1:1の正方形なんですが、主人公の心情に合わせて途中から普通の画面サイズになったり、見せ方もすごくうまいんですよね」

──一ヵ月オフがあったら何をしたいですか?

「海外に行きますね。行ったことのない国がたくさんありますから。エジプトでピラミッドを見たいし、モロッコの砂漠にも行きたい。これまで行った中で一番好きなのはフィンランドです。番組のロケで行かせてもらった後、プライベートでも行きました。めちゃくちゃ寒かったんですが、オーロラを見たり、サウナ発祥の地ということでサウナに行ったり。あと、女性がすごく綺麗で何度も一目ぼれしてました(笑)」

──それは忙しいですね(笑)。

「はい、いろんな感情になって忙しかったですね(笑)。モテたくて仕方なかったです」

──充実したオフの時間はお仕事にどんなフィードバックがありますか?

「『シコふんじゃった!』もそうですが、毎作品その時に自分が持ってるものをとにかく全部出し切っているつもりなので、終わると空っぽな状態になるんです。だからこそ、好きな音楽を聴いたり、映画を観に行ったり、自然の多い場所に行ったり、好きな人と会っていろんなことを話したり。何かを吸収して、バランスを調整することを大事にしています。そういうオフの過ごし方をするとメンタルも落ち着いて、気付きもたくさんあります。時には悩むこともありますが、マネージャーさんや周りの方から『メンタルを自分でコントロールするのも仕事の一環だよ』と言ってもらって、『自分にはどんなスタンスが合ってるんだろう』と考えた結果、仕事は全力でやって、休みの日は仕事のことをなるべく考えずにとにかく好きなことをやろうと心がけて過ごしています」

こんな相撲、アリ!?総監督・周防正行x次世代を担う監督・キャスト陣が贈る“相撲”の常識を覆すドラマがディズニープラスに登場!日本アカデミー賞5部門を受賞した『シコふんじゃった。』から約30年後。卒業と引き換えに廃部寸前の相撲部に入部した“崖っぷち”大学生の亮太はたった一人の部員、”相撲以外はポンコツ”の穂香と出会う。二人が個性豊かな仲間たちと挑む人生大逆転劇の舞台はなんでもありの土俵の上……。とんでもない挑戦に臨む彼らの青春どすこいコメディが、この秋オリジナルシリーズとして全世界独占配信!

『シコふんじゃった!』
原作・総監督/周防正行
脚本/鹿目けい子
監督・脚本/片島章三、後閑広、廣原暁、植木咲楽
出演/葉山奨之、伊原六花、佐藤緋美、高橋里央、森篤嗣、福松凜、佐藤めぐみ、竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政、柄本明
企画・制作プロダクション/アルタミラピクチャーズ
©️2022 Disney

10月26日(水)よりディズニープラスで独占配信
https://www.disneyplus.com/ja-jp

ニット¥41,800 ベスト¥44,000 パンツ¥38,500/ランバン コレクション シューズ¥84,700/ランバン コレクション×パラブーツ (ランバン コレクション 03-3486-5858)

Photos:Ayako Masunaga Stylist:Hirohito Honda(HIROHITO HONDA STYLING OFFICE) Hair&Makeup:Megumi Ochi Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Naomi Sakai

Profile

葉山奨之Shono Hayama 1995年、大阪府出身。2011年に『鈴木先生』でデビュー。15年、NHK連続テレビ小説『まれ』で主人公の弟・一徹役を演じ注目を集める。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」ニューウェーブアワード受賞。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(16)、『僕たちがやりました』『セトウツミ』(17)、『透明なゆりかご』(18)、『未満警察 ミッドナイトランナー』『太陽の子』(20)、『鹿楓堂よついろ日和』(22)など多数出演。

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