根本宗子インタビュー「恋愛は選択の連続。自分だけのハッピーエンドを探しにいこう」 | Numero TOKYO
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根本宗子インタビュー「恋愛は選択の連続。自分だけのハッピーエンドを探しにいこう」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.89は今回初の原作・脚本に挑んだ劇作家の根本宗子にインタビュー。

クズ男に沼る4人の女性の恋愛模様を描いた映画『もっと超越した所へ。』が10月14日(金)から公開される。主演を務めるのは前田敦子。その他にも菊池風磨、伊藤万理華オカモトレイジ、黒川芽以、三浦貴大、趣里、千葉雄大といった俳優陣が出演する。原作は「月刊 根本宗子」により2015年に上演された舞台「もっと超越した所へ。」で、今回の映画版の脚本も根本自身が担当した。なぜ7年前の作品が今、映画化されたのか。当時と現代の恋愛観の変化や、クズ男を好きになりがちな女性たちの共通点について根本宗子と考える。

リアルとフィクションが共存した作品を作りたかった

──下北沢ザ・スズナリで上演された舞台「もっと超越した所へ。」の7年前を振り返って、当時の思いと、この作品を作ろうと思ったきっかけについて教えてください。

「当時、演劇シーンではその辺の若者の話を聞いちゃったみたいな群像劇や会話劇が少しブームになっている時期だったんです。どこまでリアルにできるかを突き詰めている人たちが多い印象を受けて、その時に私が思ったのはリアルに作り込まれている部分ととんでもないフィクションの部分をうまく共存させたエンターテイメント作品を作りたいなということ。最初は見始めると男女の群像劇なのかなと思うのですが、気づいたら全然違うところに話が着地していくという構成を漠然と考えていて。私は細かくプロットを書いて作っていくタイプではないので、一ヶ月間の稽古でいろいろ試しながら作っていきました」

──リアルな部分はご自身や周りの体験談からですか?

「当時劇団員がいて、私含めた4人でこの役を演じていました。彼女たちとは365日ほぼずっと一緒にいた仲間だったので、それぞれ日常に何が起こって何をしているかを全員がわかった状況だったんですね。こんなことが嫌だった、悲しかったなど普段からみんなの話を聞いていて。起きたことをそのまま書いているわけではないですが、こういうことが悲しかったなら、こう書いたらハマるかなと作品を書くにあたってのインスピレーションではありました。この4人のメンバーがいたからこそ、できた作品だと思います」

──根本さんの作品では初の映画化ですが、脚本を書くにあたって留意した点はありましたか。

「原作の内容を少し削ったり、当時流行っている人や言葉を今に置き換えたりということはありましたが、内容自体は大きく変えずに書くことができました。今回山岸聖太監督とタッグを組ませていただいて、山岸監督はこれまでも私の作品をよく見に来てくださっていたので、脚本を書いてキャスティングまでは一緒に行いましたが、撮影からはすべてお任せしました。出来上がった作品を拝見して、最後のシーンは映像だからできることだなと思いましたし、原作を大事に映画化してもらえてとてもうれしかったです」

──前田敦子さんはじめとする、8人の出演者の方々も個性豊かで面白いですね。

「そうですね。監督はじめプロデューサーと話し合いながら、全員が納得できる8人になったと思います。真知子は絶対に前田さんにお願いしたい、というところからスタートしました」

──前田さんが女性が溜め込んでいる怒りを代弁して吐き出してくれている感覚になりました(笑)。

「わかります。前田さんにはずっと怒っていてほしいですよね(笑)こんなにスカッとさせてくれる人なかなかいないので、すごく好きです」

衣装:tanakadaisuke
衣装:tanakadaisuke

クズ男に沼る女性たちの共通点?

──本作では家賃を払っていなかったり何かとダメな男と、自立してどっしりと構える女のカップルたちが登場します。このようなカップルを描こうと思ったきっかけなどあったのでしょうか。

「それは当時、私が家賃を払う経験をしていたからだと思います(笑)。今となってはいい経験で笑話ですが、家賃を払っていることに関してはこちらも払ってもいいかと思っていたり、自発的にやり始めていたりすることではあるんですが、言葉にせずとも感謝はしていてほしいと思ったり。続けていくと当たり前になって、家賃払うのが趣味な人って思われているのがしゃくだなと思っていました(笑)。」

──分かります(笑)。この映画を見たら人ごとでないと感じる人も多いのではと思いました。ですが舞台で上演された7年前。当時も今も恋愛観は変わっていないと思いますか。

「7年前よりもむしろ、こういったカップルは増えているように感じますね。7年前での舞台では、ちょっとありえないと思って書いているところもあったんです。客席の笑いも男女問わず“そんな馬鹿な”みたいな笑いでした。ただ今見ると、笑えない部分もあるし自分事のように見る人がいると思います。今の時代に運良くよりあった作品になっていたと思います」

──クズ男を引き寄せてしまう、好きになってしまう女性たちに共通点はあると思いますか。

「やっぱりどこかお母さんを求められているというか。女性は多かれ少なかれあると思うんですけど、それに答えようとしすぎる人だと思います。やってあげるのが好きな人ですよね。それって結局自分の欲求だから、必ずしも男性側だけがクズみたいなことでもないと思いますけどね。一概には言えないのでとっても難しいですし、ケースバイケースですよね」

──頼まれていないのにやってしまうことは多々ありますね。ダメな男と分かっていても好きだから……と思ってしまう。

「でもダメ男って面白いんですよね。何をするか予想がつかないというか。そういった男性を好きになる人は恋愛に面白さを求めているんだと思います。自分はもうそんな年齢でもないので、平和が一番って思ってしまいますけど(笑)」

──こちらもやり過ぎてしまうのは反省ですね。映画を見終えた後、タイトルにある「超越」という言葉が心に沁みる人は多いと思います。どんな思いでこのタイトルをつけたのでしょうか。

「この映画の結末がハッピーエンドと思うかは人それぞれ違うと思います。でも『ここで幕を閉じるよりは良い』という選択をしていけるようにしたいと思ってこのタイトルをつけました。彼女たちが超越したかは分からないですが、超越しようとする努力を見ることで、立ち止まって相手のことを考えるきっかけになってくれればと思っています」

──この作品をどんな人に見てもらいたいですか。

「カップルで見て話し合うきっかけになれば……と思っていますが、そんな二人はこの映画見なくても話し合っていると思うので、自分よりも世代が若い人たちに見てもらいたいですね。私より上の世代の方はもう笑ってみれると思います。私も当時の台本を読み返しても、今の自分とは180度違うので笑えちゃうところもあったので、渦中にいる若い子たちや逆に恋愛に興味がない子たちもいると思うので、その人たちの感想も気になりますね」

──恋愛に悩む女子たちに一言お願いします!

「相手と向き合い続けたらしんどいと思うので、適度に発散できる場所を設けて女子だけの楽しい瞬間も大切にしてほしいです。でもみんなで愚痴を言い過ぎると本当に彼のことが嫌いになるパターンに陥るのでほどほどに……(笑)。あとは結局素直が一番だなと思います」

彼女たちが、<超越した所。>で見つけた
自分だけのハッピーエンドとは?

それなりに幸せな日々を送る4組のカップルに訪れた、別れの危機……。ただ一緒にいたいだけなのに、今度の恋愛も失敗なのか?それぞれの”本音”と”過去の秘密”が明らかになる時、物語は予想外の方向へと疾走していく!根本自身が脚本を担当しクズ男を引き寄せてしまう4人の女性の恋愛模様と、彼女たちの意地とパワーが引き起こすミラクルを痛快に描く。めんどくさい感情とキレッキレの本音をさらけ出しながらも、強くたくましく生きる姿に、奮い立つようなエネルギーと爽快感を得られるはず。彼女たちは、自分なりの幸せをつかみとれるのか?驚きの仕掛けが待ち受ける、ブチ切れ&ブチ上がりの恋愛バトルが爆誕!

原作/月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』
監督/山岸聖太
脚本/根本宗子
音楽/王舟
主題歌/aiko「果てしない二人」
出演/前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ、黒川芽以、三浦貴大、趣里、千葉雄大
制作/『もっと超越した所へ。』製作委員会
配給/ハピネットファントム・スタジオ
公開日:2022年10月14日(金) TOHO シネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー
©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会
https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/

Photos:Ayako Masunaga Styling:Daisuke Tanaka Make-up:Konatsu Interview&Text:Saki Shibata

Profile

根本宗子Shuko Nemoto (ねもと・しゅうこ)1989年生まれ、東京都出身。19歳で劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降劇団公演全ての作・演出を手がける他に、様々なプロデュース公演の作・演出も担当。2016年から4度にわたり、岸田國士戯曲賞の最終候補作へ選出され、近年では清竜人、チャラン・ポ・ランタンなど様々なアーティストとタッグを組み完全オリジナルの音楽劇を積極的に生み出している。常に演劇での新しい仕掛けを考える予測不能な劇作家。22年初の著書となる小説「今、出来る、精一杯。」(小学館)を刊行。長編映画の脚本を手掛けるのは本作が初となる。23年1月には高畑充希とタッグを組む新作演劇「宝飾時計」が控えている。

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